ウェンディ物語 2


シャドー・作
笛地静恵・訳


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 2


 月曜日。 ウェンディが、自分を普通に仕事にいかせたことで、ジャニスは驚いていました。
自分自身も、いつもと同じように学校に行ったのでした。


 たぶん、娘の狂気の所業を止めるためにできることが、普通サイズの人間でいる間に、
何かあるに違いありませんでした。

 でも、何ができるというのでしょうか?
いつも会社では、山のような仕事を抱え込んでいたのです。

 でも、まず最初に、ウェンディという鬼がいない隙に、少しでも体力を回復しようとしていました。


                 ******


 ウェンディは、学校に行くのが待ちきれませんでした。
友人たちは、彼女が手に入れた新しい力が、信じられないことでしょう。

 彼女たちの敵たちに、いくらかの復讐さえできそうでした!
ハイスクールの制服は、上が白いブラウスで、下はチェックのプリーツ・スカートでした。

 サスペンダーは、している子と、していない子がいます。
ジュディは前者で、ビヴァリーとウェンディは後者でした。

 ホールでビヴァリーと顔を合わせた後で、最初の授業のあるクラスに向かいました。

 物理の時間でした。 彼女は、物理が大嫌いだったのです。それは最悪の科目でした。
どんなに一生懸命勉強しても、合格に必要な最低の点数さえ、取ることが出来なかったのです。

 ハンソン先生も、自分のことが嫌いなのだろうと想像していました。
それを表情や行動で、露骨に示しているような感じがしました。

 机に座ると、彼女はミニ・テストの問題に取り掛かっていました。
テストが終了しました。 彼女は手に答えの用紙を持って、自分の席に戻りました。

 自己採点をしました。 今回は、自分としてはとても珍しいことに、Bランクだったのです。
努力が報われていました。 気分が良かったのです。

 ハンソン先生は、学生たちが静かにテキストを読んでいる間に、テストを採点していきました。
やがてテスト用紙を返却していきました。
彼女にテストを手渡す前に、刺すような厳しい視線を向けて睨んで行きました。

 ウェンディは点数を見ました。 Dランクでした。 この下衆野郎。
ウェンディは、今、この瞬間にも、彼を殺してやりたいと強く願いました。

 しかし、もう一度だけ、チャンスを与えてやるつもりでした。
彼のことは、後できちんと始末をつけてやるつもりでした。


                 ******


 ランチの間、彼女は友人たちと、一緒の席に座ることにしていました。
あの小さな秘密を、ばらす時でした。 最良の方法は、実物で例を見せて上げることでしょう。

 お気にいりのテーブルに向かいながら、ちょっと立ち止まって、手近の適当な獲物を縮小すると、
手の中に隠して摘み上げました。 

「ねえ、いくら君たちでも、この週末に、ぼくに起こったことは、信じられないと思うよ!」
 彼女は、そんな風に話を始めました。 
「わたしったら、魔法のクリスタルを見付けたのよ……」

「ああ、そうなの。 ウェンディ。 わたしも実は、妖精を捕まえたのよ」

「違うのよ、ちゃかさないでちょうだい。 見せて上げるから。
あなたたも、こいつが気にいってくれると思うんだ!」

 ポケットから、何かを取り出しました。
手の上に、お碗の形にしたもう片方の手を、乗せていました。 そのまま、説明を始めていました。

「あなたたちも、いつも、わたしたちにからんでくるケイシーには、
いいかげん、うんざりしていると思うのよ? もう、たくさん!」

 十センチメートルの身長にも満たないケイシーを、テーブルの上に乗せていました。

 少女たちは魅せられたような表情で、この小さな恐怖に震える食堂のテーブルの上の少女を、
見つめていました。 ケイシーは、いつも他の多くの大柄な少女たちよりも、さらに大きな少女でした。

 二年生と比較しても、ほとんどの者に勝っているぐらいでした。
長身で力が強いというだけではなくて、とても可愛らしい少女でした。

 チアリーダーの団長として、最有力の候補と目されていました。
……少なくとも、今日までは。

 とうとう、ビヴァリーが口を開きました。 
「おお、神様。 これって、とっても、すてき!
わたしたち彼女に、どんなお仕置きをしてあげるべきだと思う?」

「そうよね、わたしが思うに、彼女の派閥の仲間たち全員を集めて、
ちょっとした復讐戦を開催したらどうかしら?」
 ウェンディが、いたずらな笑みを浮かべていました。 

「なんて、すてきなアイデアなのかしら。
ねえ、彼女たちをすぐに見付けにいきましょうよ!」 と ジュディ。 

「こいつは、楽しいことになりそうだわ。
あたし、あのグロリアを手に入れるまで待ちきれないぐらいよ。
あいつにも、ついに年貢の納め時が来たのよ」
 ビヴァリーは、自分の金髪を手でばさりと払いのけるようにしました。 

「彼女は、わたしの足にキスしながら、どうか、踏み潰さないでと、命乞いをすることになるのよ」

 少女たちは、そのアイデアに明るく大声で笑っていました。

 犠牲を捕獲しに、建物に入って行きました。


                 ******


 グロリアとキムは、ウェンディたちがやって来るのを見つめていました。
彼女たちを見かけた時には、軽蔑の表情を浮かべて笑ってやるのが、いつもの日課でした。

 いつもウェンディたちは、大柄なグロリアたちから見下されている、哀れな存在でしかなかったのです。
一度だけ彼女たちの一人が、いくらか骨のあるところを、見せてくれたことがありました。

 金髪の少女でした。 でも、グロリアたちは彼女の片腕を、後手にして締め上げてやったのです。
彼女たちが、美しい女神様たちであるといわせてやりました。

 たっぷりと十分間というもの跪かせて、崇拝の気持ちを表現させてやったのでした。
こうしたたぐいのいたずらが大好きでした。 

 神経質そうにしながらも、三人の少女たちは、長身の少女たちの方に歩いて来ました。


 新しい力が身についていると分かっていても、彼女たちに対して
恐れを感じずにいるのは難しいことでした。 近寄っていくごとに、不良たちの表情に、
自分たちを見下している軽蔑の表情を、読み取ることが出来ていました。

 いつもは、彼女たちはその辺りで方向転換して、大回りしてでも、
クラスまでの遠い道のりを歩いていかなければならないのでした。

 今日は、その地点を過ぎても、真っすぐに歩いていきました。 
グロリアは、他の二人よりもさらに長身でした。 体格もがっしりしていたのでした。

 ものうげに、少女たちの進路を塞ぐようにして、ゆっくりと大きな身体を動かしていました。
大きすぎるぐらいの胸元を、ビヴァリーの顔に向かって突き出してやったのでした。

 身長百五十センチメートルの少女の、鼻の頭を見下ろしてやっていました。
ビヴァリーの頭上に、堂々とした威容を見せつけるようにして、聳えたってやっていたのでした。

 乳房の先端でさえ、小柄な少女の顎の辺りに届いていました。 
「どちらにお出かけですかしら。 弱虫サン?」
 からかうような口調で、問い掛けていました。 

「わたしたちを、ほっといたほうがいいわよ。 グロリア」
 ビヴァリーは震えていました。

 グロリアには、自分の耳が聞いた言葉が信じられないぐらいでした。
この小娘は、もう自分を女神様と崇拝したあの時のことを、忘れてしまったと言うのでしょうか?

 もう一回、お仕置きが必要なようでした。 

「何を言っているんだい?」
 キムが、彼女の肩を掴まえていました。 

「また小便をちびるまで、ぶんなぐられたいのね?」
 キムが捕まえたビヴァリーの頬を、グロリアは何回も平手打ちにしていました。

 キムは、ビヴァリーの両手を後に回して、高くさらに高く釣り上げていました。
ビヴァリーの両足が、地面から浮き上がっていました。

 ウェンディはショックを受けて動けなくなっていました。
ほとんど、この場所から走って逃げたいぐらいでした。

 でも、クリスタルを握り締めていました。
その力を目の前の不良少女たちに、使用したのです。

 彼女たちは、急速に縮小していきました。 ビヴァリーも一緒でした。
グロリアとキムは、何が起こっているかに、気が付きもしていませんでした。

 今日の獲物を、いじめることに熱中していたのです。
他の犠牲達が、巨人に変身していることにも気が付きもしませんでした。

 ジュディは手を伸ばしました。 グロリアを掴まえていました。

 ウェンディはキムの方でした。
それから、膝まづいて、かわいそうなビヴァリーを見つめたのでした。

 彼女は泣いていました。 頬は殴られたために、真っ赤になっていました。

「ごめんね。 ベヴ、わたし、もっといそいでやればよかったのに」 と ウェンディ。

「いいのよ、わたしを元の大きさに戻せるんでしょ?」 と ビヴァリー。 

「もちろんよ。 でも、そのサイズのあなたって、とってもかわいいわよ。
ねえ、もっと後で、みんなで縮小ゲームをして楽しみましょうよ!」

「まあね」 ビヴァリーは、この会話に不安を覚えていました。 

「いいわ、巨人になる準備をしていてね」
 ウェンディは、クリスタルをもう一度、持ち上げました。


 


 シンディ、グロリア、それにキムの三人はテーブルの上で肩を抱き合って震えていました。
泣き叫んでいました。 恐怖のあまり啜り泣いていました。

 巨人の少女たちが、残酷な表情を顔に浮かべて見下ろしていたのでした。

「さてと、みんな自分の犠牲を取りましょうよ。 わたしは、シンディにするわ」
 ウェンディは手を伸ばすと、新しいペットを握り締めました 

「わたしは、もちろんグロリアよ!」
 ビヴァリーは、まだ怒っていました。 頬は真っ赤に腫れ上がっていました。
殴打の衝撃の痛みは、まだ治まっていませんでした。
荒々しくちっぽけなグロリアを掴み上げました。 

「それじゃ、残りのキムがあたしね」
 ジュディは、小指の先でキムの胸を突いていました。 

「まず彼女たちに、わたしたちへの崇拝の念を示してもらいましょう。
足元で跪くさまを見たいわ」 と ビヴァリー。

「あたし、あなたのことを小指で潰せると思うわ。 キム。
ねえ、それって、とっても気持ちが良いことだと思わないこと?」 と ジュディ。 

「わたしは、こいつらを握り潰して、踏み潰して、その上に八つ裂きにしてやりたい気分よ!」
 ビヴァリーがそう言っている間に頬の腫れた赤みが、すうっとひいていました。

「そうね、でも、その前に、まずじっくりと楽しみましょうよ」
 ウェンディは、哀れなシンディを足元の床に置きました。

「わたしを崇めなさい。 虫けら。 そうすれば命が助かるかもしれなくてよ」

 シンディは、床に膝まづいていました。
そして、サンダルを履いた足の、ブルドーザーぐらいのサイズのある爪先を見つめました。
恐怖のあまり悲鳴を上げていました。

「おだまり。 虫けら! もし言うとおりにしないというのならば、踏み潰すだけよ」 と ウェンディ。

「わたしの足にキスしなさい。 お前は、生きている価値もない虫けらなのよ」
 シンディは、そこまで這うように移動すると、ウェンディの足の爪先にキスをしていきました。
「わたしが良いというまで、やめちゃだめよ!」


 ビヴァリーは、ちっぽけなグロリアを、彼女の踵の低いピンクのパンプスの下に置きました。

「わたしが、おまえの上に足を乗せるだけで、ゆっくりと踏み潰されていくでしょうね。
足の二本の指だけで、おまえの首を胴体から引き抜いてやることもできるわ。
でも、そうしたくないのよ……、少なくとも、まだ、いまのところはね……。
靴底をお舐め!」 と ビヴァリー。

「きれいにするのよ、ゴミひとつでも、残しちゃ駄目よ。 さもないと……」
 ビヴァリーは、ちっぽけな少女の上に軽く足を乗せていました。

 小さな顔が苦痛で歪んでいました。
グロリアは、自分の身体が平たくなっていくような感じがしていました。

 それから、重圧が不意に消えました。 彼女は、靴底を言われたように舐め始めたのでした。 


 ジュディは、ミニチュア・サイズのキムを、小指の下に押さえこむようにしていました。
無駄な抵抗をして、悪あがきしている様子に、声に出して笑っていました。

 今、ここで起こっている光景の全部に、秘かに性的な興奮を覚えていたのです。
指の下からなんとか逃げ出そうとしているキムは、とってもかわいらしかったのです。


 ビヴァリーは、足を持ち上げました。 靴底を検査するように見つめました。
グロリアは、次に何が起こるか怯えながら、ただ見上げることしかできませんでした。

 ビヴァリーは、足元を見下ろしていました。
グロリアの頭上に、靴をもう一度降ろしていきました。
「まだ、十分じゃないわね、舐めるのを続けなさい!」


 ウェンディは、シンディから足を持ち上げるようにしました。
シンディは、巨大な足が突然に動いたので、後方に倒れこんでしまっていました。

 サンダルを脱ぎながら、ウェンディは床にしゃがみこんでいました。
片手でシンディを持ち上げていました。

 ちっぽけな少女を持ちなおすと、頭から自分の足の爪先の間に、突っ込むようにしました。
「ねえ、見ててちょうだい!」 友達に声を掛けました。

 シンディの頭が砕け弾け飛ぶまで、足指に力をこめて曲げていきました。
頭が平べったくなっていました。 頭蓋骨が、爪先に挟まった葡萄の粒のように
簡単に潰れるのを、二人の友人もじっと見つめていました。

 そして、ぷちん。

 果実の汁が、ウェンディの足の裏を滑って、踵まで流れて行きました。 

「すてきでしょ。 ね?」

 ビヴァリーは、片足をグロリアの上に静止させたままで、凍り付いたようになっていました。
このまま足を下ろしたいという欲望が、自分でも制止できないほどに高まっていました。

 小さな鼠が大嫌いだったのです。 ウェンディが、シンディの頭を足の爪先の間で挟んで潰す、
凄まじい光景を見てしまった後では、もう二度と後戻りすることは出来ないのだとわかっていました。

 片足を持ち上げて、もう一度だけ自分をいじめた相手の顔を見ました。
ちっぽけで憐れな少女は、背中を床につけて啜り泣いていました。

 命乞いをしていました。

 ビヴァリーは、くすくすと笑っていました。

 それから、一思いに足で踏んだのでした。
このサイズのグロリアが、あまりにも脆くて華奢だったことに、びっくりしていました。

 小さな木の実を潰すのよりも、はるかに簡単なことでした。
まるでバッタのように、ちっぽけな鼠少女が、足の下で潰れていく感触を楽しんでいました。


 ジュディは、二人の友達の行為を仰天して見つめていました。
自分の目が見ていることが、信じられませんでした。

「待ってよ。 人殺しなんてしちゃいけないのよ!」
 そう叫んでいました。

「ああ、神様! わたしたち、これからどうすれば良いんでしょう?」

「落ち着きなさいな。 誰に、わたしたちのすることを、咎められると思っているの?
わたしたちは、無敵なのよ!」 と ウェンディ。 

「わかんないわ……。 彼女たちの家族とか友達とかじゃない?」 と ジュディ。 

「だれにも分かりはしないわ。 わたしは、もっと楽しみたいだけ。
それに、そうねえ……、もし家族たちが騒ぎ立てたりしたら、
それも一緒に、始末しちゃえば良いだけのことでしょ」 と ウェンディ。


 4


 ウェンディは、ロバート・シャーウッドに恋していました。
ロバートは、フットボール・チームの一員でした。 そして、弱いものいじめをするような男でした。

 でも、ウェンディは、少女たちが時にそうであるように、そんな彼に憧れていたのです。
正体をそれと知る事無く愛していたのです。 彼は、……ならず者でした。

 ホールに下りてくるのを見ただけで、ウェンディのハートはときめいていました。
自分が一番セクシーに見えるような角度になるように、そこに佇んでいました。

 けれども、それ以上どうしていいのか、何もわからなかったのです。
外部の目からは、ちょっとおかしく見えるほどに緊張した様子で、ロバートが自分のすぐ傍らを
通り過ぎていくのを感じていました。 


 ロバートは、ホールにいる三人の少女たちを、視野の隅に捉えていました。

 下級生たちでした。 「青い果実たち」でした。 そう呼ぶことを好んでいたのです。
茶髪で青い瞳の一人は、まあ、ましな方でした。

 しかし、彼の好みは、もう少し成熟した、おっぱいの大きな女たちであったのです。 
「こいつは、おもしろくなりそうだぜ」
 彼は少女たちが近寄ってくることを、友人のジョーにそう耳打ちしていました。 


 ジュディは、その時にはまだキムについて自分がどうするべきなのか、態度を決めかねていました。

 手のひらに、ちっぽけな少女を包み込むようにしていました。
自分が遅かれ早かれ、彼女を殺すか、それとも、ガラスビンの中で飼うことにするかを、
決めなければならないとわかっていました。 

 キムは、彼女の手のひらの上から外を眺めながら、二人の男子学生が、
こっちに近寄ってくるのがわかっていました。 

「ハイ、きみたち。 ベイビー・シッターは、どこにいるんだい?」
 ロバートは少女たちの脇をすぎながら、そうからかっていました。

 ウェンディの瞳に明らかな失望の色を読み取っていました。
声に出して、笑ってしまっていました。 

「あなたたちって、もっとすてきな人なんだと思っていたのに!」
 ビヴァリーは、怒ってそうどなっていました。
少年たちの歩みを止めさせるような大きな声でした。 

「そうでなかったら、どうだっていうんだい。 いじめられっこさん?」 と ロバート。 

「そのつけを、はらってもらうことにするわ!」 と ビヴァリー。 

「ああ、その口を、はやくだまらせるんだな。 小娘ちゃんたち。
さもないと、お尻をぶたれることになるぜ!」
 もう拳を振り上げる用意をしていました。 

 ウェンディは、今度はすばやくクリスタルを少年たちに向けて、かざしていました。

「わたしたちをバカにするのは、やめることね。
わたしは、あなたを虫けらのように、二つに引き裂けるのよ!」

「ああ、ほんとかい。 見せてもらいたいね。 ひょろひょろさん。
サーフボードにして使うにしても、ちょっと平べったすぎるんでね」 と ロバート。

「ワアッ ハ ハ ハ ハ ハア!」
 ジョーが哄笑していました。 

 まばゆい光が、クリスタルからほとばしりました。
少年たちの目が、瞬間、暗んで何も見えなくなっていました。


 視界が戻ってきたときに、瞳に飛び込んできた風景は、とても信じられないようなものでした。

 ウェンディが手を延ばして、ちっぽけなロバートを掴み上げていたのでした。
彼としては彼女には、もともと何の興味も持っていなかったのです。
どんな誘いがあったにせよ、そんなものは記憶に残ってもいませんでした。 

 ウェンディの手の中では、彼の身体はとても脆弱に感じられました。
両手の親指を背中の真ん中辺りに、人差し指の先をお腹の上を挟むようにして、
顔の前に持ち上げていました。

 ビヴァリーとジュディも近寄って、その様子を眺めていました。
ロバートの顔は反対に向かされていたので、表情の変化をゆっくりと楽しむことが出来ていました。

 友人の手のなかにいる彼の姿を楽しんでいたのでした。
このドラマの結末は、もう一つだけしか残されていなかったのです。 

「あなたは、この顔を見たくもなかったんでしょうけど。
少しは注意して、眺めた方が、良かったかもしれないわね!」 と ウェンディ。 

「どうか!やめてくれ! おれは、そんなことをいったつもりはない! やめてくれ!お願いだ!」
 ロバートは、哀願していました。 

「遅すぎたわね、小さなぼうや。 女神達を、侮辱するべきではなかったのよ。
あなたの人生を終らせることになってしまったわ」

 ウェンディは、両手の指で彼の胴体の真ん中を掴んで、背骨を折り曲げてやりました。

 ゆっくりとです。 徐々に徐々に、折れ曲がっていきました。
苦痛ができるだけ長く続くことを願っていたのです。

 少女たちは、くすくすと笑っていました。
ロバートが、背骨が爪楊枝のようにぽきんと折れる瞬間に、憐れな悲鳴をあげたからです。

 今ではぐったりとした身体は、ウェンディの手の中で、おかしな形に曲がったままになっていました。
手足が指にだらりとからんでいました。 ウェンディは床に落として、靴で踏み躙ってやりました。

 片方の瞳をジョーに向けたのでした。 

 ジョーは、友人が死ぬ光景をただ凝視していました。
想像できる限りの、もっとも残虐な死の光景でした。

 今では巨人たちは、彼を見下ろしていたのでした。


 失神していました。 


 5


 目が覚めたときには、素裸にされていました。

 キムの傍らに横たわっていました。 彼女もまた全裸でした。 

「なんだ、おれは夢を見ているのか! 最初のは悪夢だったが、こいつは艶夢だ!
夢が現実になったんだからな!それにしても、不思議な夢だなあ!」 そう自分に呟いていました。

 これは夢なんだと考えながら、キムの体をじっと見つめました。
彼女は眠っているようでした。
この夢が自分をどこにいざなっていくつもりか、楽しみに待っていました。

 彼の願いとしては、最後まで行きたかったのです。


 その時、巨大なサンダルが視野に入ってきたのでした。


 ジュディが二人の人形を見つめていたのです。
片方は、目が覚めたようでした。
二人共に目を開いたことを確認すると、片足を彼らの眼前に置きました。

「おまえたち、二人共! あたしの足に登るのよ」

 彼らはためらっていました。 彼女はいらだって足を踏みならしました。
彼らは床から飛び上がって、尻餅をついていました。 

「さあ、はやく!」
 彼女が命令していました。

 彼らは、少女の素足の甲に飛び乗っていました。
彼女はかすかな重さを足の皮膚に感じていました。

 とても、かわいらしかったのです。 

「あたし、あなたに、足の上でセックスするのを見せてもらいたいのよ、ジョー。
始めなさい。 あたし、あなたたち男子が、一秒間で勃起して見せると自慢しているのを、
本当に見てみたかったの。 さもないと、あなたたち二人共、あたしの指で犯してあげるわ。
まさか、あたしの親指ちゃんに、肛門を掘られたくはないと思うのよ?
だから、始めてちょうだい。 それとも、また半分に引き裂かれたいのかしら?」

 小さなカップルは、すぐにキスを始めていました。

「だめよ、前戯なんていらないわ! 挿入するのを見たいの。 今、すぐによ!」

 ジョーはキムの身体を引き寄せました。
そして、巨人の少女の要求の通りにしようとしたのでした。

 けれども、キムは大柄な体格の少女としての全力を上げて、彼のことを引き剥がそうとして
抵抗していました。 彼の侵入をなんとか防いでいました。

「いや! したくない! やめて!」
 ジョーが力ずくで、自分をねじ伏せようとしているのに、抗議していました。 

「キム、もし君が受け入れてくれなければ、おれたち二人共死ぬんだぜ」

「それでもいいわ。 わたしの上から、どいてちょうだい!」
 彼女は、彼を押し戻していました。 


「ああ、そうなの。 あたしは、警告はしたわよねえ」


 ジュディは爪先を立てて足を傾けました。 ちっぽけな人間たちを、床に振り落としていました。


「さよなら」


 ジョーとキムは、ジュディが巨大な足を彼らの頭上に持ち上げるのを、見つめていました。

 キムは両手でジョーを抱くようにしていました。
それがゆっくりと、空から下降してくる間にも、しっかりとお互いを抱擁していました。

 ジュディは、ちっぽけな骨が靴底の下で壊れていくのを感じていました。 



「ああああん。 これって、二人分の快感だわ!」

 サンダルの下から、赤い血が滲み出て、とろりと流れていました。


                 ******


 こうして長年の敵のすべてが、足の下で小さな血の染みになってしまった後で、
少女たちはこれから何をして楽しもうかと、真剣に悩んでいました。

 自分達と出会うすべての人間の命を、掌中に乗せているのは明白な事実でした。

 今では、すべての虫けらどもに、偉大な巨人達がここにいるのだということを、
思い知らせる仕事に取り掛かる必要があったのです。


 でも、そのためには、どうすれば良いのでしょうか。





 ウェンディにも、何もわかってはいませんでした。 






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ウェンディ物語2 了




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