|
この作品中には性的な描写、暴力的表現が含まれています。
趣味に合わない方はお読みにならないことをお勧めします。
《 女神の夜 》
作 Ｒ２１未完成人
----------------------------------
エリ子は黒のロングレザーコート姿で夜の歩道にブーツの靴音を響かせながら歩いていた。
冷たい木枯らしをものともせず、２７歳の熟れた女の体は火照り、乳首は皮のコートの上からでも分かるほど硬く尖っている。
普段は笑顔を絶やさない白衣の天使を演じているエリ子だが、今夜の彼女は復讐に燃える鬼と化していた。
前方に明かりの点った瀟洒な外装のマンションが見えてくる。エリ子と不倫関係にあった妻子持ちの男が住むマンション。
最近の手抜き工事問題でにわかに有名になった物件だが、男はそのゴタゴタに便乗してエリ子に別れを切り出した。
男はエリ子の勤める病院の入院患者だったが何時しか二人は男と女の関係となり密会を重ねるようになった。
妻子があることは最初から分かっていたが、近ごろ男の態度がよそよそしくなり、最近では電話やメールも来なくなり、仕事が忙しいと会ってくれることもない。
「妻とは別れて君と結婚する。」
その言葉とは裏腹に心と体が離れていくような感覚を覚えながら、それでもエリ子は男のことを信じていた。
ある時、休みの日にエリ子は一人で街にウインドウショッピングに出かけたのだが、たまたま男の姿を見かけ後をつけると彼はハンバーガーショップで待ち合わせたらしい女子高生風の少女とラブホテルにきえていったのだった。
「許さない……。」
エリ子はマンションを見上げると、この明かりの一つに男がいるのだと思い唇を噛んだ。憎い男が住むマンションの明かりがエリ子を拒絶しているように見える。
「虫けらのくせに！」
エリ子はマンションの手前にある公園の植え込みに着ていたコートを脱ぎ捨てる。コートの下は際どい真っ赤なビキニだけだった！
モデルのようなバツグンのプロポーションを夜の闇に浮かび上がらせるエリ子。自慢のGカップは巨大な砲弾のように突き出し、乳首は薄い布きれを突き破らんばかりの凶器と化していた。
もう一度マンションを見上げるエリ子。街灯に照らし出される表情は憤怒に満ちているが、ぞくりとするほど美しい。落ち葉の舞い散る歩道にブーツを鳴らしながらマンションに向かって歩き出す。 豊満な肉体が怪しい雌の匂いを漂わせ、たわわに実った果実のようなバストとヒップが歩くたびに波打ち揺れる。
磨かれた人工石の階段を上り、無機質な蛍光灯の明かりで満たされたエントランスホールに入ると背後でガラスの自動ドアが閉まり、
風に靡かせていたエリ子の長い髪が肩先に落ち着きを取り戻すと、フローラルなシャンプーの香が周囲に漂った。
ホールを見渡すエリ子。正面にエレベーターのドアが見え、その脇に観葉植物の大きな鉢植えが置いてある。ボタンを押し、ドアが開くのを待つ。
天井から監視カメラが吊るされているのに気付くとエリ子はレンズに向かって微笑み、ポーズさえとって見せた。
まるで見られることを楽しんでいるような余裕。 エレベーターに乗り込むとそこにも防犯カメラがある。
「いいわ……もっと見て！」
レンズの向こうで見も知らぬ男が自分を見ている……見られていることへの快感がエリ子の中に満ち満ちてくる。
それだけでエリ子の下半身が熱く濡れた。何時しか男への復讐よりも自分の肉の欲求を満たすことがエリ子の心を支配していた。
細胞の一つ一つが活性化されていくような開放感がエリ子の全身を包み込み眩い光を放つ。すると狭いエレベーターの中でエリ子の体が急速に膨張を始めた。
真昼の太陽のような光がマンションの内部から放出され、建物全体を夜の闇の中に浮かび上がらせる。
ゴンドラはたちまち砕け散り、エレベーターのシャフトを落下し鋭い金属音を響かせた。コンクリートのシャフト自体もばきりと鈍い音を放つ。
全館が激しく揺さぶられ、金属の裂ける音やガラスの割れる音が夜の静寂を破り、建物が大きく二つに裂け始めた。
巨大化を続けるエリ子の足は一階のエントランスを踏み潰し、地下駐車場の車をも砕けたコンクリートの中に埋め込んでしまう。
エリ子の硬く尖った乳首は金属製のドアを簡単にへこませ、まさに凶器と化した巨大な乳房はそのまま部屋を押し潰して外壁を突き破っていた。
大きなコンクリートの塊や外装パネルが雨霰と地上に降り注ぎ、路上駐車の車や近隣の住宅が犠牲になり、激しいスパークと続いて起こった火災の炎が闇を焦がし始める。
人々の怒号と悲鳴、そして揺れが一しきり治まったとき、夜着のまま表に飛び出した周囲の住民が見たのは崩れかけたマンションと、そこから頭を出している巨大なエリ子の姿だった。
人々は言葉を失い、街は奇妙な静寂に支配される。
エリ子は足元の惨状を気にもせず、上気して火照った頬を夜風に晒していた。身を切るほどの寒風も今のエリ子には心地いい。
今まで何度か味わった巨大化変身に伴う快感……エリ子の蜜壷は熱く湿り、崩壊したエレベーターシャフトの中に淫らな水音を響かせ、溢れ出た淫水は地下駐車場を水没させていた。
＊＊＊＊＊＊＊
厳格な家に生まれ育ち、その外見とは裏腹に晩生でこの歳まで満足に性の悦びも知らなかったエリ子。
学生時代、同級生に淡い恋心を抱いた時期もあったが、看護学校を経て白衣の天使となってからは仕事に追われる毎日だった。
そんなエリ子に転機が訪れたのは最近のこと、異次元から襲来した侵略者が放った巨大怪獣の攻撃のため壊滅状態となった都市に、救急活動に借り出されたときのことだった。
軍用車両に守られながら入った街はまるで地獄の様相を呈している。いたる所に瓦礫の山が築かれ、誰とも見分けのつかない死体の山が出来ていた。
怪獣は撃退されたのではなく、敵の気まぐれで引き上げていったに過ぎない。力の差は歴然としていた。
負傷者の手当てに追われていたエリ子の手が止まる。再び怪獣が出現したとの連絡に野戦病院はパニックになった。
防衛陣の必死の攻撃も効果は無く、侵略者たちは一方的な殺戮を楽しんでいるようだった。奮闘空しく軍は全滅し、街は今度こそ完全に破壊し尽くされてしまう。
気がつくとエリ子は一人、地下の倉庫に倒れていた。薬品を取りに持ち場を離れていたのが幸いしたらしい。
埃まみれになりながら必死で瓦礫の山を這い上がると都市は消滅していた。猛烈な虚脱感がエリ子を襲う。
黒煙が太陽を覆い、瓦礫の中に黒く焦げて千切れた死体が散乱しているのが見える。不思議と何の感情も生まれてこなかった。
ただ涙が拭っても拭っても溢れてきた。エリ子は座り込んで声も無く泣きじゃくる。重い足音を響かせながら遠ざかっていく怪獣を黙って行かせることしか出来ない自分が無性に腹立たしく思えてきた。
「……力が欲しい。」
呟くエリ子
「力をどうする？」
声が聞こえた。
「許さない……あいつらを絶対に許さない！」
エリ子の脳裏にさっきまで一緒に仕事をしていた仲間や怪我に苦しむ患者の顔が浮かんだ。
「力を与えよう。」
「あなたは？」
「我々は魂だけの存在。かつて奴らに滅ぼされた星の住民。奴らの目的は破壊と殺戮だけ……君の星も滅ぼされる。」
「でも、あたしには戦う力が無い。」
「君にはある、その体が！」
次の瞬間、エリ子の体を今まで味わったことの無い激しい衝撃が貫いた。それは彼女が初めて知った絶頂の快感。
性に開花したエリ子の肉体は激しい光と熱を発しながら巨大化し、怪獣の前に立ちはだかった。淫らな雌の匂いが廃墟の街に充満する。
「これが、あたし？」
快感から覚めやらぬ虚ろな瞳でエリ子は怪獣を見た。あの凶悪な怪獣が酷く矮小な存在に感じられた。実際にエリ子は怪獣にも劣らないほどの巨人に変身していたのだった！
一糸纏わぬ肢体の股間からは夥しい淫水が滝のように流れ出し、周囲の空気を爛れさせている。エリ子はそれを指で拭って口に運んだ。体中に力が漲ってくるのが分かる。
「りゃあーーーー！」
エリ子は声にならない声を発しながら怪獣に手をかけ一瞬で引き裂いてしまった。イカスミのような真っ黒い怪獣の体液が四方に飛び散り、怪獣の死骸の周りに大きな黒いシミとなって広がっていく。
エリ子はその飛沫を浴びながら二度目の絶頂をむかえた。
あまりにも強力で淫らな女神の誕生の一瞬だった！
＊＊＊＊＊＊＊
「坊やたち、お姉さんのオッパイが欲しいのね？いいわ、この胸で抱き潰してからバラバラに引き千切ってあげるわ！」
エリ子は自慢の肉体を駆使し度重なる侵略の魔の手を跳ね返してきた。その美貌とプロポーションは戦うごとに美しさを増していく。
性の悦びは破壊の悦びでもあった。圧倒的な強さを誇るエリ子であっても敵が強力であったり複数であった場合には苦戦を強いられる。
そんなときはエリ子自身の肉体が凶器となってビルを倒壊させたり市民を犠牲にしてしまうこともあった。しかし巨大化しているときにはそんなことは気にならない。反ってエリ子の残虐性に火をつけてしまうのだった。
人々を守るために戦っているのに自分がその小さな命や財産を奪ってしまう、そのジレンマにエリ子は苦しんだが巨大化している最中にはそれを望んでいる自分がいる……。
その欲望を打ち消そうとするかのようにエリ子は献身的に看護の仕事に精を出すのだった。初めて知った性の悦びが巨大化と破壊から来るもの、エリ子の歪んだ性欲が彼女を苦しめる。
抑圧された性欲を満たそうとエリ子の戦いは過激になっていく。 あるときは怪獣の口に無理やり捻じ込んだバストで顎を砕き頭を揉み潰す。またあるときは怪獣の背に跨り股間を押し付け巨大なヒップの質量で敵を磨り潰す。
無敵の怪獣も今のエリ子にとっては性欲を発散させるためのオナニーグッズでしかなかった。エリ子の性と破壊の衝動はますますエスカレートしていく。性のエネルギーはエリ子のパワーそのものだった。
人々が自分の残虐な行為を見ていると思うと、それだけでエリ子の体の芯が熱く痺れた。
何度目かの巨大化で知ったのだが、水着や下着のような体に密着した着衣はエリ子の巨大化にともなって体の一部として一緒に拡大するらしい。
エリ子は迷わず真紅のハイレグビキニとロングブーツを女神のコスチュームに選んだ。中でも下半身をきつく締め付けるハイレグのパンティーはエリ子のお気に入りだった。
それは全裸が恥ずかしいというよりも、むしろ人目を集めるため、見られることで更に興奮を覚えようというエリ子の欲望の表れ。
一段と過激になった性と破壊の女神の活躍によって侵略者の攻撃は散発的になっていったが、そうなるとエリ子は欲求不満になる。
喉の渇きをうったえるように無性にエリ子は巨大化したい、手当たり次第に全てを破壊したいという欲望に苛まれるようになった。男と女の営みとしての性の捌け口を知らないエリ子の哀しい性である。
愛されることを知らず、与えられることを知らないエリ子の行き場の無い、奪うことしか知らない性の衝動は爆発寸前だった。
そんな時、入院患者と看護婦として出会った男の優しい言葉にエリ子が恋に落ちていくのに時間はかからなかった。エリ子は恋に溺れ、男に尽くした。
はじめはリードされ男の成すがままになっていたエリ子だったが、何時しか男に開発された肉体はベッドの上で男の肉を貪り凌駕するようになっていく。
エリ子は歓喜の声を上げ、自ら腰を使い、悦びの嗚咽を漏らした。
このままでは自分が性欲のおもむくままに破壊と殺戮を繰り広げる人類の敵になってしまう。自分で自分を恐怖していたエリ子が初めて覚えた安らぎだった。
男の肉棒を握ったままエリ子は男の胸に顔を埋めて甘える。男はエリ子の髪を撫でながら応えた。
「うれしい……これはあたしのもの、あたしだけのもの！」
「……凄かったよ。食い千切られると思ったぞ。」
「そんなことしない。守ってあげる、あたしが守ってあげるから……。」
ビルも自動車も人も押し潰してしまう自分の体、でもこの男は壊れない、それどころか自分を壊してくれる。エリ子にはそれが嬉しかった。
エリ子は幼子のように男の腕の中で軽い寝息をたて始めた。
＊＊＊＊＊＊＊
エリ子は軽く上体をくねらせるとバストの一振りで胸から上の構造物を吹き飛ばしてしまった。残骸は数百ｍ先にまで砕け散って落ち、更に被害は拡大する。
「確かに手抜き工事よね、こんなに簡単に壊れちゃうなんて。」
手抜き工事であろうと無かろうとエリ子の巨体の前に無事でいられる建物などありはしない。停電した街に火災の炎だけが赤々と夜を照らし出していた。
エリ子がマンションから腕を引き抜くとエントランス側の外壁がガラガラと崩れ落ち、肩から引き締まったウエストへの美しいラインが、そしてＴバックの水着からはみ出した肉付きの良いヒップが露になる。
「あらあら、おチビちゃんの造ったものは脆いのね。」
そう言って笑うとエリ子は電柱のような指で崩れ残ったフロアの天井を突き破り、一軒一軒のドアを確認するように指を滑らせた。一軒のドアの前で指が止まる。
エリ子の指がそのアルミ製のドアを薄紙のように貫き、壁と天井を引き剥がしてしまう。暗い部屋のベッドの上に毛布に包まった裸で抱き合う一組の男女がいた。
「見つけたわよ！」
男の体を軽く掴んで持ち上げる。ちょっと指に力を入れれば熟れたトマトのようにはじけてしまいそうな虫けらだ。
「バ、バケモノ！」
「酷いな……あたしの顔忘れちゃったのかしら？」
「ま、まさか？！」
男は怯えながらエリ子の顔を見た。
「そうよ……あ・た・し。」
エリ子は男を自分の巨大なバストの上に乗せた。男は必死でブラの肩紐にしがみ付く。まるで綱引きの綱だ。
「どう、最高の気分じゃない？あなたが何時もベッドの上で揉んだりしゃぶったりしていたオッパイよ。今はキングサイズのベッドより大きいけれど、乗り心地はいかがかしら？」
勝ち誇ったように男を見下ろすエリ子。その視線の端に毛布を纏って駆けていく女の姿が映った。エリ子は女を指先で押さえつける。
「随分と薄情な奥さんね、旦那を見捨てて……。」
「放して！あたしはその人の奥さんなんかじゃない、電話で呼ばれただけなの。お金だってまだ貰ってないんだから！」
「コールガールか……。」
エリ子の形相が変わる。
「由美子は息子を連れて実家に、このマンションは不安だって言うから、だから君とのことも！」
エリ子はそれには答えず女を摘み上げると深い峡谷のような自分の胸の谷間に放り込み、両手で胸を寄せた。女の姿は肉の壁の中に消え、断末魔の絶叫とともに湿った破裂音が木霊する。
再び胸が開かれた時そこには女の姿は無く、ただドス黒いシミが白い肌にこびり付いているばかりだった。エリ子はそのシミに指を這わせ、そして口元に微笑を浮かべながらそれを口に含んだ。
「ひ、人殺し！」
「違うわ、あたしは人殺しなんかじゃない……あたしは怪獣よ。あなたがあたしを怪獣に変えたのよ！」
叫びとともにエリ子は崩れ残った建物を蹴り倒し、1500トンを超える体重をブーツに込めてそれを踏み躙る。全てが一瞬で形を失い、路上に放置されていた自動車ごとアスファルトが捲り上がった。
大地震のような激震が街を襲い、砂塵が夜を白く染める。
「悪い子にはお仕置きが必要ね……あたしの牢屋の中で反省するがいいわ！」
エリ子はそう言うとビキニのパンティーをずらす。赤い布切れの中から獰猛なエリ子自身が顔を出し、ピンクの肉襞が炎に照らされヌラヌラと光る。
嗅いだだけで勃起してしまう卑猥な香を放つ妖しい花弁の中に男を捻じ込むとエリ子はパンティーを元に戻した。
「虫けらのくせに！あたしと遊ぼうなんて１００万年早いのよ。あたしとの火遊びは火傷くらいじゃ済まないんだから！」
巨大な力を持った女の肉体がどんなに恐ろしいものか見せてやる！ エリ子は人間たちに自分の体を見せ付けるように大きく胸を振り、重い足音を轟かせながら腰にも届かない五階建てのビルに歩み寄った。
「あのマンションは手抜き工事だったけれど、こっちのビルはどうかしら？上からの圧力に耐えられる？」
ヒップをビルの上に突き出し、無遠慮に体重をかける。巨大な質量とエリ子の肉体が持つ膨大な運動エネルギーが簡単に屋上をを打ち破り、ビルは内部から爆発したように膨らみ崩壊した。
凄まじい爆煙をあげ、世界の終わりを告げるかのような大音響と振動を撒き散らしながらエリ子は残骸の上に尻餅をつく。
戦いの中で突発的に起こる避けられない破壊ではなく、自らの意志でそれを行っているという背徳感がエリ子の体を熱くし、バケツほどに膨らみ硬く尖った乳首がブラを軋ませる。
「キモチイイ……。」
恍惚の表情でパンティーの上から指を這わせ、股間を撫で回すエリ子。息が荒くなる。燃え盛る炎もエリ子の体に火傷一つ付けることは出来ず、彼女の快感を高めるだけだった。
エリ子は仰け反り、巨大なヒップを何度も残骸に打ち付けた。 あまりの衝撃に周囲の建物は積み木の玩具のように崩れ去り、人々は成す術も無く地面に叩き付けられる。
今まで自分たちの味方だと思っていた無敵の巨大ヒロインが性欲のおもむくままに荒れ狂っているのを目の当たりにして、人々はただただ恐怖し逃げ惑うことしか出来なかった。 五階建てのビルが建っていた場所はエリ子のヒップの形に深く陥没し、彼女の股間を濡らす淫水が池を作り、廃墟となった街を淫らな空気で満たしていく。
怪獣さえ磨り潰してしまうエリ子のヒップにかかればビルなど子供が作ったビーチの砂の城よりも脆い。
「まだまだよ、こんなことじゃ満足できないわ！」
半壊し停電で明かりも無いコンビニエンスストアの上に横たわるエリ子。美しく縊れた強靭なウエストがそれを跡形も無く押し潰す。
駐車場に放置された車のルーフを乳首が突き破り、横になっても形の崩れない巨大な乳房がそれを地中深く埋め込んでしまう。
エリ子がバストを引き抜くと、アスファルトの駐車場には巨大なＧカップの跡がくっきりと残され、哀れな自動車たちの残骸がその底に沈んでいた。エリ子は新たな獲物を探して歩き出す。
狂おしい快感とともに空虚な切なさがエリ子を責める。きっと自分は世界を破滅させてしまう。自分の性の悦びは相手を破壊することでしか得られない……自分は誰からも愛してもらえない！
そう思うと目に映る全てのものが憎く感じられた。
幹線道路を雷鳴のような足音を響かせてノシ歩くエリ子。 根元から引き千切られ足元に絡み付く歩道橋がアスファルトに火花を散らし、逃げ場の無い車の群をグシャグシャのスクラップに変えていく。
交差点で飛び出してきたトラックがブーツの先で蹴り飛ばされ、シャッターの閉まった角の商店に飛び込み火の手が上がる。
繁華街に聳える人気の無いデパートを一撃で蹴り砕くとエリ子は瓦礫の山を踏み躙りながらヘッドライトの明かりに満たされた大通りに躍り出る。
無数の自動車がドライバーごと踏み潰され道路は陥没し、爆発をともなって発生した火災の炎に客待ちのタクシーの車列が木の葉のように舞い上がった。
突然の出来事に右往左往する群集は、そこに紅蓮の炎に照らされ憤怒の形相で自分たちを見下ろす巨大な美女の姿を見て呆然となった。鋭い女の悲鳴が上がり、人々が一斉に逃げ出す。
火の海となった大通り、エリ子の足元には眠ることを知らない歓楽街が広がっていた。その中を虫けらのような人間たちが火災から、そしてエリ子から逃れようと必死で蠢いている。
ここは快楽を売る街、そしてそれを金で買う街。
「ならば、あたしがお前たちを玩具にしてあげるわ！」
エリ子が歓楽街を蹂躙しようと入り口の雑居ビルに手をかけようとした時だった。新たなどよめきが起こりエリ子が人々の視線の先に目をやると、都市の上空に巨大なＵＦＯが浮いているのが見えた。
ドーム球場ほどもあるそれは妖しいピンク色に発光しながら高層ビルの上に音も無く滞空している。ＵＦＯというよりもクラゲのようでもあり、事実巨大なカサの下からは無数の触手が空中を漂っている。
その触手がビルに絡み付き、発光が一際強くなった瞬間、ビルの照明が一斉に消え、ビルは粉々に砕け散り、残骸が巨大な女陰を思わせるクラゲの口に吸い込まれてしまった。
残骸と一緒に人や車もクラゲの中に消えていった。
「侵略者！」
エリ子の中に巨大な敵を自らの肉体で征服し、それを性のエネルギーに変えてしまおうという戦闘本能が甦り、火災を鎮火させてしまうほどの淫水が噴出し、街はエリ子の放つ狂おしい雌の匂いで充満する。
「人の愉しみを邪魔するなんて悪い子ね、許さないわよ……お仕置きよ、お前を玩具にしてあげるわ！」
そう叫ぶとエリ子は熟れ切った桃のような巨大なヒップを震わせ、クラゲの怪物に向かって走り出す。それに応えるように侵略者のモンスターも空中を滑るようにエリ子に接近した。街が激しく揺れる。
触手が鞭のように唸り、エリ子はそれを捉えようとするが一瞬遅く、触手はエリ子の体を縛り上げ自由を奪う。
「生憎と、そういう趣味は無いのよ！」
エリ子は腕の力だけでそれを簡単に引き千切ってしまう。クラゲは懲りもせず再び触手を伸ばしエリ子の巨体に触手を巻き付けた。
「何度やっても同じよ！こんなもの……。」
再びそれを引き千切ろうとするエリ子。しかし今度は力が入らない。巨大なＧカップの胸は締め上げられて色が変り、強靭な肉体が悲鳴を上げて軋む。
「……なんで？！」
苦しみもがくエリ子。その巨体は空中に吊り上げられ、バレリーナのような美しい脚線美が踊り、爪先立ちになったブーツの先が背の低い雑居ビルを踏み砕いていった。
「無駄ダ、オ前ノエネルギーハ全テ吸収サレテイル。」
エリ子の頭の中に感情の無い冷酷な声が響く。苦悶の表情でエリ子はさっきの二倍ほどに巨大化し、一段と強く発光するクラゲを見た。
クラゲは更に巨大化を続け、その腹にはエリ子の巨体を呑み込もうと口をパクパクさせる卑猥な花弁が涎を垂らしている。
「今マデヨクモ邪魔ヲシテクレタナ、オ前ヲ洗脳シ我々ノ兵器ニシテヤル。地球ハ地球人デアルオ前ノ手デ破壊サレルノダ。」
「そんなことは……。」
さっきまで男に復讐し、性欲のおもむくままに全てを破壊し尽くそうとしていた自分の行為を思い出してエリ子は自分の愚かさを悟った。このままじゃあたしは侵略者と同じじゃないの！
薄れていく意識の中でエリ子は戦う力も持たず彼女の足元で逃げ惑い、踏み潰されていくしかない群集の中にかつての自分の姿を見たような気がした。
力を手に入れる前、侵略者に対して感じた怒りがエリ子の中に溢れてくる。それから自分の中に幽閉されている男のことを思い出す。遊びだったとはいえ一度は愛し、そして初めての安らぎを与えてくれた男のことを……。
「そんなこと許さない！」
エリ子の体の芯を激しい怒りが貫き、全身に力が漲ってきた。エリ子の体から真っ赤なオーラが噴出し、触手を吹き飛ばす。
「あたしのエネルギーを吸い取れるものなら吸い取ってごらん！」
エリ子の勃起した乳首からエネルギーがビームとなって放たれ、クラゲに突き刺さる。クラゲは空を覆い尽すほどに巨大化するがエリ子は攻撃を止めない。
都市はエリ子の放つビームで昼間のように、そして真っ赤に染められ、乳首に突き破られてＧカップを包むブラが弾け飛んだ。
クラゲの表面に細かい亀裂が走り、その内部から鋭い閃光が煌めくと、クラゲは巨大な発光体となって核爆発のように弾け、都市を呑み込み始めた。
爆心付近の建造物は一瞬で打ち砕かれ、空気は焼け全てが溶け出す。誰もが最期を覚悟したとき、人々は大地を揺るがすエリ子の歓喜の雄叫びを聞いたのだった！
「チョーーーキモチイイーーーーーーーー！」
全てを破壊し尽くそうとしていた巨大なエネルギーの塊がエリ子の肉体へと逆流していく。エリ子は大量の淫水と芳香を撒き散らし、天を仰いで涎を垂らしながら快感に身を委ねていた。
全てが終わったとき、人々は神々しいまでの輝きを放ちながら、破壊された街と彼らを静かに見下ろしているエリ子の姿を見た。その表情は穏やかで満たされた顔をしていた。
エリ子の姿が輝きを弱めながら人々の前から消えていく。
彼等は無敵の女神の大きな愛に守られたことを知ったのだった……。
気がつくと男は冷たい歩道に横たわり、その側にエリ子が立って彼を見下ろしていた。変身は解かれていたが男はエリ子のブーツが彼のイチモツを踏み躙るのではないかという恐怖に駆られた。
「そんなことしない……言ったでしょう？守ってあげるって、あたしが守ってあげるって。」
エリ子は男の心を見透かしたようにそう言うと優しく微笑む。二人の近くで燃える乗用車の炎がエリ子の顔を赤く照らす。その顔は恐ろしいまでに美しく、そして怒っているようにも、また泣いているようにも見えるのだった。
「許してくれるのか？」
「どうかしら？でもね、一度は愛した人だから……あたしを女にしてくれた人だから。」
そう呟くとエリ子は公園の植え込みに脱ぎ捨てた皮のコートの埃をはらって身に纏う。
男は感じていた。怪獣を粉砕しビルを押し潰しても傷一つ付かないエリ子の不死身の肉体の、自分を包み込んだ部分だけは柔らかだったことを。そうでなかったら彼はとっくに潰れて死んでいる。
「すまなかった。」
「奥さんとお幸せに……もう二度とあなたの前には現れないわ。テレビや新聞であたしを見ることはあるだろうけど。」
「エリ子のことは誰にも喋らない。」
「喋ってもかまわないわよ。どうせ誰も信じないし、信じても誰もあたしを止めることなんて出来ないんだから。でも忘れないで、あなたの体からあたしの匂いが消えることは決して無いわ。」
そう言い残すとエリ子は男を一人残し、ブーツの音を響かせながら歩き出す。惨状の現場に駆けつける緊急車両のサイレンがそれと重なり、足音を掻き消していく。
エリ子の後姿が炎に照らされながら闇の中に消えていった。
終
|