《 ジュピターの午後 》 3

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 私は校舎に目をやる。腰までの高さもない。こんな小さな物の中で自分が勉強していたなんて信じられない。

 しかも、ものっそい弱そう。今の私なら片足の一蹴りでこの建物を粉砕できると約束するわ。


 建物の中を覗き込んでみる。いるいる。小さな先生や同級生のみんながひしめいている。 先生はこんなに大きな私を見たらどう言うのかな。まぁ、文句は言えないよね、だって私は正義の味方なんだもん。

 そう言えば、先生は優しいの、私が「この学校の制服はサイズがあわないから」 って言って、前の学校の制服を着ていても、自由にさせてくれてたわ。

 先生、授業の邪魔してゴメンナサイね。だって、私はどうしても大きくならないといけなかったの。そう、正義のために・・・。

 さてと、私の教室はどこかしら。ここかな?窓を指でつついてる。あっ、クラスメイトのみんなが騒いでいる。窓から覗く私の大きい顔を見て驚いている。大混乱ね。思わず笑ってしまう。

 こんなちっぽけな人間達と、この偉大なる私がいっしょに暮らしていたなんて、不思議な気分。



 大切な事を思い出す。遊んでいる場合じゃないわ。木星大接近は今年だけの特別な現象みたい。現在、私の体に「木星の超パワー」が流れ込んでいる。だけど、ずっとは続かない。

 ならば今のうちに、体内に蓄積できる限りのエネルギーを溜め込んでおかないといけない。そうすれば、ずっと巨人のままでいられるわ。強くなるのよ私は。そう、地球の平和を守るために!

 木星は悲しい星なの、木星は太陽系の中でも一番大きな惑星で、「恒星になり損ねた星」って言っている天文学者もいるくらいなの。だから木星の悲しいエネルギーを私が使ってあげる。

 私は目を閉じる。宇宙空間を通じ木星と直接リンクする。これからこの超エネルギーをできる限り吸収し、自分の力にしないといけない。

 体勢を整え、力の源を知る。 意識を集中する。すぐに私の体に宇宙エネルギーが流れ込む。うわあ、すっごいパワー! 熱い、熱いわ、予想していたよりずっと熱い。

 くっ、ちょっとキツイわ。この巨人の肉体でも苦しいなんて、なんて強烈な力! あまりの宇宙エネルギーの量と熱さに、私は膝をつきそうになる。

 あ、ちょっと、あっ、ちあちち熱いいーーー!! 燃えるうう!

 あ、そんなぁ、熱い、すごく熱い!!

 いけない、ここで私が倒れたら、クラスメイトのみんながいる校舎を押し潰してしまうかもしれない。そんなの、絶対できないわ! この苦難にも耐えなければならない、それがセーラー戦士である私の使命なの。

 負けない、絶対に負けない! 私は強い女の子なの!
先輩、みんな、私を守って!!

 凄まじい宇宙エネルギーが私の体を貫く!

「セーラージュピター・ジャイアントパワーアップ!!」

 声の限りに叫ぶ、力が漲る。私はさらに大きくなる。


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