《 彼を探して 》 その2

               CG画像 June Jukes

----------------------------------


 ふと見ると、地面を小人が走っている。
服装からして、学校の男子生徒だろう。

 巨大な私の姿に驚いている。 小人を指で摘みあげる。
私の小指の大きさしかない、なんと、ちっぽけな存在なのか。

 でも、その男子生徒の顔は、彼に似ているように思えた。
彼とよく似た男に会えて、私は少しだけ幸せな気分になる。

 私はじっと小人を見つめる。

 哀れな小人は命乞いをしていた。
「お願いです、潰さないでください」 とか言っている。

 大きな私が怖いらしい。 情けない、こんなの私の彼じゃない。
もう用はない、小人を地面に捨てる。

 彼を探さなければいけない、
立ち上がる。 私の体に力が漲る。

 
美しい私の体は天空の彼方にそびえ立っていた。


 他の小人を指で摘みあげる。悲鳴を上げている。

 何故か、彼と同じ気配を感じる、いったい何だろう? すぐに理由が分かった。 耳をすますと、彼とよく似た声が聞こえたからだ。


 どうやら巨大化した私の五感はとても鋭敏になっているらしい。
ちっぽけな小人の声さえ、はっきり把握できた。


 彼とよく似た声の男に会えて、私は少しだけ幸せな気分になる。

 声をもっと聞きたい、私は小人を耳元に運ぶ。

 哀れな小人は命乞いをしていた。
「お願いです、命だけは助けてください」 とか言っている。

 情けない、こんなの私の彼じゃない。
もう用はない、小人を地面に捨てる。

 (続く)

目次に行く ←戻る 続きを読む→