《70マイルジェニー
パート3


                           原作・ヘディン
                           文・みどうれい




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軍は、この非常時に対応しようとしていた。

巨大女による大災害が起こっている。
最新鋭のジェット戦闘機の編隊が、基地から発進する。





情報は混乱していた。
パイロット達のほとんどが、自分が何と戦うのか知らずに出撃していた。
しかし、彼らが目標を見誤ることはなかった。
誰もがジェニーの存在を、肉眼で確認できた。

あまりにも大き過ぎる。

標的の全身像すら見えない。
成層圏のはるか上に伸びる、巨大な白い脚だけが見えた。

突然、悪夢の世界に放り込まれたパイロット達は、呆然とする。
すぐに強烈な衝撃が、彼らの攻撃機を襲う。
ジェニーの体の動きで、ハリケーンよりも凄まじい突風が吹き荒れているのだ。
戦闘機のほとんどがコントロールを失い、あらぬ方向に飛ばされる。
すでに勝敗は決していた。
こんな怪物に勝てるわけがない。誰の目にも明らかだ。

彼らは、このような場所への出撃を命令した司令部を罵りながらも、
最後の力を振り絞り、ミサイルを撃ちまくる。

最新鋭の戦闘機は、彼らが最も高く飛べる高度まで上昇していた。
しかし、彼らの攻撃はジェニーの膝下にしか届かない。
無数のミサイルが、彼女の向こう脛の上で、オレンジ色の小さな炎となって砕け散る。
かすかな爆煙は、ジェニーの脚の上からすぐに消え失せる。
もちろん、ジェニーの美しい肌に傷一つない。

彼らの必死の爆撃も、ジェニーは、くすぐったいとさえ感じない。
彼女は自分が攻撃されていると、気がついてもいなかった。

戦闘機はジェニーの足の動きによる乱気流に巻き込まれ、全てが空中で砕け散った。
爆撃機の残骸は、逃げる人々の頭上に降り注ぎ、市民の犠牲者をさらに増加させた。

基地からは、地上部隊も出撃していた。
重装備の戦車、ロケット砲を搭載した戦闘車両、歩兵部隊を乗せたトラック。
しかし彼らは、逃げる市民の波に飲み込まれ、ずたずたの道路で立ち往生していた。

地上部隊の指揮官が、戦闘よりも、住民の避難誘導を優先させようと判断した時、
轟音と共に、ジェニーの足が地面に踏み下ろされる。
強烈な衝撃波が、放射状に地面を走る。

いくつもの軍用ジープが、マッチ箱のように、そこに飛ばされる。
重装備の戦車大隊も、地面から跳ね上げられる。
戦車の装甲は破壊されなかったが、車中にいる砲撃手は、衝撃で天井に叩きつけられ、
命を失うか、生きていても戦闘不能の状況に陥る。

そして彼女の次なる一歩に、地上軍は、まとめて、さくっと踏み潰される。
彼らには攻撃をする時間も、逃げる余裕も無かった。

ジェニーの踏んだ大地からは、地下水が噴き出している。
数億年かけて蓄積した、豊富な水資源がこの場所にあった。
地下水の噴出により地面は液状化し、湖が出現する。

ぺしゃんこになった数十台の戦車が、ずぶずぶと音をたて、そこに沈んでいく。
人間の軍隊は彼女の前では、おそろしいまでに無力だった。

退屈したジェニーよりも始末の悪いものは、何もなかった。

退屈した女性は、自分が何でもできる時、いったい何をするのか?
おそらく自分のしたいことの全てを、するだろう。

そして
彼女が、ものすごく巨大な時、人々はいったいどうすればいいのか?

ジェニーはあまりにも巨大過ぎて、速過ぎた。
遠くまで逃げていた人々も、ジェニーの大股の一歩で追いつかれ、踏み潰された。

ジェニーが、大勢の人間を地面に擦りつけ、ただの肉の塊にしたのを知り、
人々は巨大な彼女に、底知れぬ恐怖を感じた。
相手が普通の女性なら、彼らはどんな女性でも恐れはしない。
しかし、この大女は人間の想像を、はるかに超えた存在だった。

ジェニーはその巨大ボディにも関わらず、ごく普通に歩いていた。
空気の抵抗も、空間の特性も、彼女の力を止められない。
人間が時速4kmくらいで歩くのなら、
その6万倍のサイズのジェニーは、平気な顔をして、時速24万kmで歩いていた。
音速をはるかに超えている。
物理の法則さえ、完全に無視していた。
いったい、誰がジェニーから逃げられるというのか?

町には独身男性も大勢いた。
彼らの何人かは、いつもスポーツジムに行き、逞しい体を鍛えていた。
フォトスタジアムへ行き、料金を払い、女の子の撮影をする者もいる。
彼らは、可愛い子ちゃんと仲良くなれるチャンスを、いつも待っていた。

ジェニーの引き締まった体は、太陽の下で輝いている。
男達もジェニーの美しさに気がついて、目を瞠っていた。
しかし、彼女とファックをしたいと考えた者は、ほとんどいなかった。

実際、ジェニーはあまりにも大き過ぎた。
男達は、ジェニーの陰毛の一本を持ち上げる力もない。
彼女のプッシィは、山脈の全てを飲み込めそうだ。
そして、それで彼女が満足するかどうかさえ、疑わしかった。

ほとんどの家を壊し、大勢の人を殺した地震が止まった後に、
疲れ果てている人々は、その場にへたり込んだ。
彼らはジェニーを見上げる。
彼女の恐ろしい目は、二つの月のように地上を見下ろしている。
人々は、大女が地面を見つめる時の、彼女の退屈そうな表情を見て、
彼女が次にすることを想像し、悲鳴を上げ、再び走り始めた。

パニックは彼女の足元にいる人々の間で、広まっていた。
彼女は、また情け容赦もない殺戮と破壊をするに違いない。

「運命は人の知らないどこかで、ずっと以前から決められている」
人々の中には、そう考える宿命論者もいた。
彼らは不運な事故があった時 「これは運命だ」 と考え、悲しみを乗り越えていた。

しかし、そういう宿命論者の男達でさえ、自分が、巨大女に潰されて死ぬ運命だとは、
とうてい受け入れることが、できなかった。
人々は、前を行く者を蹴り倒し、先を争って逃げた。

ジェニーを中心にした100平方kmの道路に、3万台以上の車がまだ残っていた。
他に約1,000台のジープと2,500台以上のトラックもあった。
道路は無数の車が溢れ、動くこともできない。
多くの運転手達は自分の車を捨て、前の車の屋根に駆け上がり、
車列の上を必死になって、疾走していた。

無謀な運転をする者がいる。
彼らは逃げるために、農地や、人の家の敷地内に突っ込んでいく。
自分さえ助かれば、それでよかった。
人としての秩序など、とうに失われていた。
ショッピングセンターの中にも、車ごと進入し店舗を破壊し、人を跳ね飛ばす。
それが4WD(四輪駆動車)の場合、悪路でも走るので、被害がずっと大きくなった。

その暴走運転手も、壁に激突して車が止まると、群衆に車から引きずり降ろされる。
そこで、彼は、「大女に踏み潰された方がマシだ」 と思うくらい、男達に殴られた。

彼女が近づいて来た時、人々は地面の揺れに立っていることさえできない。
ジェニーの足は、彼らのほとんどを風圧で空中に投げ飛ばし、
地面に叩きつけて潰すのに、充分な力を持っていた。

吹き飛ばされた人体は、3kmも先に飛ばされる。
それは、ジェニーから逃れようと走っている人々の上に落ちて、周囲に跳ね散る。

空から落ちてくる物を避けることができた人々は、目の前で砕け散った赤いモノが、
自分と同じ人間であったことを知り、絶望と恐怖の悲鳴を上げる。
そして、すぐに彼らもジェニーの足に残酷に踏み潰され、地面に塗りつけられた。

数人の男達がジェニーの足の方向へ走っている。
驚いたことに、彼らはジェニーの足指の上に登ろうと考えていた。
世界で彼女に踏まれない安全な場所は、彼女の足の上しかないと判断していた。
そんなことは、不可能だと思わなかった。
街の全てが破壊され、平たく潰された人間の体が転がっている。
巨人に対する恐怖は、彼らから正常な判断力を失わせていた。

しかしジェニーが足を上げた時、凄まじい疾風が巻き起こり、
彼らはそこへ吸い込まれ砕け散り、赤いどろどろの肉塊になる。
結局、何をやったところで、ジェニーから逃げられる者などいなかった。

突然、彼女はその場にしゃがみこんだ。
彼らの何人かは、ジェニーの今までの行動をテレビで見ていた。
彼らは驚愕する。大女はあれをやるつもりなのか?
それならば、ここにいる全員が、成す術もなく溺れるしかない。
人々はどうしようもなく、ただ彼女を見つめる。
しかし今回、彼女の秘部の扉は、固く閉じられたままだった。

ジェニーがしゃがんだ時、人々の多くも立ち止まった。
彼らは自分達があまりにも小さ過ぎるから、とても逃げられないと覚悟を決めていた。
彼女がちょっと足を前に出しただけで、全員が踏み潰される。
逃げても無駄だと分かっていた。
数十万人の群衆がジェニーを見上げていた。
巨大な女の視線が自分達を見つめているのに気がついた時、人々は気が遠くなった。

突然、大地を揺るがす地震が起こった。
人々はその衝撃で、空中に放り上げられる。
彼らは巨大な手が、空から地面に降ろされているのを見た。
それからジェニーは、ゆっくりと手を持ち上げる。
地面には、彼女の手の形にきれいな跡が残されていた。

それは巨大な手の刻印だった。

天空に雷鳴のような声が響き渡る。

「よく聞いて!私はあなた達のためにこれを用意したのよ。
今からこの中に入りなさい!
30分たって私の手形の外にいる人は、助けてあげないから!」


ジェニーが声は耳を両手で塞いでいても、鼓膜を痛めつけるくらい大きかった。
人々は悲鳴を上げ、その場に転がる。
それでも彼らはジェニーの言葉の意味を理解した。
巨大女は、地面に刻印された「彼女の手の跡」に入るように、命令をしたのだ。

ジェニーを怪物だと考えていた者は、彼女が人の言葉を喋るのに驚いていた。
しかし言葉が通じたところで、どうなるモノでもない。
何かを叫んだところで、彼らの声は小さ過ぎて、彼女には聞こえない。
時間がくれば、再び彼女は彼らを踏み潰すだろう。
今は彼女の命令に従うしかない。人々の多くはそう判断した。

生きるための戦いは、再び始められた。
人々はあらゆる方角から、地面にある彼女の手形の中に逃げ込もうとした。


* * * * *


ジェニーは、次に何をするかを考えていた。
30分くらいでは、人々の全てがそこに入るのは不可能だと、彼女にも分かっていた。
ジェニーにとって、これは実験だった。
彼女は人々を集めたかった。
「自分が小さな人々に、命令できるかどうか?」 それを知りたかった。
それができるのなら、彼女の人生に新しい可能性を見つけられるかもしれない。

巨人になった今、世界の全てが変わっていた。
ジェニーは人間社会で生きられない。
彼女は 「これからどうするか」 を決めなければならない。
しかし、いったい何をしたらいいのか?
地面の手形が小さな人々で満たされていく間、彼女は退屈さを持て余していた。

十数歩先に、彼女の白いブラウスとジーンズが脱いだまま置いてある。
ジェニーはもう服が必要だとは思わなかった。
裸でいるのは、本当に暖かくて快適だ。
彼女は、「もうずっとこのままの姿でいい」 と考えていた。

しばらく考えたジェニーは、サンダルの革紐をほどき、靴を脱ぎ裸足になった。
もう靴など必要ない。破壊し尽くされた町の上に、彼女のサンダルを置く。
地面は彼女にとって、本当に踏み心地がいい柔らかさだった。
彼女の足は美しくて強い。
昨晩、砂漠の虫に刺されると怯えたことなど、今となってはお笑いだ。

地面には、ちっぽけな人間達しかいない、
彼らは、ただジェニーに踏み潰されるだけの存在だ。
彼女の足の皮膚を傷つける力さえ持っていない。
男達が何年もかけて造ったビルの街が、彼女の一足で地面に圧縮される。
その想像はジェニーに、心地よいエクスタシーを与えてくれた。
それは今までに経験したことのない、圧倒的な力への欲望だった。

その時、ジェニーは彼女の足指の爪の上で、かすかな炎が燃えるのを見た。
1機の飛行機がそこにぶつかって、爆発したのだ。
ジャンボジェット機のようだった。
彼女はそれが飛んでいることにさえ、気がつかなかった。
ジェニーは足指についた機体の小さな染みを、人差し指の先で拭ってみた。
明るい色のペディキュアは、かすり傷さえついていない。

ジェニーは究極の力を持っていた。

ジェニーはこの後も、彼女の足の下で人々を踏み潰して楽しもうと考え、微笑んだ。

誰が、無敵の力を持つ彼女に、抵抗できるのか?

ジェニーは周囲の地面を見渡した。
飛行機が上昇するような角度で飛んでいたのを、察知していた。
近くに飛行場があるのだろう。
すぐに彼女は、右側後ろの地面に「小さな飛行場」があるのを見つけた。

彼女は屈んで、そこに顔を近づけてみる。
それは吹けば飛ぶような、ちっぽけな飛行場であった。
二本の滑走路と 数機の飛行機が見える。
飛行場に連なる道路には、無数の車が、そこへ行こうと列を成している。
大勢の人々が、空へ逃げようとしているのは明らかだった。

「あらあら・・・あなた達は、私の言うことが聞けないのね?」

ジェニーは彼らに、彼女の命令に従えば許してあげてもいいと、約束したのだ。
それなのに、この飛行場には、ジェニーの言葉を無視する連中がいる。
重大な裏切り行為だ。

「お仕置きをしてあげないと、ダメみたいね」

彼女はクスッと笑う。
ジェニーの唇の間から、凄まじい息吹が噴き出す。
地上のあらゆる物が吹き飛ばされた。


* * * * *


弁護士ジャン・ルワードは緊張していた。
何が起こっているのか知っている。
とんでもない怪物が暴れているのだ。もう何人死んだか分からない。
彼の住む町が襲われるのも時間の問題だろう。

ジャンの家から車で30分くらいの場所に、国際空港がある。
飛行機で、この町から脱出するしかない。
彼はパスポートと財布を持ち、家を出る。

ふと見ると遠くの空が黒ずんでいる。都市が燃えているのだ。
ジャンは呆然とする。
こんなに早く来るとは、思わなかった。
自分が、テレビドラマの主人公になったような気がした。
彼は車に飛び乗ると、猛スピードで発進させる。

「焦るな、冷静に行動しろ」
彼は自分に言い聞かせるように、呟く。
ジャンは今まで、大きな怪我や病気をしたことがない。
地震や津波のニュースも、テレビの世界の話だ。
彼は運のいい男なのだ。今回も無事に逃げられるに違いない。

突然、凄まじい地震が道路を引き裂く。彼の車はそこで見事に横転する。
車の緊急用エアバックが開き、運転席のジャンを保護する。
彼の車は、万が一の事故の時でも、運転手を守るように設計されていた。
それでもジャンは衝撃による苦痛のため、しばらく動けなかった。

人々の悲鳴が聞こえる。大地が大きくうねっている。
彼はショックを受けていた。こんな地震は経験したことがない。
ガソリンの匂いがする。引火したら、たいへんだ。
ジャンは痛みを我慢しながら、車の運転席から這い出す。
アスファルトの道路が、ずたずたに寸断されている。
他の車も横転するか、道路のひび割れで動けなくなっていた。

恐ろしい予感と共に、ジャンは空を見上げる。
異世界の存在が、そこにあった。

肌色の巨大な柱が、天空にそそり立っている。

いや、それは柱などではない。

生きた人間の・・・そう、女の脚なのだ!

彼は悲鳴を上げ、大勢の群衆といっしょに走り出した。
山脈の向こうにそびえ立つその足は、町の全てを踏み潰せるくらい大きい。
その巨体のため、太陽が陰って見える。
人々は皆、同じ方向に・・・「空港」に向かって走っていた。

周囲に甘い匂いが漂っている。
男の情欲を煽り立てるこの香りを、ジャンは知っていた。
そう・・・これは女性のラブジュースの匂いなのだ。
以前、彼は大柄なラテン系の女とつきあっていた。
彼よりも20センチも背が高い女は情熱的で、二人は毎晩ベッドで愛しあった。
その時の彼女の香りを、彼は覚えている。

ジャンは走りながら、驚愕していた。
町に壊滅的な破壊を与えたモノは、ただの怪物ではない。
あれは人間の巨大な女だ!
そして、性的に興奮しているらしい。
背中越しに焼けつくような視線を感じる。

「欲情した巨大女」が彼を見つめている!
事態は、彼の理解できる範囲を超えていた。
正気を失うような異常さが、世界を支配している。

ジャンは、有能な弁護士として、20年以上も法曹の世界で生きてきた。
難しい裁判でも、彼はその非凡な能力で、依頼人を勝訴させてきた。
莫大な報酬が、いつも、彼の銀行口座に振り込まれていた。
しかし今日は、巨大女が、彼の戦う相手だった。
彼女には、ジャンの優れた法律知識も、交渉力も、全てが無意味だった。

しかしジャンは希望を捨てていなかった。
空港まであと少しの距離だ。
飛行機に乗れば、怪物女の手の届かない空に逃げられる。
彼は持てる力の全てを使って、走り続けた。

巨大な女が、何かを叫んでいる。
雷鳴のような声に、ジャンは両手で耳を塞ぐ。
頭がすごく痛む、鼓膜が破れそうだ。
それでも、彼女の言葉の意味を、なんとか理解できた。

「地面に手形を作ったから、その中に入りなさい。
そうしないと、私は、あなた達を助けてあげない!」
彼女は、人々に、そう命令をしていた。

「何を言ってやがる、バカヤロー」
ジャンは、やけくそで怒鳴る。
そんな所に行ったところで、本当に助かるかどうか分からない。
怪物女の言葉を、聞くつもりなどなかった。
自分の運命を決めるのは、自分だけなのだ。
ジャンは生き残るために、なおも走り続けた。

しかし、すぐに彼の希望は打ち砕かれた。
飛行場近くの道路は、無数の車と人で大混雑をしている。
こうしている今も、あちこちから人が押し寄せてくる。
とても前には進めない。誰もが巨大女から逃げたいに決まっている。

何千人もの人の海に飲み込まれて、ジャンは前へ進めない。
前を走る女性の髪を掴み引きずり倒し、自分が一歩でも前に進もうとする男もいる。
走る人々の肩の上によじ登り、その上を走って行く者もいる。
群衆の中を突っ切っていく車もある。
その車を奪おうと、男が石で運転席の窓を叩き割る。
そこら中でパニックが起こっている。
誰がどういう動きをするか予想すらできない。怒号と悲鳴だけが聞こえていた。
この時になって、ジャンは自分の死を予感した。

ジャンの位置からは見えなかったが、空港はもっと悲惨な状況だった。
ジェニーが地面を踏んだ時に、管制塔が傾いて、空港の機能は完全に失われていた。
大きなひび割れが、無数に滑走路を走っている。
格納庫から無理に出された飛行機は、地面の裂け目に機体をめり込ませるか、
あるいは、離陸するには全く見当違いの方向に、機首を向けていた。

敷地内の柵は押し倒され、滑走路に何百台もの車が侵入している。
破壊された道路から溢れた車が、飛行場内に殺到していた。
数十台の車が、ジャンボジェット機の大型タイヤの前に、とまっている。
その車の姿はまるで、「俺達を乗せないのなら、お前らも飛ばせないぞ」 と
言っているかのように見えた。

もはや脱出は不可能だ。人波の中、ジャンは絶望に気が遠くなる。

その時突然、周囲が暗くなる。空を見上げた彼は悲鳴を上げる。
ものすごく巨大な物が、世界を支配していた。
あまりにも大きすぎて、それが何か理解できない。
空気の重圧を感じ、彼は地面に叩きつけられる。
その物体が下降してきたため、風圧で自分が倒されたと、彼にも理解できた。
彼は最後の力を振り絞り、再び空を見上げる。

彼にも、あれが何か分かっていた。
巨大な女の顔が、天空を覆っている。

そして彼女の視線は、明らかにジャンを見つめていた。
「嘘だ!これは嘘だ!」
ジャンは叫んでいた。もう逃げることも、隠れることもできない。

巨大な女が一片の慈悲の心さえ、持っていないのは明らかだ。
微笑んでいる彼女の表情に、ジャンは全てが手遅れだと知った。

セクシーな赤い唇が、地獄の裂け目のように開く。
彼女の唇は女性らしい優雅な形をしている。
しかし、その唇の幅でさえも飛行場よりずっと大きいのだ。
彼は、恐怖に気が遠くなる。

世界がスローモーションで動くかのように、彼はそれを見ていた。

「ごうっ」という爆音と共に、凄まじい疾風と衝撃波が、地面に叩きつけられる。

ジャンの体は、瞬時に粉々になる。
人々や車、飛行機と、滑走路までもが、砕かれて宙を舞っていた。

最後にジャンは、彼女の顔を見たような気がした。
それはあまりに美しい女神の顔だった。


* * * * *


ジェニーは呆れてしまった。地面を見て、ちょっと笑っただけなのに、
彼女の息吹のため、飛行場のありとあらゆる物が吹き飛ばされていた。
なんと無力なのか。
傾いた管制塔だけが、彼女に反抗するように、まだそこに残っていた。
ジェニーは、その生意気な管制塔に手を伸ばし、指で飛行場ごと捻り潰す。

この周囲には、彼女から逃げようとした人々がまだいるのだろう。
彼女は手近な山脈に右手を伸ばした。
標高2,000mの山脈も、ジェニーにとっては、3cmくらいの地面の盛り土でしかない。
彼女は指先で山を地面からえぐり取ると、何百万トンもの土砂を飛行場の周囲に落とす。
そこを指で押し固める。

(誰も私からは逃げられない)
その考えはジェニーに甘い快感を与えてくれる。
全ての物を自由にできる、力への魅力と誘惑は、とても甘美なものだった。

ぞくぞくするようなエクスタシーが、全身に走る。
彼女は自分のヴァギナが、強い力で締めつけられたがっていると感じていた。
ジェニーは笑いと共に、唇の間から吐息を漏らす。
強力な息吹が、再び都市の残骸の全てを吹き飛ばし、地面を掃除する。

ジェニーは、そこで息を止める。
自分が人々に命令をしていたことを、思い出したのだ。
彼女の命令に従う人々を、鼻息で吹き飛ばすのは、さすがのジェニーも気がとがめた。
彼女は振り返り、地面の手形を覗き込む。

5分くらいが過ぎただけなのに、もうその中に動いている小さな点が無数にあった。
地面に刻印されたジェニーの巨大な手形は、数百mも地中にめり込んでいる。
人々は、傾斜のなだらかな部分を見つけて、必死でその中へ逃げ込んでいた。
他の全てが潰された大地に、ちっぽけな人間達と、彼らの車だけが存在している。

ジェニーは、自分が朝食をまだ食べていないことを思い出した。
彼女はそれについて考えてみた。
不思議なことに、彼女は空腹さを全く感じていない。
若く健康な彼女は食欲も旺盛だ。
普段の彼女は、朝の10時までに何かを食べなかったら、空腹で倒れそうになった。
しかし、今のジェニーはとてもパワフルで、全身に力がみなぎっている。

(お腹が空いたら・・・人を食べてみようかしら?)
ジェニーはそう考えた。
彼女もそんな事をしたくなかったが、他に食べる物がない。
今まで興奮し過ぎていたので、空腹に気がつかなかったのかもしれない。

地面にいる人々を舌で舐め取り、飲み込んでしまうのは簡単だろう。
誰が、彼女に抵抗できるというのか。
彼らは、ジェニーの舌先と戦う力も無い。

もし本当に我慢できなくなったら、ジェニーはどんな方法を使ってでも
大勢の人間を集めて、食べてしまうだろう。
彼らは小さくて手のひら一杯に集めても、彼女を満腹にさせてくれると思えないが、
それでも、小さな肉を噛み砕く食感ぐらいは、楽しめるかもしれない。

しかし、今の彼女は、それほどお腹が空いていない・・・。
ジェニーは空腹よりも、自分が退屈していることに気がついた。
まだ破壊されていない道路に沿って、無数の車が走っているのが見える。
人々は生き延びるために、必死の走行をしていた。

そう言えば、ジェニーの車は、どうなったのだろうか?
今も砂漠の何処かに、置いたままになっているのか、
それとも、巨大化したジェニーが、知らずに踏み潰してしまったのか。

都市よりも大きくなった彼女にとって、車など何の意味も無いと分かっている。
あれは中古車で、よく給料日前に、故障をして、彼女を悩ませてくれた。
もう、あんなモノに乗る必要もなくなった。
それでも、あれはジェニーが仕事に行くための、大切な車だった。

ジェニーが車を失ったというのに、どうして地面の虫どもは、車に乗っているのか?
彼女のイタズラ心が、むらむらと沸いてきた。

「あら、言ってなかったかしら・・・?
生きていたい人は、車に乗っていたらダメなのよ。
今すぐ、そのちっぽけな車から降りなさい!!
でないと、私は虫みたいに小さな、あなた達を、踏み潰しちゃうわよ!」

数秒後に地上で起こった大混乱を見て、ジェニーはくすくすと笑った。
大勢の運転手達が慌てて車の外に飛び出しているのが、分かった。

(やだ、楽しいじゃない・・・)
何万人もの人々が、彼女の言葉だけでパニックを起こしている。
なんだかとても面白い。
巨人になるのも悪くはないかもしれない。

しかし、ジェニーはすぐに飽きてしまった。
人々に命令をしたのはいいが、彼らはあまりにも動くのが遅すぎる。
その間、当然ジェニーも動けなくなる。
ただ待っているしかない。退屈だった。
ジェニーは他の場所に行き、別の遊びをすることにした。

「みんな、逃げようなんて考えちゃだめよ!私は30分後に帰ってくるからね!」

彼女はそう言って立ち上がり、再び歩き出した。


* * * * *


ジェニーは遊べる場所を探す。
右の方に見える大都市が、楽しめそうだった。
14歩のすさまじく破壊的な歩行の後、彼女は都市の前に立った。
彼女は、自分が何を踏んでいるかを、あまり気にしてはいなかったが、
それでも最後の3歩ほどは、彼女の遊び場である都市を破壊しすぎないように
注意して、ゆっくりと慎重に足を地面に下ろした。

超高層ビルのいくつかが、彼女の足の親指がちょっと触っただけで、
ぐしゃぐしゃになるのを見た時、彼女は自分の秘部の筋肉が興奮して痙攣するのを感じた。
ジェニーは今、はっきりと理解していた。
自分が街を破壊して、エクスタシーを感じていることを・・・。
そして、自分がそれを楽しんでいることを・・・。

ジェニーが、そこにしゃがんだ時、彼女は地面が大きく揺れ、町の区画が歪むのを見た。
彼女は股間に愛液を沸きだたせながら、彼女の凄まじい体重で多くの建物を破壊した。

彼女は遊び半分で右手を伸ばし、人差し指の先の下で都市の1区画全てを押し潰す。
ジェニーは、一番大きそうな超高層ビルの1つに目をとめた。
それは小さいクリスタルガラスで、できているように見えた。
彼女はそれを持ち上げようと考え、親指と人差し指を伸ばして、慎重に摘んだ。
けれども彼女が建物を引き抜こうと、わずかな力を加えただけで、
ビルは土台からぐしゃぐしゃになって、彼女の指先の間で、あっさり潰された。

今の彼女は、あまりにも大きくて強い。
米粒サイズのビルを、指先で摘み上げるのは無理だろう。
しかし、ジェニーはどうしても超高層ビルを摘み上げてみたくなった。

ジェニーが気に入ったもう1つのビルが、そこにあった。
彼女は目的のビルを潰さないように、さっきと違った方法をすることにした。
ビルに触れないように気をつけて、中指と人差し指を、その両側の地面に下ろす。
その高層ビルは、他の3つの大きいビルの間に建っていた。
巨大な指は、恐ろしいまでの簡単さで、その3つのビルを押し潰す。

彼女の爪は、飛行場よりも大きくて、厚さが60mもある。
ジェニーは、そこにあった百棟以上もの他の建物を、爪先で潰してしまう。
ビルの両側の区画は、そこに何も無かったかのように、平らにされる。

それから彼女は、ゆっくりと指を動かす。
人差し指の爪で、目標のビルを土台からえぐり取り、慎重に地面から持ち上げる。
数十秒後、超高層ビルは、ジェニーの指の爪の裏側に立っていた。
突然、ビルの、ほとんど残骸になっていた土台の5階分くらいが崩れた。
すぐに、そのビルはバランスを失って、彼女の赤い爪の裏側に倒れる。

超高層ビルが倒れた時、ジェニーは魅入られたようにそれを見ていた。
それは、映画を見ているようだった。
他のほとんどの建物と違って、この幸運な超高層ビルは凄まじい衝撃に耐えて、
彼女の爪の上で形が残っているくらい、頑丈だった。

窓が炸裂し、何百万もの裂片になるのを見るには、ジェニーは大きすぎた。
ビルが倒れた時、窓から人々と、机や椅子などの備品が雨のように外に飛び出した。

それから、ジェニーの雷の鳴るような声が、爪の上の高層ビルを激しく振動させた。
「あはっ!私の人差し指の先に、オモチャのビルが乗ってるわぁ!!」
ジェニーは、小さな子供のような笑顔で笑っていた。

ジェニーは目の前に、彼女の指を上げる。
すさまじい嵐が、ビルから落ちた人々と物を全て、彼女の爪の上から吹き飛ばした。
多くの生存者達が高層ビルから引きずり出されて、超高度の空に吹き飛ばされる。

彼女の指先は、成層圏よりもはるか上空に、持ち上げられた。
ビルの中に生き残っていた人々も、気圧の激減によって、1人残らず炸裂する。

彼女は指を動かすのを止めた。
ジェニーは、彼女の指を目の前で見つめた。
その光景に、心引かれていた。
ビルは、どれくらい小さかったか。
多くの残骸がその骨組みから、崩れ落ちて行くのを見て、彼女は微笑んだ。

彼女は小さな超高層ビルをもっとよく見るために、わずかに指を動かした。
原型をとどめているのが、不思議なくらい壊れていたビルは、滑り始めた。
ジェニーは爪先の上から、ビルが落ちてしまうのを防ごうとしたが、
彼女にできたのは、左手の指でそのビルを押し返すことだけだった。

指先の建物は崩れた。
ジェニーはどうすることもできずに、それを見つめていた。
彼女の言葉では言い表せない強い力は、指先と爪の間でビルを潰してしまった。
ジェニーは諦めて、人差し指を逆にした。
砕け散ったビルの残骸は、すぐに彼女の指先から地面に落ちる。


突然、ジェニーの興奮が覚めた。
(私ったら、何をやっているの・・・)

ジェニーは地面を見た。小さい都市がそこにある。
そのほとんどが、彼女の足跡に変えられるか、彼女の足指の爪でえぐられている。
黒い煙の小さな雲がいくつもあるので、そこが燃えていると、彼女にも分かる。
おそらく何もかもが捻り潰されたか、炎につつまれて燃えているのだろう。

彼女は、遠くの地面の上にある、彼女のブラウスとジーンズと下着を見た。
それは余りにも非常識だった。
ジーンズのボタンだけで、町をその下に埋めてしまうくらいの大きさがあるのだ。
人々は、彼らの人生が、信じられないような重さのブラジャーの下で終わる時、
いったい、何を考えたのだろうか・・・?

なにもかもが狂っていた。
そしてジェニーはそれを理解し始めていた。
彼女が、ここ数時間でしてきたことは、どう好意的に考えても、大虐殺だった。

どうして、彼女はこんなことができたのか?
足で街を踏みつければ、大勢の人が死ぬくらい容易に想像できるのに。
その中には、彼女の知っている人がいるかもしれないと、考えなかったのか?
もしかしたらジェニーは、彼女の友人さえも、ひねり潰していたかもしれない。

ずっとしゃがんでいたため、足が痛み始めていた。
自分がやってしまった意味の無い破壊を考えながら、ジェニーはそこに座った。
ジェニーは深く考え込んで、周りの世界を忘れていた。

けれどもジェニーの周りにいる人々は、彼女を忘れることなどできなかった。
何人かは、ほんの0.5秒で彼女の巨大な尻の下敷きになった街が、どうなったか考えた。
しかし、彼女の尻の下の大地は、全てが破壊しつくされていたので、
人々が心配しなければならない物は、もう何も残っていなかった。


ジェニーは、自分が人々に何を感じていたかを理解した。
彼女は、自分の人生と社会に、うんざりしていたのだ。

数年前に、ジェニーは事故で両親を失った。
一人きりになった彼女は悲しみ、そして、人の役に立つ仕事をしたいと願うようになった。
ジェニーは高校を卒業した後、町の病院で介護師として働くことにした。
彼女は病院で熱心に働いた。
患者達の食事の世話をし、老人の車イスを押し、風呂に入れて体を洗ってあげた。
それはとても献身的なものだった。

ジェニーの努力に、患者達は素直に感謝した。
そしていつしか大勢の人々が、彼女に頼るようになっていた。
ジェニーにはカウンセラーとしての才能もあったのだろうか、
病床の人々は彼女に心を許し、自分の悩み事を話すまでになっていた。

病気のため体が動かない苦しみ、失業した経験、
仕事があっても、酒ばかり飲んでいる者への不平、
懸命に働いたのに、最後には自分を解雇した会社、
心から愛していたのに、大きくなれば、親の面倒をみない子供の話・・・、
彼らは皆 「私は人間らしく生きたいだけなのに」 と言っていた。

ジェニーはいつも彼らの話を聞いてあげていたが、
いつしか彼女は、憂鬱な気分に囚われるようになっていった。

「人は愛し合い、助け合い、協力し合わなければならない」
彼らは自分の子供達にそう言っていた。
しかし実際には、彼らは職場に行き自分の都合だけを考えて、
子供達を育てるため働いている他の女性から仕事を奪い、
そして機嫌が悪い時は、家で妻や子供達を殴り、病院に行かせるという、
全く人間らしくないことを平気でしていた。

もっとひどい男は 「病院の治療が悪いので病状が悪化した」 と主張し、
弁護士を雇い、何百万ドルもの賠償金を、病院に要求していた。

ジェニーは人々のために働きたいと考え、介護の仕事を選んだのだが、
いつしか、彼らと関わって生きなければならない自分の人生が嫌いになっていた。

昨晩ジェニーが地面の穴を見つけた時、彼女はためらうことなく、そこへ降りて行った。
普通の女性はそんな危険なことをしないだろう。
何故、ジェニーはあんなことをしたのか?
本当は、ジェニーは何処か遠くに行きたかったのだ。
彼女は誰にも悩まされない 「自分だけの世界」 へ行きたかったのだ。

実際、巨人となったジェニーは、社会の規律と常識から完全に開放された。
誰の言うことも気にせず、自分の好きなように行動できる存在になった。
ならば、これは、ジェニーが望んだことなのか?
心の奥底で願っていた夢が現実になったのか・・・?

それからジェニーは他のことを考えた。
今までより、罪悪感に苛まれていた。
ジェニーは、何百万人もの人々を殺していた。
取り返しのつかないことを、してしまった。
煙を噴き上げている多くの街がある。
たとえ火事にならなくても、彼女が都市を破壊しつくしたから、
たいていの建物が、瓦礫の下敷きになっている。

事故で大怪我をした者や、人波に飲み込まれ道路で動けなくなった車もあるだろう。
彼女を見て恐れている何千もの人々の苦痛に比べたら、
彼女の足の下で潰された者の方が、幸運だったのではないだろうか?

誰が瓦礫の下に埋められているのか?
誰が彼女の足跡の上で、行方の分からない、愛する家族を捜しているのか?
しかし、彼女は細菌のような彼らのために、これ以上考えることはできなかった。

「本当に・・・」彼女は呟いた。
「私にとって、彼らは細菌みたいに小さいわ。
今まで誰も私に私の周りにいる細菌のことを心配してやるように言わなかった・・・、
みんな、自分達が生活をしている間に、目に見えない多くの細菌を殺していることを
考えてもいないのよ!少なくとも・・・私は実感しているわ・・・」

ジェニーは、これが自然の摂理であることを悟った。
強いものが生き残る。

彼らの1人でも、「自分がアリを踏んだらいけない」 と考えたことがあるのか?
いや、彼らは、何も考えないでアリの行列の上を歩いたに、決まっている。
もっとひどい時は、駐車場を造るために、何百というアリの巣を森ごと消し去っただろう。

もしそうなら、何故、ジェニーは気にしなければならないのか?
何故、ジェニーが心を痛めねばならないのか?

彼女がした全てのことは、他の誰もが、してきたことだった。
そして誰も、埃よりも小さな物のことを、考えようともしなかった。
ならば、誰にも、ジェニーを責める権利などない。

彼女は何処かを踏まなければならない。
彼女は何処かに座らなければならない。
彼女は何処かで寝なければならないのだ。
彼女は、何も潰さないように空中に浮いていることなど、できはしない。
そして彼女はもっと恐ろしいこともしなければいけない。

「いやあああああっーーー!!!」
ジェニーは叫んだ。

彼女が考えていた全ては事実だった。
しかし、自分でも1つだけ認めたくないことがあった。
ジェニーは楽しんでいた!
彼女は街を破壊して、自分の欲望を満足させていた!
自分の秘部に、大勢の人々を擦りつけていた。

女は都市を踏み潰したいから、踏み潰したのだ。
ジェニーの本能が知っていた。
小さな町を踏めば、すばらしい快感が得られることを・・・。

誰も想像さえしなかった、女巨人の愛欲のために、彼らはみんな潰された。

そして、もし彼らが潰されずに生きていたなら、ジェニーはもっと楽しむために、
彼らを色々な方法で、玩具として使って、遊んでいただろう。
残酷な大女の性欲のために、人々は死んでいったのだ。

ジェニーの目から、涙が流れる。
はるか下の都市に彼女の涙が落ちた時、人々は悲鳴を上げ、大女をののしった。
涙はいくつかの街の上に砕け散って、何百人もの人々を溺れさせた。

ジェニーは目を大きく見開いた。
たった今も、もっと多くの殺戮を、自分がしていることを思い出した。
彼女は地面に座っているのだ。
百万人もの人々が、彼女の尻の下で潰されている。

突然、ジェニーは跳び跳ねて、そして砂漠に向かって走った。
彼女は泣いていた。
あまりにも、酷い運命だった。
世界の終わりが来たかのように。
彼女は地響きを立てて走り、地面を完全に陥没させた。
大地は震動し、何百km先のビルも崩れ落ちた。

彼女の足がえぐり取った大地からマグマが噴き出す前に、涙が爆弾のように降り注いで
ビルを粉々に砕き、地面に広がった涙は多くの生存者を溺死させた。
30秒後に砂漠は、ジェニーの巨大な体の下で平らにされた。


* * * * *


空は暗かった。
ジェニーは何時間も泣いていた。やがて彼女は眠りに落ちた。
それから真夜中過ぎに、彼女は悪夢から目覚めた。
彼女は空を見上げた。
星だけがそのままの姿で、彼女が知っていた世界から残っていた。
今や他の何もかもが失われた。

誰かの叫び声が上がる。
「カット!もう一度撮り直しだ。」 だが、これは映画でない。

ジェニーは自分が巨人で、そしてこのサイズのままで生きていくことを理解していた。
もはやジェニーは、人々と話す方法があるとは思っていなかった。
彼女が考えた方法をするには、何もかもが小さ過ぎた。
彼女は、彼らが自分に話しかけてくるほど、勇敢でないことも知っていた。

そしてジェニー自身が、これからも自分が破壊を行うことを分かっていた。
都市を破壊する時は、いつも彼女の全身が快感に疼いていた。
あの時の気持ちよさを思い出しただけで、ジェニーの体は熱くなる。

彼女の心と体が破壊を求めていた。

ジェニーは目を閉じて、彼女の生きる唯一の道を理解した。
結局、彼女はまた破壊と、殺戮をするだろう。
ジェニーは死を望んだ。


* * * * *


大破壊から何日かが過ぎていた。ほとんどジェニーは眠っていた。
巨大化したジェニーの肉体は強靭で、地面の上に寝ていても平気だったが、
それでも人間であった時の習慣が残っているのか、彼女は時々寝返りをうった。
しかし彼女は自分に何が起こったのかを、説明することができなかった。

空腹を感じない。喉も渇かない。
それなのに、体中に力がみなぎっている。
彼女の体は 「自分が大きくなった」 とジェニーが理解してから、
開き直ったかのように、超人的な力を発揮していた。

髪や爪もそのままで、伸びていない。
他の生理的な欲求もない。
先日、あれほど暴れたのに、彼女の体は綺麗なままだ。
今のジェニーは、因果律さえ無視していた。

ジェニーは、ただ砂漠に寝転がっていた。
太陽だけが、心地良い日焼けを彼女に与えてくれた。
ジェニーの服は遠くに脱いだままになっていたが、彼女は気にしなかった。
それは歩いて5分くらいの距離にあったが、彼女が服を取りに行ったら、
また500万人が死ぬかもしれない。
彼女は、とにかく自分の行動に注意する必要があった。

(あ〜あ・・・これからどうしたらいいのよ・・・ホントに)

ジェニーは自分が何をしたいのかを、再び考えていた。
こうしていれば、やはり病院で働いていた、あの忙しい日々を思い出す。
やはり彼女は、人々と話をしなければいけないのだろうか?

時間があるのだから、人々と会話をする方法がないこともない。
指で砂漠に文字を書くのは簡単だ。
航空写真を撮れば、彼らもその文字が読めるだろう。

しかし、ジェニーは彼らに何と言えばいいのか?
「町を踏み潰してゴメンナサイ、もうしませんから許してください」
と、でも地面に書いてみるのか?バカバカしい。全くのお笑いだ。
今でもジェニー自身が、悪いことをしたと思っていない。
どうして彼女が、虫どもに、謝らなければいけないのか?

もったいないとも思う。
ジェニーの力なら、人々と社会に多くの貢献ができるだろう。
彼女の力で、砂漠に水を運び、
地中深くにある資源を、指一本で掘り出してあげる・・・、
頭のいい者は、彼女が人のために何ができるかを考えてくれるだろう。
しかし、ジェニーの思考はここで止まってしまう。
「そんなことは無理」 と、彼女の頭の中で誰かが言っていた。

ジェニーにも 「他の人に親切にしてあげたい」 という思いがある。
しかし、ジェニーが優しくしたい相手は、彼女が愛せる、普通の人だ。
地面の虫けらどもの事など、彼女の知ったことではなかった。

それに、どうせ彼らはジェニーを許さないに決まっている。
もはや「話をする」などという、生易しい段階でない。
ジェニーの存在そのものが、破壊の化身なのだ。
今も大勢の人間が 「どうやったら彼女を殺せるか」 を必死で考えているだろう。

それとも、彼らに何か命令をしてみるか?
彼女は先日の経験から、自分には人々に命令する力があることを知っていた。
命が惜しい者は、ジェニーの言葉には逆らえないだろう。
しかし彼女は、小さな人間達に何を命令したらいいのか、思いもつかない。
結局、彼らと話をするのは、時間の無駄でしかなかった。

ジェニーは、ぼんやりと空を見つめる。
こうやって寝ている自分の姿も、世界中の人々に衛星写真で見られているだろう。
そして、彼女は今も全裸だった。

(消えてしまいたい・・・) 心底そう思う。
しかしジェニーは自殺できる方法など、思いもつかなかった。
海の深さが10km以上あるのを知っていたが、そこは彼女が飛び込んで、
自殺できるほど深いとは思えない。

それにジェニーは自分に、自殺する勇気が無いことも知っていた。
彼女は漠然とした希望を持って、ただ待っていた。


* * * * *


2日後に、ジェニーは自分の望んでいた物が来るのを見た。
彼女は小さな飛行機が飛んでいるのに気がついた。
地面に寝転がったまま、それを見つめていた。
その飛行機は大空高く飛翔し、勇敢にも彼女の胸の上を通過していった。
ジェニーはその飛行機をじっと見つめていた。
それは何かを彼女の体の上に落とした。

(あぁ・・・)
すぐにその意味を悟った。
(爆弾・・・核、・・・最後ね)

いずれこうなることを、彼女は知っていた。
もっと早くに、核兵器が使用されると思っていた。
今までどうして使われなかったのだろう・・・、
どうでもいい・・・これで全てが終わる。

しかし彼女がため息をついた時、その強力な吐息に爆撃機が巻き込まれた。
機体は、彼女の腹部に落下して粉々に砕け散る。
それからジェニーは、彼女の体の上で核ミサイルの爆発を見た。
彼女の目から涙が流れる。
ジェニーは、爆発を熱いとさえ思わなかった。

地上のいかなる物も焼きつくす、核兵器の炎。
それは、彼女の肌のうぶ毛を燃やす火力さえなかった。
衝撃波は、彼女の髪の毛を揺らす力もない。
炎の壁は、彼女の見開いた目の前で光ったが、痛くもない。
彼女は爆発の閃光の眩しさに、目を閉じる必要さえなかったのだ。
苦しみはなかった。死もなかった。
飛行機の乗組員だけが死んだ。

ジェニーの涙は彼女の顔を流れ、地面に落ちる。
顔の両側の砂漠に、小さな塩水の湖ができる。
彼女は自分が何であるかを理解した。

彼女は誰も抵抗できない怪物だった。

地球上のいかなる物も、ジェニーを殺すことはできない。
もっと早くに気がつくべきだった。
誰が70マイル上空の、空気の無い世界で、平気でいられるのか?
人間なら、生きていられる筈はない。
しかし彼女は生きていた。今まで彼女は分かってさえいなかった。


* * * * *


翌日、ジェニーは決断をしなければならなかった。
誰かが彼女を殺してくれるのを待っていた時は、ここで寝ている必要があった。
しかし、もはやこの場所にいる理由は、何も無かった。
ずっとここにいたら、おかしくなってしまうのは間違いない。
彼女はもう、じっとしていられなかった。

ジェニーは自分が歳をとったら死ぬのか、あるいは永遠に死なないのか分からない。
しかし運命に従って、彼女はこの姿のままで、生きていくしかない。
ジェニーは自分の人生のために、何かをしなければならなかった。
彼女はここでずっと寝ていることも、退屈することも望んでいなかった。

ジェニーは立ち上がる。
しばらくの間、彼女は自分のボディを見つめていた。
ジェニーの体は、神々しいオーラを放っている。
彼女は自分の美しい体を再認識する。

(私ったら、どうして結婚しなかったのかな?)
ジェニーはそんなことを考えてみる。
彼女も、何人かの男と交際をした経験はある。
しかし何故か、彼らと結婚しようとは思いもしなかった。
もしかしたら彼女は、自分の運命を知っていたのかもしれない。
自分が人を超えた神になることを・・・。
ちっぽけな男などでは、自分を満足させられないことを・・・。

ジェニーはしっかりと大地に立ち、地面を見下ろした。
足の指先の爪が赤く輝いている。

ジェニーは自分のパワーを実感した。

誰も彼女を止めることはできない。
彼女の足は、地球上の全ての物の上に君臨するだろう。

足の下で、都市がぼろぼろに崩れる想像は、彼女の股間を熱く濡らした。
彼女の性欲は我慢できないほど、激しくなっている。
男の巨人は何処にもいない。

小さな男達はいるけれど、誰も彼女を喜ばせようとしてくれない。
だからジェニーは、自分で自分の体を満足させなければならない。

ジェニーは地面を見つめながら、砂漠を大股で歩き始めた。

埃まみれの小さな町が、彼女の一歩先にあった。
「やめなさい!」
ジェニーの心の中で、最後の天使がそう叫ぶ。

しかしジェニーは、裸足の下で、その町を踏み潰した時に、
「こんなちっぽけな物に、何の意味も無い」 と考え、すっきりした。

ジェニーが求めていた遊び場は、すぐに見つかった。
彼女の足元に 「小さな大都市」 があった。
それは明るい日の光の下で、きらきらと輝いている。
彼女はその美しい裸身を隠そうともせず、くびれた腰に両手を当て、町を見下ろした。

(あーっ、いっぱい、いる)
道路に、無数の車が走っているのが見える。
町に活気があるのが、彼女にも分かる。
人々はそこで普通の生活をしていた。

ジェニーは少し驚いた。
先日、ジェニーがあれだけ暴れたのだ。
皆が逃げてしまい、都市には誰もいないだろう。
彼女は漠然と、そう予想していた。

彼らは、何故この町に残っているのだろうか?

彼女にも、ある程度の状況を、推測することはできた。
彼らは、核ミサイルの炎でジェニーが焼き尽くされると信じていたのだろう。
ジェニーが死ぬのなら、彼らが逃げる必要などない。

(馬鹿じゃない、あなた達、この私に勝てると本気で思っていたの?)

ジェニーは笑ってしまう。
彼らは、あんな「ちっぽけな炎」で、ジェニーを殺せると考えていたのだ。
自分の肉体と、力に対する圧倒的な満足感が、ジェニーの心を満たす。

まぁ、もう、どうでもいい・・・。
どうせ、ジェニーはやりたいようにするだけだ。
彼らが逃げるというなら、何処までも追いかけていくだけの話だ。
もはや、人としての絆など完全に失われていた。

ジェニーはゆっくりと都市の上に座る。
彼女の豊かな巨尻が、文明の象徴とも言える近代都市を、百数十平方kmも押し潰す。
逃げる間もなく数万人の群集が、建物ごとその下敷きになる。
数日ぶりに味わうビルを潰す快感は、期待通りにセクシーで、彼女の体をぞくぞくさせる。
しばらくの間、ジェニーは自分が次に何をしたいのかを考えていた。

やがて彼女は自分の股間に手を伸ばす。





「あん・・・」
ジェニーは甘えるかのような声を上げ、彼女の女芯を指で撫でる。
唇のような左右の肉が口を開く。
その奥には、ヌルヌルとしたぬめりを湛える肉襞がある。
そこから熱い愛液が溢れ出し、都市の上に洪水のように流れ落ちる。
ビル街が水没し、逃げ遅れた人々が次々と飲み込まれる。

(ふふ・・・いいわぁ)
彼女のヴァギナに、人差し指と中指を忍ばせる。
そこは何の抵抗もなく、彼女の二本の指を受け入れる。
淫靡な音を轟かせ、指が巨大な肉の裂け目に出入りする。
彼女は、自分のふくよかな乳房に手を伸ばし、その豊かな肉を持ち上げるように揉む。
薄ピンク色の乳首を指先で摘み、ゆっくりと弄ぶ。

数十万もの小さな人々の視線を感じる。
きっと彼らは絶望と恐怖の表情で、彼女を見上げているのだろう。
全身にすばらしい快感が走っている。
やがてジェニーは、我慢の限界に達した。
前戯は充分だ、もうすっかり用意は整っている。
後は彼女の望むことを、するだけだった。

「ごめんなさい・・・少し楽しませてもらうわよ」

ジェニーは右手を都市に伸ばし、地面から超高層ビルを引き剥がした。

人々はパニックを起していた。天空が巨大な女の白い肌に支配されている。
大地を揺らす雷鳴のような喘ぎ声が響いている。
熱く燃える女体が、都市の気温を上昇させている。
すぐに上空から、巨大な指が降りてきた。
その風圧だけで、人々と車は空に舞う。

二本の指は地面をえぐり、サクッとビルを摘み上げる。
ジェニーの指一本ですら、長さ6km以上もあるのだ。
人間が抵抗できる大きさではない。人々はその場にへたり込んだ。
彼らにできることは、もう何もなかった。


* * * * *


ノーバートは信じられなかった。
彼のオフィスは無茶苦茶に破壊されている。彼は悲鳴を上げていた。
甘い香りがどっと溢れるように、彼の周りに押し寄せている。

彼の職場がある40階建ての高層ビルが、大きく傾いた。
ノーバートは必死に柱にしがみつく。
秘書のスーザンが悲鳴を上げながら、割れた窓から、ビルの外へ飛び出していく。
ノーバートは、彼女を助けるために手を伸ばすことさえ、できなかった。

もの凄い衝撃と共に、彼はビルがそのまま持ち上げられるのを感じた。
巨大な女が、その二本の指で、何十万トンもの重量があるビルを摘み上げたのだ。
間一髪、ノーバートは近くにあった、窓のない資料室に飛び込んだ。
ロッカーと、そこから飛び出した書類が、彼の上に落ちてくる。
建物は斜めに傾いたまま、持ち上げられていた。
ビルが完全に破壊されていないのは奇跡だった。

常識はずれの急加速で上昇したため、彼は資料室の壁に押し潰される。
すぐに、その部屋の壁も砕かれた。
凄まじい突風が吹き荒れている。呼吸すらできない。
気圧が急激に変化していた。もう何も聞こえない。
それでも、彼はまだ生きていた。

ノーバードは、多くの人々が海外に脱出しているのを知っていた。
しかし、いったい何処に逃げるというのか?
あの怪物女は、衛星からの写真でもはっきり見えるくらい大きい。
逃げても、何処までも追いかけてくると、彼にも分かっていた。
それにノーバードには仕事がある。
生まれ育った町を捨てることはできない。
彼はどうしていいのか分からず、この数日を過ごしていた。
そして最後に彼は、この町に残る決断をした。

ノーバードは、割れたビルの壁の隙間から、それを見た。
巨大なピンク色の肉襞が、全てを占領している。
何が起こっているのか、彼には、もう理解できなかった。
恐怖だけが、世界を支配していた。
ノーバードは気を失った。


* * * * *


ジェニーは微笑んだ。
彼女は、小さなビルを破壊することなく、指先で摘み上げていた。
数日前は、できなかった事だ。
巨人としての彼女の身体能力は、状況に順応していた。
彼女の望む事が、できるようになっていた。
今の彼女は、小さいビルを潰さないように、指の力を手加減することができた。

ジェニーは、左手の指先で彼女の陰唇を大きく広げる。
そこはピンク色の肉襞が愛液にまみれ、キラキラと輝いていた。
巨大な陰唇はひくひくと動き、獲物を飲み込みこもうと、息づいている。
彼女はその中に、摘み上げた小さな高層ビルを落とした。

「うふぅ・・・いいわ。」

彼女は股間の敏感な部分に、ビルがぽつんと落ちるのを感じることができた。
それはすぐに彼女の溢れ出る蜜液の中に、沈んでしまう。
ビルは小さすぎるのだ。

もちろん彼女にとって、生贄となったこのビルだけでは充分とは言えなかった。
彼女は昔見たうんざりするほど、下品なポルノ映画の1シーンを、思い出しながら叫ぶ。

「ねぇ、ちっちゃくて可愛いぼうや達、こっちに来てよ、遊びましょうよ。
あぁん、もう私、待てないの、
あなた達の硬いディックを、私の可愛いプッシーにぶちこんで、
そして、ムチャクチャにかき回して!」


ジェニーはそう叫び、もう1つ別の超高層ビルを摘んで、彼女の股間に落とす。

「おぉ・・・いい、とっても気持ちがいいわぁ・・・
でも私は、もっと欲しいのぉ!」

次々と超高層ビルが地面からむしり取られて、
彼女の愛欲に燃える、淫らなプッシィの中に落とされていく。
じわっとした愉悦が、そこから全身に伝わってゆく。

快感の海に漂いながらも、彼女の心の奥に暗い闇が広がっていく。
この町にいるほとんど全員が、ジェニーの死を願っていたのは間違いない。

ジェニーは何も悪くないのに・・・、ただ大きくなっただけなのに・・・。
細菌のような人間どもの意思など、もうどうでもいいと彼女は考えていた。
それなのに、やはり彼女の目から、涙がこぼれ落ちる。
ジェニーの頭の奥で、何かがギラギラと焼けていく。

もう誰とも話をできない。
愛しあう友もいない。
守るべき物もなく、次の世代に託す遺産もない。
目を閉じれば、未来が見える。
ジェニーは、地球上の全ての都市を「彼女の楽しみ」のために、破壊し尽くすだろう。
誰もいない荒野で、果てしない孤独の中、彼女は生きていくしかない。
彼女の未来には悲しみしかない。

だからこそ、今だけは・・・
今だけは、全てを忘れて燃え上がりたい。
何もかもを忘れて、めちゃくちゃに感じたい。
全てを焼き尽くす炎が、彼女の心を焦がす。
(お願い!全てを忘れさせて!)
彼女は心の中で叫ぶ。

五十棟以上の高層ビルやマンションが、
彼女の甘い香りのする愛液の中に、ずぶずぶと音をたてて沈んでいく。
しかしジェニーは、まだ満足できない。
ついに彼女は指の爪で、地面から小さな家さえ削り取り始めた。
ジェニーの大きな指が触れた瞬間に、無数の家がずたずたの瓦礫に変えられる。
彼女は家の残骸を、女芯の上へと、雨のように降らせ続ける。

それから5分間、都市は響き渡る彼女のうめき声の下で振動した。
そして彼女は、建物をむしり取るのをやめる。
ジェニーは体を曲げ、両手の指で慎重に大陰唇を開いて、ピンク色の柔肉を見た。

濡れた肉襞の上に、無数の小さな点が動いている。
見るのが難しかったが、彼女は、その点が人であると認識できた。
そして突然、ジェニーは彼らを感じた。
ジェニーのラヴィアの中で、多くの人々が彼女の淫らな愛液から逃れようと、
必死になってもがいていた。まだ生きている者が大勢いるのだ。

彼女の玩具が生きていたという満足感は、ジェニーの心を満たしてくれる。
指で押さえた彼女の陰唇が、喜ぶかのように、きゅっと収縮する。
ジェニーは微笑みながら、彼らに話しかける。

「ふふふ・・・どうかしら、私みたいに大きな女と遊ぶ気分は?
あぁん、怖がらなくてもいいのよ、
生涯忘れられないファックをしてあげるから」


彼らの全員が、ジェニーの強力な肉壁と、どうしようもなく戦い、
泉のように湧き出す大量の愛液によって、溺れていた。
彼女の肉襞のいたる所が、男達の空しい抵抗によって愛撫されている。
人々の無意味な脱出の試みは、彼女の膣壁を通して感じられるくらい強かった。

そしてジェニーは、彼らが生きている人間であると知っていた。
数日前まで、共に働き、未来に希望をいだいて生きていた、彼女と同じ人間・・・。
その恐ろしい想像は、彼女をいっそう興奮させ、性感をさらに刺激する。
快感がより深まっていく。
彼女は注意深く、人差し指の先で、陰唇を優しく愛撫する。

ジェニーのクリトリスの上に、ねっとりとした愛液で張りついて、
地獄の裂け目のような彼女の膣に、落ちるのを免れていた男達がいた。
しかし快感に喘ぐ彼女は、すぐにクリトリスにも手を伸ばし、そこを愛撫したので、
彼らは、大女の最も貪欲な肉に擦りつけられて、ひとたまりもなく潰された。

「おぉ、やめないでーー。あぁん すっごく、感じちゃう、・・・
もっと暴れて!私を楽しませて、お願い!!もっと激しく!」


山脈の全てを飲み込める大きさの彼女の陰唇・・・。
その中に落とされた人間達に、もはや何の希望も残されてはいなかった。
彼らは、ねばねばとしたジェニーの蜜液に飲み込まれ、次々と溺れていく。


* * * * *


ノーバートはまだ生きていた。
粘りのある愛液の海に浮かぼうと、絶望的な努力をしていた。
百合の花の香りがする女の蜜を、いっぱい飲まされていた。
何か浮いている物を掴んでいる。
あまりにも暗いので、彼はそれが何かさえ分からない。

ごううん、ごううん、ごううん、

はるか深淵の底、巨大な肉襞の内側で、無数の毛細血管が脈打っていた。
その血脈の流れは、彼の心までを震わせていた。

ノーバートの力では、洪水の中を泳ぐことは不可能だった。
彼は、自分が大女の秘部の中に放り込まれ、愛液の海から助かろうと
必死でもがいていることが信じられなかった。

それから彼は跳ね上げられ、そして再び叩きつけられるのを感じた。
心地よい香りのする霧の最後の息を、肺に吸い込んだ。
さらなる大きな波が来るのを感じた時、彼はどうしようもない恐怖に悲鳴を上げる。

大陸棚のような肉の巨大襞が、びくびくと収縮する。
彼の体は、ジェニーのもっと奥へと、飲み込まれていく。
ノーバートは、ジェニーの熱い愛液の洪水の中で水葬にされた。



* * * * *


ジェニーはまだ両手の指で、彼女の陰唇を、少しだけ開いていた。
彼女が指を離したら、巨大な膣壁は自然な姿に戻ろうとして、そこを閉じ、
中で溺れるジェニーの恋人達を、たちまち押し潰してしまうだろう。

弱すぎる彼らが生き残っているのは、ほとんど奇跡だった。
ジェニーを楽しませてくれる男達を、そんなに簡単に失うわけにはいかない。
もっと楽しむためには、男達に動ける余地と酸素を与えやらねばならない。

しかしそれも、もう限界だった。
彼らが彼女の膣のさらに奥深くへと、飲み込まれていくと感じた時、
ジェニーは再び、貪欲な吐息を漏らす。
小さな男達は、ついに彼女のGスポットにまで到達したのだ。

「オーマイ、ゴッドォー、気持ちいいーー!
ありがとう、それじゃぁ、さようなら」


終わりだった。
ジェニーは股間から左手を取り去った。
大地の裂け目のような、巨大なプッシィの唇はゆっくりと閉じ、何もかもを包み込んだ。
彼女は最後にもう一擦りしてから、右手の人差し指も抜いた。
めくるめく快感が、全身に走る。

今まで男達を潰さないように緩めていた彼女の膣襞を、きゅっと締める。
ぴちゃっという小さい音が、かすかに聞こえた。
微妙で心地よい感触が、彼女の柔肉に伝わる。
股間で何千人もの男達がひねり潰されるのを、ジェニーは感じていた。
ぐしゃぐしゃに潰された人々の体とビルが、彼女の内側から溢れ出た愛液と、入り混じる。

ジェニーの脈うつ大陰唇のわずかな隙間に、しがみつく何人かの人々がいた。
彼らは他の者達より、1秒ぐらい長く生きていられた。
しかしジェニーが彼女の筋肉を緩めた時、そこから愛液の海が噴出する。
彼らは抵抗することもできずに、それに飲み込まれる。
彼らにも、彼女の貪欲にうごめく陰肉の下で、潰される栄誉が待っていた。

ジェニーは快感の声を上げながら、そこに倒れこむ。
彼女の中で、無数の人々の体と、豊富な愛液とが交じり合って流れ、
心地よい旋律を奏でていた。彼女はその感触を存分に楽しむことができた。

ジェニーは目を開き、彼女の巨体の下にある都市を見下ろした。
都市の全てが彼女の体に押し潰され、愛液に溺れていた。
もうここは使い物にならない、次の遊び場を探すしかない。

「名前も知らない町だったけど、ありがとね。もう行かなくちゃ。
今日のうちに、あと一回ぐらいは、めちゃくちゃに感じたいのよ」


彼女は立ち上がった。
数人の男達が、ジェニーの太い陰毛の森で、まだ生きていた。
しかし彼女が超音速で立ち上がった時、彼らは空に飛ばされ、炸裂する。

ジェニーは彼女の中に、「ビルの残骸」と「潰された人々」を入れたままだ。
膣の中でそれが愛液にシェイクされ、その微妙な感触が全身に伝わる。
(あ、、、これ、なかなかイイかも・・・感じちゃう)

次の生贄の都市まで、たったの3歩の距離だった。
ジェニーは新しい遊び場の前に立ち、そこを見下ろした。
いつものように、大勢の人々が彼女から、逃げようとしている。

ジェニーは笑ってしまう。
彼女が遊んでいる間、ずいぶん時間があったのに、まだ全然逃げられてもいない。
本当に、どうしようもない連中だ。
彼らがもう少し大きくて、ジェニーのために、靴か家でも作れる力があるのなら、
彼女の召使として、生かしておいてやっても、よかったのに・・・。

もうこうなったら、この虫どもをどうしようと、ジェニーの自由だ。
だがすぐにひねり潰すのは、もったいない。
彼らに最後の慈悲をかけてあげよう。
自分達が誰を相手にしているのか、はっきりと見せてあげる。
ジェニーは地面にしゃがんで、逃げる人々に話しかける。

「あらあら、おちびさん達、どこに行こうっていうの?
この私が遊んであげるっていうのに、無視するつもりなの・・・、
許せないわぁ、そんなの」


淫らな笑い声が、都市の上に響く。
ジェニーは獲物を追いかける猫のように、彼らの上で四つん這いになる。
彼女の信じられないくらい大きな乳房が、都市の上に舞う。

「どう、私のおっぱい・・・自分で言うのもなんだけど、とても綺麗だと思うんだけど、
ふふ・・・でも、あなた達には、ちょっと大きすぎるかな」


ジェニーはふくよかな胸をぷるんと振る。
それだけで、都市の上に突風が走り、人々は空に飛ばされ地面に叩きつけられる。
ジェニーの瞳の奥が、楽しさと優越感に輝く。

彼女の両の乳房は、それぞれが巨大隕石のサイズがある。
片方だけでも、都市を粉砕するに充分な力を持っていた。
人々の悲鳴がいっそう高くなる。

「あなた達は小さ過ぎるから、とても私には勝てないようね。
でも、私はそんなこと気にしてないの。心配しないで、
今日は特別サービスしてあげる、私はみんなに楽しんでほしいの」

ジェニーは急がなかった。
しばらくの間、彼らの上にかがむだけで遊んでいた。
人々と車が、彼女から逃げようと、無意味な努力するのを楽しんでいた。

やがてジェニーは、ゆっくりと彼らの上に体を降ろす。
彼女は乳房が地面にわずかに触れたところで、動きを止める。
多くの人々が、彼女の乳輪の下敷きになって、もがいているのを感じたような気がする。
彼女の快感は、再び頂点へと登りゆく。

柔らかい肉に感じる微妙な感触・・・くすぐったい。
体を動かし、その巨大なる乳房で、都市の無数の区画を粉砕していく。
薄ピンク色の乳首が、数日前と同じように、大地を深くえぐっていく。
地上のあらゆる物が、彼女の力の前に無力だった。
ジェニーの心に、陶酔感がみなぎる。

もう我慢できない。ジェニーはそのまま体を前に倒す。
彼女の胸が、都市の3分の1を押し潰す。
乳房から全身に、素晴らしい快感が伝わる。

ジェニーは雷が鳴るような、愉悦の声を上げる。
彼女の声は衝撃波となり、ビルの全ての窓が砕け散る。

ジェニーは彼女の乳房を使って、都市をレイプしていた。
数十万人の人間が、ジェニーのセックスに、強制的に参加させられていた。
男達が成す術もなく潰れていく想像と感触は、ジェニーをさらに熱くする。

しかし、彼女の遊び場はあまりにも小さ過ぎた。
すぐにその都市の全てが地面に圧縮され、無人の荒野に変わる。
ジェニーは地面を転がり、他の都市を探す。
Gカップはある真っ白なジェニーの乳房は、執拗に愛撫を求めている。
その間にも彼女の指はプッシィをまさぐり、愛液と膣壁による淫らな音をたてていた。
次の遊び場の都市を見つけ、そこも彼女の体で潰してゆく。

脳天がしびれる快感に、ジェニーは二回もいってしまう。
地面に指をたてる。
彼女の指先は、地面の土を、深さ数kmまでえぐる。
すぐに、そこからから赤いマグマが噴き出した。
地面が高熱の溶岩により、オレンジ色に染まっていく。
ジェニーには、大地が血を流しているように見える。
彼女の情欲が、ますます深くなってゆく。

ジェニーのしなやかな体が伸び上がり、大きくジャンプする。
彼女は次の都市の上に正確に着地し、彼女のヒップでその半分を押し潰す。
物理の法則さえ無視した大地震に、半径、百数十kmのほとんどのビルが砕け散る。
逃げ延びた人々も、彼女の美しい太腿と尻の下で起こった、超強烈なハリケーンによって、
ビルの残骸と共に宙に飛ばされ、空中で炸裂し、地面に叩きつけられる。

ジェニーは彼女の体の下に、何があるか、気にもせずに、
巨尻を動かし都市を完全に捻り潰し、また他の都市まで四つん這いになって進む。
彼女の体の中から、欲望が泉のように湧き出してくる。

ジェニーを止められる者など、誰もいなかった。
彼女は、もう何回いったのかも分からない。
いったい、いくつの町を押し潰したのかも分からなかった。



3時間後、ジェニーは目を開き、けだるげに横たわった。

彼女はため息をつきながら、自分の体を優しく愛撫した。
ジェニーは死ぬことができなかった。
自分の体を傷つけることさえできない。

だからジェニーにできるのは、楽しむことだけだった。
しかし彼女は慎重にしなければならない。
1日に1つの都市だけで充分だろう。

彼らがいなくなってしまえば、
ジェニーの残りの人生に楽しみなど、ありはしないのだから・・・。




彼女が、かつて人間と呼んだ、生きている小さな玩具なしでは・・・。





<終わり>





<設定>

ウェスリーが見た地面の謎のクレーターは、直径3マイルもあった。
それは、ジェニーが、地面に握りこぶしを押しつけて作ったモノだった。

3マイルは、1.609km×3=4.827km
ジェニーから見た、自分の握りこぶしの幅は約3インチ
3インチは2.54cm×3=7.62cm

ジェニーの握りこぶしと、3マイルのクレーターは、ほぼ同じ大きさなので、
4.827km÷7.62cm=63,346
身長1.75mだったジェニーは、63,346倍に巨大化した。

1.75m×63,346倍=110,856m=約110km=約70マイル
ジェニーは身長70マイルの超巨大女になった。

ジェニーの体重75kg×63,346倍の3乗=13,980,421.94メガトン
13,980,421.94メガトン=13,980,421,940,000トン(13兆9,804億2,194万トン)

ウェスリーが考えたように、ジェニーは小惑星なみの体重を手に入れた。

彼女の履いているサンダル
地面にめり込む深さ4mm=252m=800フィート
舞い上がる土埃の高さ1mm=63m=200フィート

サンダルのヒール部分の直径(かかと)8mm=506m=1,600フィート

サンダルのソール(地面に接地する部分)の幅は、8cm=5,067km=3.14マイル
サンダルのソールの長さ12cm=7,602km=4.72マイル

指の爪は厚さ=0.5ミリ=31.5m=90フィート

1cm=0.39マイル

1mm=63,348m






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