《 胸の谷間に 》 (その9)

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バエル 「もうずっと昔の事ですけど・・・巨大で、強く、美しく、そして空間転移の術さえ使える私達は、多くの星々を支配していました」

夕子 「そうね〜、あのころは楽しかったわ」

バエル 星々の支配者であった私達は寛大でした。愚かな小人の住民達に、私達の奴隷として生きることを許してやりましたの」

 ・・・何を言ってる? バエルの言葉が真実だと理解できた。
だがその内容は明らかに何か間違っている。

バエル 「やがて人々は、偉大なる夕子さんと私を、ただの支配者ではなく、女神と崇めるようになりました。 人々から尊敬と崇拝をうける楽しい日々、永遠とも思われる繁栄の中・・・しかし、突然の惨劇が起こったのです」


バエル 「ある日、空間転移して別惑星に行こうとしていた私達は宇宙空間で凄まじい大爆発に遭遇しましたの、閃光と破壊エネルギー、その圧倒的パワーの前に、私達は別の宇宙に飛ばされてしまいました」

夕子 「あれは酷かったねー、髪の毛、こげちゃった」

バエル 「あの爆発が単なる自然現象だったのか? それとも私達と戦おうとする敵勢力による捨て身の反撃であったのか? 情報が少なすぎて、判断ができません。 宇宙空間での爆発でしたので、私の星の可愛い住民達がおそらく無事だったのは幸いでした・・・しかし、どうしても許せないコトがありましたの、多くの星々を支配した偉大な女神である私達が、宇宙の放浪者になった事ですわ」

夕子 「女神から放浪者に格下げ! ほんと悲しかったわ〜」

 暗黒の宇宙空間のイメージが消える。 恭一と二人の巨人娘の周囲は、また青空が支配する。 やはりあのイメージは夕子がテレパシーを使って恭一に見せたものらしい。


バエル 「それからはずっと苦難の日々。 行けども行けども暗黒の宇宙空間か、岩だけの無人惑星、遊ぶことも楽しむこともできない! 本当に頭がおかしくなりそうでしたわ」

(いえ、あなたの頭でしたら、もう完全におかしくなってますけど)
 恭一は心の中でつっこみをいれる。 夕子に心を読まれているかもしれないが、考えてしまうものは仕方がない。

バエル 「長く、つらく、悲しい宇宙の放浪生活・・・どうして善良で美しく、心優しい私達がこんな不幸にあうのでしょうか?」

「そうね、私達、何も悪いコトしてないのにね」
 先ほど恭一が言ったのと同じ言葉を夕子が言う。

バエル 「それで暗闇の宇宙の中、私達は誓いましたの、もし無事に美しい惑星に私達が行けたら、最初に出会った小人を、うらみ半分ギッタギッタにしてやろうって!!」

夕子 「そうそう、最初に出会った小人をやっつけるのだー」

 ちょ、ちょっと待って、そこ違う!それって、ただの八つ当たり。

バエル 「そんなある日、恭一様のテレパシーを夕子さんがキャッチしてくれました。 おかげで私達は惑星地球の位置が分かり、ここに来れましたの」

夕子 「えへっ、私ってえらいでしょ、褒めてくれていいのよ」

バエル 「悲しい放浪生活も終わりました、これほどの感謝と喜びはありません! ゆえに、あなたは私達の力の前に、虫けらのように捻り潰される運命なのです! これが(恭一様の罪)です、この実に論理的な話を理解していただけましたでしょうか、恭一様?」

 いや、ちょっと、ちょっと待ってーな、そこ違うって!
僕のおかげで苦しい旅が終わったのなら、普通は感謝するやろ!

 それにしても何を言っているのか? 「恭一の罪」とか言うから、どんな恐ろしい話をするのかと思っていたら、自分達が昔、別の惑星で悪さして女神だと威張っていたら、謎の爆発に巻き込まれて宇宙にぶっ飛ばされただけかい、それが何で僕の罪なんだよ!
 自業自得・・・というか、見事なまでに天罰覿面の物語だ。

夕子 「あー、この小人、私達が悪いって考えてるよ!」
バエル 「な、なんですって!」
夕子 「天罰覿面だって」

 巨大な胸に囚われたままの恭一は頭を抱える。 やはりこういう展開になった、この女巨人は恭一の心が読めるのだから。

「私達の悲しみを分かってくださらないとは・・・もう許しませんわ、こうなったら、悪い恭一様には、たっぷりとお仕置きをしてあげます」

「わーい、悪い小人は
お仕置きだー!」

 恭一は目の前が真っ暗になるのを感じた。


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 恭一の運命はいかに!! 今週はこれまで〜。

 (続く)

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