《 巨大婦警エル 》 7

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 エルは強盗達の上を跨いでいた。悪人どもを足で追いかけて遊んでいた。はるか天空の彼方から見下ろしている。


 巨大化した爽快感と開放感は素晴らしいかった。巨人となり、全てを見下ろす快感はエルをいつも楽しませてくれた。


 獲物を見つけた女豹の血が騒いでいた。小人の男2人くらい一瞬で踏み潰せる。しかしエルはそうしない。じわじわといたぶる。楽しい遊びの時間なのだ。

 
ちっぽけな強盗達が恐怖の悲鳴を上げている。もう逃げられない、
山が動いて追いかけてきたようなものだ。
 そしてこの山は生きていた。

 どこに逃げても無駄だった。恐怖の巨足が彼らの前に踏み下ろされる。男達の前に、靴が巨人の黒い城のようにズシシシン!!と地響きをたてて立ち塞る。


 2人の男達は悲鳴をあげながら、近くにあったレストランに逃げ込む、彼らを見下ろす巨大な婦警の、燃えるような眼(まなざし)が恐ろしかった。 彼女の視線の届かない、屋根の下へと逃げ込んだ。

 その建物が、彼女に対し何の防御にもならないと、考えもしなかった。

 ガラス戸をぶち破り中に走りこむ、強盗事件が起こった時点で、警察の要請により付近の住民は避難していた。このレストランのオーナーも素直に指示に従った。銃撃戦の巻き添えになるつもりはなかった。

 強盗達は恐怖に震える。 誰か客がいれば懲りずにまた人質にするつもりだったが、レストラン内は無人だった。

 エルは笑う。頑丈な鉄筋コンクリートの銀行ビルでさえ崩してしまう彼女にとって、二階建てのレストランなど、全く問題にもならない。それは横幅が大きめの人形の家(ドールハウス)くらいにしか見えなかった。

 エルはレストランの赤い屋根に手をかける。この建物を壊すことに心が痛んだが仕方がない。悪い犯罪者を始末するためなのだ。罪を犯した者が必ず罰をうける、その事実を皆が知れば、犯罪をするものがいなくなるだろう。明るい平和な社会が実現するのだ、正義の婦人警官エルは、その理想社会実現のため努力するつもりだった。

 巨人エルの手により、レストランから屋根が外される。彼女にとってはボール紙を破いているくらいにも感じない。唸り声のような音といっしょに柱と壁の一部も引き裂かれている、エルは超聴力で、この建物の中に強盗達以外に誰もいないのを知っている、遠慮はしない。


 エルは屋根を軽々と持ち上げ背後に放り投げる。すさまじい音の後に、ドスン!という、地面にたたきつけられる鈍い音が聞こえる。



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