《 マイナス50cmの恐怖 》 
  
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  山奥にある古い城に、妖怪が住み着いたというウワサを聞きつけ、
  一人の若者が勇敢にも退治しに出かけた。
  
  彼が城の前に立つと、若く美しい女性が微笑みながら出てきた。
  どこが妖怪なのか? その綺麗な姿に若者の警戒心がゆるむ。
  
  女性は彼に向かって手を差し出してくる。 
「握手したいんだな」
  若者はそう思い女性に近づくと、彼女は差し出したその手で彼の腕をグッと握りしめた。
  女とは思えない凄い力だ。
  
  「なにするんだ!手をはなせ!!」
  あまりの痛みに若者は怒鳴ったが、女は強く抵抗できない。
  そして彼にこう囁いた。
  「プラス50cmがいい? それともマイナス50cmがいい?」
  
  どうやら若者に『プラス50cm』か『マイナス50cm』のどちらかを選べと言っているようだった。
  
  どちらでもよかったのだが、彼はとりあえず「マイナス50cm」と答える。
  
  若者は自分は強いと信じていた。
  ところが調子に乗って、妖怪退治に来て危険な女に捕まった。
  プラス思考が裏目となった。 それで「マイナス」という返事になったのかもしれない。
  
  「マイナス50cm」という返事を聞くと、女は握っていた手をはなしてくれた。
  
  それにしても驚くべき力だ。 背中に恐怖が走る。
  美しく女性らしい姿なのに、彼女はとんでもないモンスターだ。
  
  若者はそこから逃げだし、家に帰るとベッドに飛び込んでそのまま寝てしまった。
  
  
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  翌朝、目が覚めると妙な違和感が・・・。 
  なんと、身長180cmだった若者は身長130cmに縮んでいた!
  
  あの女性の言った『マイナス50cm?』とは「身長を50cm減らす」という意味だったらしい。
  
  不思議な事に、昨日、彼が着ていた服もそのまま小さいサイズになっていた。
  
  慌てた若者は町医者の所にかけこみ、何とかしてくれと泣きついた。
  こんな子供のような姿では仕事もできない。
  
  医者は若者と知り合いだったので、急に身長130cmになった彼の姿を見て驚いた。
  
  若者の体を調べた医者は不思議に思う。
  足が短くなったとかいうのではない、彼の体がそのままの姿で縮小されていたのだ!
  
  文字通り魔法を使ったとしか考えられなかった。
  
  そこで医者は彼に提案をした。
  
  「医学の力でこれは説明できません。 身長も伸ばせません。
   それよりも、もう一度その女性の所へ行って、
   今度は『プラス50cm』と答えたらいいじゃないですか」
  
  
  そう言えば、彼女は
  「プラス50cmがいい? それともマイナス50cmがいい?」と聞いてきた。
  
  
  名案だと思った彼は再び城に行き、微笑んでいる女性に近づいた。
  すると女性は昨日と同じように若者の腕をグッと握りしめてきた。
「しめた!」
  
  これで元の大きさに戻れる。
  
  後は『プラス50cm』と言えばいいだけだ。
  
  
  身長130cmになった若者が喜んでいると、女性がこう囁いた。
  
  
  女性:「マイナス129cmがいい? それともマイナス128cmがいい?」
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  (終わり)
  
  
  
  (本日のお言葉) 危険な場所には行かないように。