!この作品中には過激な性描写、残酷な殺戮描写が多々含まれています。
御趣味に合わない方はお読みにならないことをお勧めします!
                           作者



  《 婚約者のアルバイト 》 後編


                                 作  Pz



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ランドクルーザー70型が賢一のマンション駐車場に入る。
午後一時。
初冬の日の光は柔らかに駐車場に立つ賢一と智美を包み込む。
「ついでに買い物しておけばよかったかな。半端に時間ができたし。
車からディバックを取り出し、肩にかける賢一。
「そうねー。賢ちゃんがあんなに早く帰っちゃうから。暇ができました、っと。」
ナビシートから飛び降りるようにして車を降りる智美。
大きすぎるこのクロスカントリー用の大型四輪駆動車は智美が唯一気に入らない
賢一の持ち物だった。
マンションの自室に戻る二人。スカートから伸びる智美の白い足が交互に
動くのを何気なく見る。
賢一は自分が見てしまったフィルムを思い出し、少しだけ気分が悪くなる。
「ねー、賢ちゃん。今日は外食にしましょうか・・・。」
臨時収入である15万円が入っている封筒を持ってうれしそうな智美。
源泉税込みの支給額だから,封筒には16万6千6百円の金額が
記入されていた。
彼女はダイニングのカウンターテーブルに紫の髪をしたメイドさんからもらった
ラッピングされた箱を置く。
「ああ、それ生ものだから、冷蔵庫に入れとけば?」
賢一はユニットバスに向かい、智美に声をかける。
風呂掃除を始めようかと思ったのだ。
それは、暗に智美に部屋の掃除を要求するものだった。
メイクを落とし、ジーンズにトレーナーというラフな服装に着替えた智美。
風呂場に向かう賢一を見て、苦笑いする。
「今日のーご飯はー私がかせいだー♪」
妙な節をつけて歌う智美。
今度は賢一が苦笑いする。智美の大きなお尻をぼんやりと見つめると、
先ほどの映像がまた頭をよぎる。
「巨人になった智美なんて。もしも智美があんなに巨大になったら・・・
平然と人間を殺せるのかな・・。」
一瞬だけそんなことを考える。
掃除機を持ち出し、床の上の雑誌や運動器具を片付け始める智美を見やる賢一。
智美がカウンター上の化粧箱に手を伸ばしているのを横目で見ていた。
甘いものが好きな彼女のことだ。
藤原ゆかりもそれを知っているのだろう。多分、有名店の生洋菓子だろうな、と
賢一は予想した。
バスタブを磨いているとき、智美の悲鳴が上がった。
4LDKの室内を振るわせるほどの大きさだ。
「どうした!」
あわててバスルームを飛び出す賢一。
キッチンカウンターの前で両腕を顔の前に持って行き、口を隠すようにしている
智美の姿を認める。
「どうした?」
智美に問いかける。彼女はゆっくりとカウンターテーブルの上を指差す。
賢一がそこに目をやると、綺麗な包装紙がはがされ、丈夫な化粧箱が開けられていた
藤原ゆかりのプレゼントがそこにあった。
「虫でもはいっていたの・・・か・・・」
賢一も凍りつく。
箱の中には最新型のフェアレディがパッキング材につつまれて収まっていた。
「精密なミニカー?」
そのパッキング材に埋もれるようにして、二人の小さな男女が両耳を押さえて
箱の中にうずくまっていたのだ。
人形だろうか。二センチ程度の大きさだ。
「なんだ・・・これは・・・。」
賢一の頭にはすぐに先ほどの映像が思い浮かんだ。
巨大な智美に踏み潰されてゆく小さな人間たち・・・。
そっと指で男の小人をつつく賢一。ツイードのジャケットにコットンパンツ姿の
若い男のように見える。
まだ耳をふさぎ、苦しんでいた。
智美の悲鳴が彼らの鼓膜を破いたのか。
「賢ちゃん、箱を空けたら、突然これが飛び出そうとしてきたのよ・・・。」
長野の山育ちである智美。虫や蛇など、怖がったこともない。
その彼女が悲鳴をあげる・・・。彼女がこれ、といったもの。
それはまさしく、先ほどの映像中に現れていた街の住人ではなかろうか。
若い女性も同じくショック状態だ。
だが、こちらは意識が戻り、賢一を見上げ恐怖に引きつっていた。
急激に冷静になっていく智美。
「ねえ、それって、人間?」
智美が賢一に聞く。
おびえきった表情の若い小さな女性。
今度は智美がそっと指でその女性をつつく。小さな悲鳴が上がる。
「あ、よせよ。」あわててさえぎる賢一。
まさかとは思うが、智美がこの小人を虫として扱うのではないかと心配になったのだ。
「智美、藤原さんに電話して!」
まだ失神している若い男と一緒に小人女性を箱の中にとじこめ、蓋をしてしまう。
「返しにいこう!」
少し声を上ずらせ、賢一は智美に言った。
掃除も半ばに、また外出の仕度をする二人。

街道の渋滞にあい、またスタジオのあるオフィスビルに車が着いたのは
日が傾きかけた午後3時であった。
西に傾いた日差しはオフィスビルを金色に光らせる。
花崗岩の廊下を走る二人。小人が入っている箱を揺らさないように慎重に走る。
だが、箱の中からは小さな声で悲鳴とも、わめき声とも付かない音が聞こえてくる。
セキュリティーを二度とおり、藤原ゆかりのスタジオにたどり着いた。
また応接に通される二人。
例のメイドさんが今度はアイスコーヒーを持ってくる。
賢一と智美は恐怖が入り混じった目で彼女を見つめる。
「少しお待ちくださいませ。」
それだけ言うと、転ぶことなく応接室を出てゆく。
入れ違いに藤原ゆかりがその大柄な体躯を二人の前に現した。
「ずいぶん早く戻りましたね。」
親しげな微笑を浮かべ、二人を見やる藤原。
「これは一体なんですか!説明してください!」
賢一は箱をミーティングデスクの上に置き、その蓋をそっとはずす。
ぐったりとした小人の男女二人が、フェアレディZの車内に寝そべっていた。
船酔い状態なのだろう。
「あらあら、小道具さんが間違えて外に出してしまったのかしら。」
冷たい笑いを顔に浮かべ、小人カップルの乗った車を持ち上げる藤原ゆかり。
手のひらに収まるくらいの大きさである車。
二人の男女は車内で抱き合って、藤原ゆかりを見つめていた。
「どうかしら、賢一さん。出演を考えていただけませんか?」
藤原ゆかりはゆっくりと自動車を握りつぶしてゆく。
きしむ車体。小さな悲鳴が聞こえた。
賢一の目を見つめる藤原。
「なんてことするんだ!」
賢一は藤原から車をもぎ取ろうとした。
その瞬間、彼は簡単に彼女の左手でミーティングデスク上にねじ伏せられてしまった。
グシャ、と金属が潰れる音がする。と、同時に男女の絶叫も。
藤原ゆかりの腕に押さえつけられる賢一と、無残に握りつぶされた小さな自動車を
交互に見やり、凍りついたように動けない智美。
ものすごい力で、デスク上に押し付けられる賢一。
「クライアントからの要求が強引なの。ぜひ、賢一さんに出演してもらいたいわ。」
押さえつけていた賢一を離す。
小さな金属の塊となった車。
そっとそれをデスクの上に置く藤原ゆかり。黒いオイルと赤い冷却液が
じっとりと流れ出し、それが模型自動車などではないことを証明する。
残骸をつまみ上げ、灰皿に置く藤原。ガソリンのにおいが強くなっていたのだ。
賢一と智美は凍りついたように動けなくなる。藤原の冷酷な笑い顔。
しかしその表情は藤原の姿をさらに妖艶に見せた。
「お願いです。撮影にはいって。」
笑いを消して、強い口調で言う藤原。
「あの、オーナー。私もクライアントを知りません。教えていた・・・」
「撮影が終われば教えてあげます。」
智美の言葉をさえぎるように藤原が言う。
「今から明日の朝まで拘束させていただきます。
ギャラは五百万用意させてもらいましたよ。」
賢一は何か狂人でも見る目つきで藤原を見ていた。

「ごめんね、あんなオーナー始めてみたよ。痛かった?」
シャワールームに入る智美と賢一。
「ああ、すごい力だった。首をつかまれて押さえつけられるなんて。この俺が。」
首をさすりながら賢一が言った。
頑健な肉体が自慢の賢一は、女性に片手で押さえつけられたことが信じられないのだ。
シャワーを浴び、なまめかしくシャワールームのライトを反射する智美の裸体。
不安げな顔をして賢一を見つめながら体を流す。
だが、賢一はこの不可解な現実を何とか理屈つけようと必死だった。
「智美、あの小人、人形じゃなかったよな・・・。」
賢一の背中を流してやる智美。
「うん、生きていたわ。箱を開けたとき、びっくりして小さな悲鳴をあげていたの・・・。」
背中の泡を流しさり、頑健な壁のような賢一の背中を撫で回す智美。
そっと、賢一の股間にまで手を伸ばす。
ピクリ、と体を震わす賢一。立ったままの姿勢で振り返り、智美を見つめる。
智美を抱きしめ、キスをする。
柔らかな智美の唇。
「とりあえず、現実・・・なんだよな。」
ぼそ、っとつぶやく賢一。

「あら、メイクサンがいないわ・・・。」
シャワールームを出た智美が髪を乾かしながらそういった。
「お化粧の道具だけあるわ。」
「俺もメイクするのかな。」賢一が聞く。
「うーん、撮影するなら・・・ね。」
体をバスタオルで巻いて、自分で化粧を始める智美。
「ひげぐらいそればよかったかな。」
鏡を見て賢一は言う。
「で、これからどうするんだい?」
智美は少し困った顔で、「ディレクターさんがいつもならリハーサルを
してくれるんだけど・・・。」

「賢一さん、智美さん、そろそろ始めましょうか。」
藤原の声。
どこからか二人を見ているのだろうか。
無言でメイクルームを出る二人。
賢一は黒いビキニパンツ、智美は撮影用の白の水着上下だ。
サンダル履きで撮影室の前に立つ二人。
「ここなの?」
聞く賢一。黙ってうなずく智美。
重たい防爆構造の鉄扉についているグレモン錠をゆっくりとまわす賢一。
ガシャン、とロックがはずれゆっくりと扉が動く。
まばゆい光と抜けわたる青空が賢一の目に飛び込む。
「照明かしら?」
賢一は智美の手を引き、サンダルを脱ぎ、室内に入る。
智美が部屋の中に入ったとたん、どーん、と鉄扉がしまった。
「ああ!」、叫ぶ賢一。
振り返り、扉に向かい始めたとき、賢一は扉が消えてゆくのを見てしまう。
「智美!ドアがない!」
智美の手を引っ張る賢一。
賢一の手を強く引き返す智美。
「賢ちゃん・・・。これみて・・・。」
震える声で智美が言う。
振り返る賢一。その眼前には青い晴れ渡った空の下、地平線がかなたに見え、
その地平線まで続く広大な都市が展開していた。
だが、その広大な都市は精巧なディオラマのように小さかったのだ!
灰色や白や茶色のビル群、少しはなれたところに小さなモザイクのように
青や赤の瓦屋根が敷き詰められる住宅群。ところどころにこんもりと濃い
緑を茶色く色替えし始めている森がみえる。
一直線に走る線路は小さなビルに見え隠れするようにして
小さな列車を走らせていた。
さらには遠方に日の光を反射して光る海まで見渡せる。
改めて賢一は足元を見た。
賢一の右足は片側三車線の道を踏みつけ、その足首に次々と小さな自動車が
ぶつかり大音響を町に響かせていたのだ。小さな車でも衝突音は大きかった。
しかし、賢一には痛みも感じない。
一方、彼の左足は四階建ての普通郵便局を踏み壊している。
智美を見る賢一。
手をつないだままの智美も足元を見つめていた。
智美の足首は五階建ての雑居ビルを踏み抜き、電話局を半壊させていた。
ゆっくりと足首を動かす智美。
「・・・賢ちゃん、私たち巨人になっちゃたよ・・・・。」
抑揚のない声で智美が言う。
地響きとともに、智美が街道上を歩き始めた。
賢一の巨大な脚で通行止めにされ、渋滞が始まっていた街道上は
車を乗り捨てて逃げ出すドライバー、いっせいにビルから逃げ出す人々でいっぱいだ。
無表情なままの智美。
彼女は何のためらいもなく、街道上の彼らの上に足を振り上げ、地響きを上げながら
その小さな人々を踏み潰してしまった。
呆然としたままの賢一。
智美は腰を少しかがめ、歩道上を必死に逃げる小さな人間を捕まえた。
電線を引きちぎり、バスをつまみ上げられそうな巨大な手のひらが小さな人間を捉える。
大木のような、しかし女性らしい曲線で構成された指に不運な男性会社員は
小さな虫のようにつまみ上げられる。
胸と背中を強く巨大な指に挟まれ、ばたばたと両手、両足をばたつかせる男性。
「こんにちは。あの、あなたは人間ですか?」
手のひらの上に小さな会社員を置き、智美はそう訪ねた。
「小さくても人間だよ・・・。」
賢一が横から言う。
智美の手のひらの上で腰を抜かし、あんぐりと口をあけ、巨人となった二人を見つめる
小さな男性。
何かを叫んだ。が、その言葉は小さすぎる声と二人が聞いたこともない発音で
何を言っているのかがわからなかった。
そっと地上にその男性を降ろす智美。
「ねえ、賢ちゃん、やっぱりここ、人間の世界じゃないよ・・・。」
「え、何で。」
賢一はさっきの映像を思い出す。
巨人となった智美が無慈悲に町を破壊し、人々を踏み潰して回るあの映像。
「だって、こんなに小さな人間なんているわけないでしょ・・・。」
意図的に自分たちが巨人であることを避けた言い回しだ。
何か無理に表情を消しているような智美を賢一は見つめる。
地鳴りを上げ、智美は道路上を歩き出した。
小さな人間たちから小さな悲鳴が上がる。道路上にはぎっしりと渋滞した自動車が
立ち往生している。突然現れたこの男女二人の巨人を小さな車に乗った
小さなドライバーたちはただ呆然と見上げていた。
そう、彼らにしてみれば考えられない大きさの人間が突如街中に現れたのだ。
智美はまだ人間が乗っている車を踏み潰しながら歩いてゆく。
クシャリ、ボス、と小さな箱が潰れてゆくような音がして、智美の脚がアスファルトに
沈み込む。必死になって車から飛び降り走り出す小さな人間たち。
足元を見ながらゆっくりと歩く智美。
色とりどりの自動車ごと智美は逃げ惑う彼らを踏み潰してしまう。
「あ、智美!何をするんだ!」
と、賢一が智美を止めようとしたとき、賢一は足の下に柔らかなものをつぶし、脚が
アスファルトにめり込み、膝がビルをけり壊してしまう。
「あは。賢ちゃんも一緒!巨大怪獣カップルのできあがりでーす。」
智美は道路上をまた歩き始める。腰にも届かない雑居ビルを拳骨でたたく。
いともたやすく崩れ落ちるビル。
ビルから悲鳴をあげて逃げ出す人間たち。足元をじっと見つめる智美。
その脚をゆっくりと逃げる人々の上にかざし、彼らの上すれすれに押し下げ、
足を左右に揺らしていた。
何人もの小さな人間が彼女の足に突き飛ばされ、アスファルト面に押し付けられる。
小さい人々は何とか智美の足の下から這い出そうとしたが、智美は少しずつ足を地面に
押し付けてゆく。
賢一は呆然と智美を見つめていた。
まるで蟻を踏み殺して遊んでいる幼児のような自分の婚約者。
巨人となって町の中に立ち尽くす自分。
頭がおかしくなりかけているのが賢一自身わかっていた。
少しだけ口元に笑みを浮かべ、小さな人間たちをゆっくりと踏み潰し始める智美。
小さな人々は必死になって逃げ惑う。だが、巨大なこの女性の歩幅は
彼らにしてみれば軽く50メートルはあった。道路上にいた不運な人々は
次々と智美の足の下に消えて行く。
色とりどりの服装をした小さな人々。
それは蟻などには見えない。
巨人となった賢一と智美からは人間を真上から見下ろすことになる。
真上から見た人間は、黒や茶色の頭から小さな二本の足と手が交互に動き、
それがチョコチョコと上下動しているのだ。たまに白い顔面が賢一と智美を
見上げている。
見たこともない奇妙な生き物に見えるのだった。
智美がまた道路上を歩き出す。
今度は彼女の腰高さほどの大型百貨店にその白くエロチックな曲線で構成された
脚を突きたてたのだ。
モルタルの外壁にひびが入り、智美の白い足がゆっくりと動くと、外壁が
ガラガラと崩れ始める。さらに智美は百貨店の店舗を引き裂くように脚を引き抜く。
その凄まじい脚力。むっちりとした太ももが大型百貨店の鉄筋RC構造を粉砕し
その両足に瓦礫となってまとわりつく。
智美がたったの二歩でその大型店舗を二つに引き裂いた直後、ドーン、という
轟音とともに店舗が崩れ落ちた。
自分が壊した建物の残骸を見下ろす智美。ゆっくりと賢一のほうに
振り向く。瓦礫と粉塵の中を逃げ惑う人々をゆっくりと踏み潰しながら。
「賢ちゃん、私なんだか変な気持ち・・・。街を壊し始めたら
気持ちよくなっちゃった・・・。」
賢一は当惑する。智美の目が、なにやらトロン、としているのだ。
人間を踏み潰し、街を破壊して回った彼女は興奮し始めているのか。
「智美、サドっ気があったんだ・・・。」
何とかそれだけを言う賢一。
道路上に張り付く智美に踏み潰された死体を見れば、それがサドっ気で
済まされるものではないことはわかっていた。
しかし、賢一には何もできない。町の中に立ち尽くす他にやりようがない。
彼が歩くだけで、この小さな街は破壊されてゆくのだから。
「賢ちゃん・・・。」
智美が地響きを立て、賢一に歩み寄る。
乗用車が智美の足に蹴り飛ばされ、ビルの一階ガラス張りショールームに突き刺さる。
さらに、乗り捨てられた四トントラックをぐしゃりと踏み潰す。
まるでアルミフォイルで作られているかのごとく、もろく柔らかだ。
埃まみれになりながら、半狂乱で瓦礫の中を逃げ回る小さな人間達は
智美の足に次々と踏み潰されてしまった。
賢一の目の前に立つ智美。
なんて色っぽい表情をしているのだろう。
見慣れた智美の顔と体であるが、賢一はその表情、小さな街に立つ彼女の
体を見、改めて智美の女性の魅力を感じ取る。
肩まで伸ばした黒髪はさらさらと風になびく。小さなレモン型の顔は白く、その中の
黒く大きな瞳はトロン、としてややけだるそうだった。
白い水着の小さな布切れにつつまれた大きな乳房は、はちきれそうに胸から
突き出している。
最近肉がついてきたと智美が嘆くウエストだが、いやらしいぐらいのくびれ方だ。
その下の腰は大きく張り出し、鍛えられた筋肉の上に女性らしい脂肪をたっぷりとつけ、
プルプルとゆれる。
エロチックな曲線で構成される長い脚は白くすらりと伸びる。
これほどまでに美しい女性を自分のものにした達成感。
賢一は暫く智美を見つめてしまった。
「えい!」
突然智美は賢一を突き飛ばした。
智美の見事なプロポーションに見とれていた賢一は突然の智美の攻撃に間単に倒される。
「うわ!」
大音響とともに賢一は腰から大手都市銀行と証券会社の入っているビルの上に
倒れこんだ。
さらにあわてて地面に両手を着いたとき、賢一の腕はそれぞれ7階建てマンションと
五階建ての市役所庁舎をぶち抜き、ガラガラと倒壊させてゆく。
倒れた賢一の上にのしかかる智美。
「ほら。賢ちゃんが倒れただけでこんなに街が壊れちゃうのよ。
なんだか面白くない?この世界では私たちの思い通りにならないものはないのよ。」
賢一の顔に、ぐっと顔を寄せて彼女がささやく。
智美のひざが瓦礫となった銀行の社屋をさらに粉々に砕いてゆく。
大きな乳房が賢一の分厚い胸板にのしかかる。
じっと賢一を見つめる智美。
唇を重ね合わせる二人。智美はその唇をそのまま賢一の右耳に這わせる。
「賢ちゃん聞いて。あの箱の中にいた小人の女の人、あの人私知ってるわ。
私と入れ替わりにモデルをやめた人よ。」
小声でささやくようにそう言う智美。
賢一は驚いたが、智美がなぜ耳元でささやくかも理解した。
藤原ゆかりに聞かれたくない話なのだ。
智美の腕をつかみ、賢一は立ち上がる。
彼が両足を摺り寄せたときに、彼の腰の下にかろうじて倒壊を
免れていた社屋もあらかた粉々に砕かれてしまった。
智美も立ち上がり、二人は抱き合う。智美の耳に口を寄せる賢一。
「じゃ、あの二人は藤原に小さくされた、てことか。」
信じられない話だが、賢一は地平線まで続く広大なミニスケールの
街を見下ろしつぶやく。
「多分、そうよ。これが現実かどうかはわからないけど。でも、この街を
みんな壊さないと撮影は終わらないのよ。」
高層ビルよりも大きな二人。
巨人の歩幅から逃れられなかった小さな人々が二人の足元を走り逃げる。
水着の上から智美の乳房をゆっくりと揉みしだき始める賢一。
彼の耳元で熱い吐息をはく彼女。
水着の肩紐を解き始める。
乳首の隆起を隠すためだけの薄いパットがつけられたシンプルなブラ。
賢一は慣れた手つきでそれを取り去る。
巨大な乳房がブルン、と踊りだした。
硬く隆起した智美の乳頭が現れる。
指先でそれをつまみあげる賢一。
突然、智美が賢一の胸板を突き飛ばし、後ろに飛びのく。
彼女に蹴り飛ばされた鉄筋構造のマンションが瞬時に瓦礫の山となり、さらに
戸建住宅がけりこわされ、巨大な足の下に踏み潰されてしまった。
乳房を両手で隠し、智美はいたずらっぽく笑う。
「あは、ここまでおいでー。」
なんと、智美はこの小さい街の中を走り始めたのだ。
彼女が脚を振り上げ、振り下ろし、走り出すと地響きがとどろきわたった。
腰にも届かないオフィスビル、マンション、雑居ビルをけり壊し、道路など
無視して走りだす智美。
白い彼女の巨大な脚。膝が15階建てのマンションをただの一撃で砂細工のように
倒壊させ、さらに足首がその瓦礫を蹴散らす。
地響きを立てて地面に突き刺さる智美の足は軽く5メートルは地面にもぐりこむ。
大通りから裏通りまで大またで走る智美。
電線を引きちぎり、木造家屋などつま先に引っ掛けて文字通り木っ端微塵に
蹴り飛ばす。
小さな人々がその飛び散る瓦礫に押しつぶされ、ものすごい勢いで降りてくる
智美の足に地中深く踏み潰されて埋め込まれてゆくのを賢一は
唖然として見つめる。
「賢ちゃん!もうあきらめて!」
両腕を腰に当て、大きな乳房を揺らしながら智美が叫ぶ。
トップレスのまま、智美が住宅街の中にドシン、と地響きを立てて座り込んだ。
お尻をぺったりと地面につける。
モルタル二階建ての戸建住宅は四軒纏めて智美のお尻の下に押しつぶされる。
巨大な太ももがさらに六軒の家屋を倒壊させる。
賢一も仕方なしに智美のほうに歩き始める。
足元をチョコチョコと逃げ惑う人々を踏み潰さないように気をつけながら。
(ほとんど無駄な配慮だったが。)
賢一は智美が座り込んでいる目の前に立つ。まだ右手に持っていた智美のブラを
おそらく中学校であろう校舎にそっとかぶせた。
白いブラのカップがプラネタリウムのように校舎の屋上にそびえる。
「ちょっと、恥ずかしいじゃないの。その中に中学生まだ残ってないでしょうね。」
智美が顔を赤くした。
座り込む智美の前にひざまずく賢一。
電信柱がぽきぽきとおり飛ばされ、二階建ての住宅がめりめりと押しつぶされる。
彼女の大きな乳房を強く揉みしだく。賢一をじっと見つめる智美。
乳房から手を離し、智美を強く抱きしめ、二人は街の上に寝転がる。
智美の長く黒い髪が戸建住宅の上に覆いかぶさった。
街路樹に絡まる黒髪。
彼女の背中はゆっくりと家屋を押しつぶしていった。
まだ家屋の中に残っていた人々があわてて飛び出す。
賢一の右手が智美の白いおなかの上をそっとなでまわし、やがて白い水着の
パンツにかかる。
女性の丘をパンツの上からゆっくりとさすり始める。
智美はたまらずに声を上げてしまう。
一気にパンツをズリ下ろす賢一。
黒々としたアンダーヘアが秘密の部分を覆い隠すようにして現れる。
ぴったりと太ももを閉じる智美。
股間を存分に探検した右手を引っ込め、賢一は黒いビキニパンツを下ろした。
いきり立つ男性の象徴。それは智美の横にある五階建てマンションよりも大きかった。
「あは。アパートよりも大きい!」
智美が笑う。
小さな人々は逃げながらも、呆れてこの二人の巨人を見上げていた。
賢一は智美の水着のパンツをまた中学校の校舎にたたんでかぶせた。
「もう。何でそこにおくのよ。」
顔を赤くして上半身を起こし、智美が言う。
家屋を押しつぶし、賢一が再び智美を抱きしめ、キスをする。
地響きをあげ、智美は寝そべった。
大きな喘ぎ声を上げる智美。賢一は彼女を責め立てるのに夢中になる。
顔を左右に激しく振る智美。長い黒髪が立ち木を絡めとリ、引き倒す。
智美の頭の下にあった二階建ての住宅は粉々に砕かれてしまう。
智美のお尻は激しく動き、五階建てのマンションを半壊させていた。
賢一の右手が彼女の太ももの間を伸びてゆく。
「あ、あ、あー」
智美の秘密の洞窟に賢一の右手が入りこみ、智美のオマメをつつきだした。
そのたびにお尻を激しく上下させる智美。
半壊したマンションは完全に倒壊する。
激しく動かしていた智美の両足は瀟洒な住宅を蹴り飛ばしていた。
両腕は賢一の背中をつかみ、また、小さな住宅をつかみ壊し、投げ飛ばしていた。
智美が顔を横にしたとき、大きな庭を持った三階建ての高級住宅が目に入った。
あらかた智美の腕で破壊しつくされた付近一帯であったが、
その住宅は破壊を免れていたのだ。
敏感な部分を激しく責められる智美は右手をその住宅に伸ばす。
綺麗に手入れされた庭、もみの木が三本立っている。
智美は指でその住宅の大きなサッシガラスをはじき、壊した。
レースのカーテンをつまんで引きちぎり、家の中をのぞいてみたのだ。
高級な作り付けの家具、リビングセット、室内照明、高そうなフローリングが
精巧なドールハウスのように見えた。
「綺麗なお家。こんなところに住んでみたいな・・・」
突き上げられる快感に溺れながらもその高級住宅に住む自分を想像する。
と、智美はそこでこの小さな住宅の住人を見つけてしまった。
四十代ぐらいの男性と三十代くらいの小さな女性。
恐怖のあまり、智美の指で突き壊された居間に抱き合って座り込んでいたのだ。
初めて小さな人間に「かわいそう」という感情を持った智美。
と、同時に凄まじい恥ずかしさが彼女の心の中に沸き起こった。
見られている、裸で男性に敏感な部分をいじられ喘ぐ自分。
それも小さいとはいえ、他人の目の前で。
顔が真っ赤になり、耳まで熱くなる智美。
ほんの数秒間の出来事であった。
智美はその高級住宅を叩き壊してしまったのだ。
おびえきった小さな住人ごと。右手で拳骨を作り、たったの二回それを
たたきつけるだけで。
精巧なドールハウスのように美しい夢のような家は細かなコンクリ片と木屑、
ガラスを飛び散らせ、凄まじい衝撃で破裂するように倒壊する。
ガレージの高級輸入自動車が数メートル空中に躍り上がり、地面にたたきつけられた。
二回目に智美がその巨大な拳を振り下ろしたとき、
夢のような家はクレーターの周りに残骸を飛び散らせ、消滅してしまう。
少しだけ心にあの小さな夫婦の怯えきった顔を思い浮かべた智美。
だが、すぐにまた快感におぼれだす。
そしてまた喘ぎ声をとどろかせ、身もだえを続けた。
両足を賢一に抱え上げられ、腰を浮かせる智美。
賢一の熱く固い肉柱が智美の洞窟に深く突き刺さる。
激しく腰を前後させ始める賢一。
智美の絶叫が街にとどろいた。ぐらぐらと地面が揺れる。
ドーン、ドーンと凄まじい肉体同士の衝突音が街を揺らす。
賢一も巨人であることの魔力に徐々に取り付かれていったのである。
あの、映写室で見た巨大怪獣のような智美。
美しい肢体で残酷な破壊を繰り返す婚約者。
その巨大で美しい女性を、いま、賢一は征服しようとしているのだ。
小さな街を一面の瓦礫の平野に変えてゆく自分と智美の力。
快感はいつもの数倍に感じられた。
数分後、周囲の家屋をすべて押しつぶし、二人は最初の絶頂を迎えてしまった。
いつも通りに智美の中に熱い愛液を注ぎこむ賢一。
うっとりとしたままの智美。
寝転がり二人はまた抱き合う。
「タオルもティッシュもないもんね・・・。」
股間を押さえ、あふれ出る二人の愛液を指先で確かめる智美。
賢一はその手に彼の手を添える。
突然、賢一の手を振り払い智美が四つん這いになる。
大きなお尻を賢一に向け、そのまま家屋を押しつぶしながら街道に向かった。
智美の股間からとろりと滴り落ちる愛液。路地に乗り捨てられたセダンタイプの
乗用車にぽたりと落ちた。半透明の愛液の中に閉じ込められるセダンタイプ乗用車。
テナントビルをその腕で弾き飛ばし、膝で崩れるビルの残骸を路上に埋め込む智美。
まだ避難する人でいっぱいの街道に知美はその巨体を現した。
悲鳴をあげ、将棋倒しになる人々、その倒れた人々の上を
踏みつけて走り逃げる人々。
避難途中の人々はあっさりと巨大女性に追いつかれてしまったのだ。
立ち並ぶ無傷のビルから、ヌット上半身を突き出し、その惨状を見つめる巨大女性。
彼らは地響きを立て、凄まじい轟音を立てビルをつき壊しながら四つん這いになって
彼らを追いかけてくる巨大で美しい怪物を見上げた。
真っ白な大きなお尻は見事な女性らしい曲線を見せ聳え立つ。
折り曲げられた白く見事な脚は十階建てオフィスビルを軽々とつき壊す。
巨大な二つの乳房は柔らかそうにゆらゆらと揺れる。
だが、グラビアアイドル並みのその巨大な乳房は鉄筋コンクリートつくりの
雑居ビル屋上部分から下3フロアーに、ぶつかるだけでそれを粉々にしてしまったのだ。
長い黒髪の中の端正な美しい顔が少し笑っているように見えた。
おもむろに、巨大女性は逃げ回る小さな人々にその巨大な腕を伸ばす。
若い女性、都市銀行の制服をまとった女性が一人つまみ上げられる。
さらに制服姿の女子高生。またOLであろう、制服姿の女性。
次々に巨人となった智美につまみ上げられ彼女の左手に集められる。
全部で五人の小さな女性が集められた。
彼女らを手のひらから落とさないように気をつけながら、智美はゆっくり立ち上がり
まだ無傷の駅周辺繁華街に向かって歩き出した。
寝そべったままの賢一。智美が何をするのか興味深げに見ている。
「賢ちゃん、いいことしてあげる。」
賢一も起き上がり、智美に向かって歩く。
緊急停止した列車からは乗客が駅にあふれ出していた。
ビルからはまだ非難する人が出てくる。乗り捨てられた自動車は彼らの
逃げ道を塞いでいる。
智美は彼女の腰にも届かない駅周辺のオフィスビルをけり壊して
彼ら小さな人々でいっぱいの国道をまたぐ。
小さな大勢の人間の視線がいっせいに智美に浴びせかけられた。
地響きを立て、賢一も智美に追いつく。
彼もまた、小さな人間を数百と踏み潰してしまっていた。
街道上にひしめく小さな人々を冷たく見下ろす智美。
ゆっくりとその大きなお尻を、彼らの上に下ろし始める。
ズシンと小さな人間でいっぱいの国道上に座り込む智美。
グチャッ、っと柔らかなものが潰れるような音とともに、彼女の
大きなお尻の下から鮮血が流れ出す。
メリ、っと智美のお尻が道路に沈み込む。ぺったりと地面につけられた両足が
百貨店店舗と都市銀行をけり壊した。
智美の手のひらに乗せられた五人の女性はみな腰を抜かし、放心状態であった。
男女二人の巨人が街を破壊して回る。
信じられないが、現実なのだ。
暖かな巨大女性の手のひら。崩れるビルの轟音。彼女たちの遥か下方から聞こえる
人々の悲鳴と絶叫。舞い上がる黒煙、砂埃がこれが夢でないことを証明していた。
賢一が智美の前に立った。
彼も智美がこの次に何をするかは見当をつけていたのだ。
二回戦に入る前に智美がいつもしていること。
しかし、手のひらの小さな女性たちが気にかかった。
「うーん、ちょっと下をむいていますねー。でもまた上を向いてくださーい。」
賢一の男根をそっとなで上げる智美。
むくむくと上を向き始める賢一の男根。
笑いながら、賢一の顔を見上げる。
そして、智美は手のひらの上の小さな若い女性たちを
彼女の顔の前に持ってくる。
やさしくいたずらっぽい笑顔をから一転させて、冷たい目つきで
小さな女性たちを見つめる。
「服をぬいで。裸になるのよ。」
冷酷に言い切る智美。
五人の小さな女性に智美の言葉は通じなかった。
賢一はこの後の智美の行動に驚いた。
女の子っぽいことが嫌いな女だ。どこと無く少年のような性格でもあった。
そこがまた気に入っていた賢一だったが。
長野の山育ちで、昆虫や小動物が遊び相手だった彼女。
自分の手のひらに乗る小さな人間を彼女は昆虫と認識してしまったのだろうか。
空いている右手で、智美は小さな女性たちの服を剥ぎ取り始めたのだ。
五人の悲鳴が上がる。
OLであろう、制服姿の若い女性は黒いベストと、ベージュのブラウスを
紙のようにちぎられ、白い肌があらわになる。さらに智美は指の腹で彼女の
ブラジャーまで剥ぎ取った。
泣き叫ぶOL女性。
他の四人は黙って服を脱ぎ、裸になった。
胸と股間に手を当て、不安げに巨大な女性を見上げる手の上の女性たち。
巨大女性の手が彼女のうち一人をつまみ上げた。
五本の大木のような指が女子高生であろう、若い少女の胸と背中を挟み込む。
泣き叫び、両手と両足をばたばたとさせる少女は宙に持ち上げられてしまう。
そして、賢一のまた固さを取り戻し始めた男根の上に、ちょこん、と
置かれてしまったのだ。
小さな女性たちから見れば大型高速バスより大きな男根。
女子高生は両手と両足で必死に賢一の巨大な肉棒を抱えた。
次々に小さな女性が並べて乗せられる。
「ねえ、あなたたち、賢ちゃんのもの、元気にしてあげて。」
どこか侮蔑が混じる笑顔で賢一の男根上の女性たちに語りかける智美。
「あははは、ほんとにバナナボートに乗ってるみたい。」
笑う智美。
五人の女性は五階建てのアパート並みに巨大な女性の顔をみつめ、
いっせいに叫び始めた。
小さいながらも悲壮な絶叫であった。
賢一は黙って智美を見続ける。
ぬるぬるとする男根の上で、全身を使ってそれをこすりだす若いOL.。
女子高生はいやいやながらも、口で自分が乗せられている物体をなめ始める。
五人の小さな女性の愛撫が意外に気持ちいい。
賢一が少しだけうめき声を上げる。
「あー。私もー。」
智美はそういうや、唇を賢一の男根にくっつける。
小さな女性達はまた悲鳴をあげた。
小さなマンションほどの巨大な女性の顔面が目の前に現れたのだ。
そして、四メートル近い唇が彼女らの足元を左右に動くと恐怖で
彼女らの悲鳴も止まった。
いたずらっぽい目つきで賢一を見上げる智美。
そして、智美はいつもどおりの行為を実行した。
小さな五人の女性など、そこに居もしないかのように。
ぱっくりと開けられ、真っ赤な唇と真っ白な歯を見せる口。
彼女ら五人が見た最後の光景。
賢一の男根を口いっぱいに頬張り、智美は舌をそれに這わせさらに
こねくり回す。
小さな女性たちの体を舌で男根におしつけ、彼女らの体を
口の中で回し続ける。
上目遣いに賢一を見上げる智美。
口の中では五人の女性は溺死寸前だった。
熱い唾液とそれ自体が巨大な生き物のような舌の凄まじい圧力。
巨大女性の口の中で必死にもがく五人の小さな女性達。
巨大な女性は息もつかずに巨大な男根を嘗め回している。
熱い唾液の中で、彼女らは次々に絶命してゆく。
賢一が我慢しきれず、智美の口の中に大量の液体を発射してしまったのは
フェラが始まって僅か数分後のことであった。
「いやー。はやーい!」
口から白濁した粘液をたらしながら、口を尖らす智美。
とろりと、糸を引きながら智美の乳房の谷間に滴り落ちる賢一の愛液。
その液の中に小さな女性の体が混ざって落ちる。
「でも、智美。気持ちよかった・・・。」
それだけいって、しまった、と思った賢一。
自分自身が巨大怪獣、欲望に突き動かされる巨人になってしまったことを
認めてしまったのだ。
口から落ちる愛液をぬぐい、賢一を見上げ、薄く笑う智美。
その笑いと、熱い視線は賢一をただの巨獣に変えてしまった。
智美の胸の谷間を流れる愛液を指でなぞる。
賢一は智美を押し倒す。
笑いながら賢一を見つめる智美。
彼女の背中の下で駅前の雑居ビルが三棟も押しつぶされていった。
小さな人間は既に逃げ散っている。
「智美、もう我慢できない。」
賢一はそれだけ言うと、智美の体を覆いかぶさるようにしていた姿勢から、
すっくと立ち上がり、街道に向かって歩き始めた。
足元も確かめず、小さな雑居ビルなど踏み壊しながら歩く賢一。
やがて、逃げる小さい人間たちに追いついてしまった。
今度は賢一がその大きな手で、若い男性ばかりをつまみ上げた。
巨大な女性が巨人男性のものを加えている隙に、千メートルは
逃げ延びた人々。
乗り捨てられた自動車が街道を埋め尽くす中、うまく避難できたほうだ。
が、巨人の歩幅は60メートルはあった。そして道路など関係なしに
ビルを踏み壊し、蹴り崩しながら追いかけてきたのだ。
ざっと20人ほどが賢一につまみ上げられてしまう。
みな、若く屈強な体躯の持ち主ばかりだった。
膝を抱えて賢一を見守る智美。
自分と同じ快楽に賢一もおぼれ始めたことに安心しているのだ。

そのときだった。
「あの、お疲れ様です。」
突然、女性の声がした。しかも、賢一たちと同じサイズの人間。
それも日本語で。
振り返った賢一が思わず叫び声を上げる。
智美もまた凍り付いてしまった。
瓦礫の平野となった街の中に、さっきの紫の髪をしたメイド服の少女が立っていたのだ。
「あ、あのボスからの差し入れです。」
顔を真っ赤にして下を向きながら手に持ったトレーを差し出す。
「あ、ありがとうございます・・・。」
片手に持った小さな人間を落とさないように、右手でそのトレーを受け取る
賢一。トレーの上にはお絞りとペットボトル入りのお茶、タオルが載せられていた。
素っ裸であるが、前も隠せない。
下を向いたままのメイド服の少女。
「用が済んだらかえりなさいよー。」
ゆっくりと、白みきった口調で智美が言った。
「あ、は、はい。すみません。」
智美にも顔を向けられずにメイド服の少女は答える。
くるりと踵を返す少女。
街の上空に、あのスタジオの扉が出現していた。
少女は小走りにその扉に向かう。
彼女は足元を気にしていた。小さな人間を踏み潰さないように
注意しながら脚を踏み出していたのだ。
トレーを持ったままぼんやりと少女を見つめる賢一。
「前見てあるきなさーい。」智美が声をかける。
はっと、前を見やる少女。
彼女の腰高さほどのオフィスビルが目の前にあったのだ。
「きゃあ!」
それを避けようとしたのか、少女は体を右に倒しながら、轟音を立てて
地面に突っ伏した。
オフィスビルは無事であったが、150メートル近い少女の体は
その付近のマンション、店舗を押し潰していた。
真っ青な顔をして自分がつぶしてしまった瓦礫をはいつくばって
見つめている。
「心配しないの!そこら辺は大方逃げ出して人はいなかったわよ!」
立ち上がりながら智美が少女にそういう。
振り返り、少しだけ笑う少女。
「あの・・・。」
また顔を赤くして下を向く少女。
何か言いたげだ。少女を睨み付ける智美。
「聞きたくないわよ。もう帰って。」
一瞬、智美の顔をにらむようにした少女。
くるりと向きを変え、扉に向かって歩き出す。
瓦礫の山となった街を踏みしめるメイド服の少女。
「いつかあなたたちの世界にも順番が回ってくるかもしれませんよ。」
扉を開け、智美を振り返った少女はそれだけ言うと室内に消えていった。

 トレーを智美に渡しながら賢一は訝しげにとも見に聞いた。
「あの子、何を言ってるんだろう。智美、何か知ってるんだろう?」
ペットボトルのお茶をのみ、口をすすぐ智美。
「ねえ、見てよ。ビルよりも大きいボトルなんて。」
まだ崩れないで建っている商用ビルの隣にペットボトルを置く智美。
「こんなにちいちゃな街なんて。おもちゃにしかならないわ。」
そういうと、彼女はゆっくりと立ち上がった。
左手に小人を山盛りに持ったままの賢一の前に立ち、キスをする。
「ねえ、その小さな人たちで何をするつもりなの?」
そういうと同時に賢一の男根をゆっくりともみ始める智美。
賢一は智美が何か知っていることに気がついた。
 だが、ここでは何も問わないことにする。
このまま快楽に浸ったほうが身のためになりそうなことは確実だ。
突然現れた紫の髪をした少女。空間にあらわれ消えた扉。

智美のとろんとした目を見つめる。
彼女の大きな乳房を両肘で寄せて、賢一はそこにできた深い谷間に
小さな人間たちを放り込んだ。
悲鳴をあげ、谷間に落ちてゆく小さな男たち。
智美が今度は自分で小人達を落とさないように乳房を左右から押した。
「ちょっと待ってて・・・。」地響きを立て、賢一が歩き出す。
彼はさらに多くの小さな人間を集めようと、中学校の校舎に置いたままの
智美の水着を拾い上げた。
「あ、何すんのよ!」
智美が両胸を抑えたまま、賢一を追いかける。
乳房の谷間に挟み込まれた二十人ほどの小さな男たちは
凄まじい乳房による圧力と、激しい上下振動に失神寸前だった。
激しくもがく小さな男たち。
「・・・気持ちいい・・・。」
自分の乳房を見下ろし、つぶやく智美。
小さな人間の、小さな抵抗が意外に気持ちいいのだ。
立ち止まり、ブラを片手に小さな男たちを拾い集める賢一を見つめる。
大方の察しがついた。
智美はマンションをけり壊し、まだ道路上に避難する人でいっぱいの住宅街に
その巨大な体躯をあらわした。
七階建てのマンションをわざとけり壊す。粉のように崩れ落ちるマンション。
悲鳴をあげ、逃げ惑う小さな人間たち。
智美は乳房の中の小さな抵抗を感じつつ、足元をチョコチョコと必死に逃げる
小さな人間たちをそっと踏み潰し始めた。

巨人となった自分の体の大きさ、その強大な力。
精密な模型のような街を破壊する爽快感。それらは智美の理性をかき消してゆく。
智美は大きなお尻で、戸建住宅を押しつぶしながら座り込む。
高級住宅街の大型住宅はメリメリと音を立て、巨人女性のお尻の下に
消えていった。
膝を立て、体育座りのようにしている智美。
胸の谷間に目を落とし、もがく小さな男たちを見つめる。
乳房を強く押してみる。乳房が盛り上がり、その白く柔らかな乳房の谷間が盛り上がる。
深くなった谷間に小さな男たちが飲み込まれてゆく。
乳房の谷間の中で必死になってもがく小さな男たち。
その小さな抵抗が智美にとって耐え難い快感となる。
そしてまた、残酷な衝動、小さな命を弄ぶ快楽が智美の中に復活していった。
少女時代、山の中で虫やトカゲを遊び殺したときのように。
小さな人間はもはや、智美の中で哀れみを与える必要のない小動物と
認識されてしまったのだ。

白い巨大建築物のような女性。
小さな人々は突然現れたこの悪魔のような巨人たちをなすすべもなく、恐怖に満ちた目で
見上げていた。
街をけり怖し、人々をつまみ上げ、押しつぶしてゆく恐怖の巨人たち。
さらには、何の恥じらいも無く街の中で性行為を始めてしまった巨人のカップル。
彼らの背中やお尻、膝の下に小さな街と人は消えて行く。
巨大女性の雷鳴のようなあえぎ声。巨体のぶつかり合う轟音、地響き。
すべては悪夢であった。
だが、夢などではなく、現実として小さな人間たちの上に、巨人の肉体は覆いかぶさり、
彼らの残酷な興味の対象となりもてあそばれ、殺されてゆく。

賢一が智美の前に歩いてきた。
白い水着のカップにはぎっしりと小さな男たちが詰め込まれている。
何十人いるのだろうか。
智美はそれを見ると、両方の乳房から腕を放す。
ばらばらと小さな人間たちが智美の白いおなかを転げ落ち、股間の茂みまで
転がっていった。
賢一を見つめ、無言である。
乗り捨てられた自動車を踏み潰し、まだ無傷の家屋を無造作にけり壊しながら
智美の前に座り込む賢一。
ブラのカップに詰め込まれた小さな人間たちを笑いながら見つめる智美。
智美は立てた膝の上に、乳房に挟まれていた小さな男を三人ほどつまみ上げ、並べた。
息も絶え絶えの三人の男たちはもはや悲鳴すら上がらなかった。
また自分たちを捕まえた男の巨人が目の前に座り込み、美しく残酷な巨人の
女性は自分たちをおもちゃにして遊び殺すつもりなのは明白だった。
巨大な女性の指が彼らを突き飛ばす。
三人はすべすべの太ももを黒々とした智美の茂み目指して滑り落ちて行った。
「はは、アスレチックみたいでしょ、おちびさん達?」
笑いながら冷たい視線を小さな男達に向ける。

賢一がブラを片手に持ったまま智美の腰を持ち上げた。
「あん!」
声を上げる智美。足を開き、目をつぶり顔をそらす。
智美の乳房の間にブラのカップをひっくり返す賢一。
おもむろに小人達をつまみ上げ、彼らを智美の秘密の洞窟に
押し込み始めたのだ!
腰を持ち上げられた智美、大きく開いた脚、その付け根の部分と
複雑な形状をした股間部分はやや大きめの平地を作る。
複雑な地形をした平野に摘み上げられ、つつかれる小さな男達。
そして、大きな女性の洞窟、熱い液体をじっとりと湧き出している
その洞窟に突き出されてゆく。
小さな男達を押し込みがてら、そっとクリをつつき上げる賢一。
「恥ずかしいよー・・・。」
顔を手で隠す。
構わずに女性の丘をさすり、洞窟をこね回し、小人達を洞窟に押し込めて行く。
智美は小人が詰め込まれるたびに、顔を激しく動かし始めた。
知美の洞窟の中で暴れ、もがく小人が何とも気持ちいいのだ。
小さな命が自分の体の中で押しつぶされてゆく、それが快感となる智美。
 残酷な性欲。
賢一もまたこの魔力に囚われて行ったのだろう。
藤原ゆかりがスクリーン上で見ていることは間違いない。残酷でいやらしい性行為。
それを見られている。何ともいえない不快感が心の中に生まれるが、また別の欲望も
生まれ、さらにそれが賢一を支配してゆくのを強く感じている。
「ああ、ああーん、いや、とってとってー!」
腰を激しくうねらせながら喘ぐ智美。
両手はその刺激に耐えようとするのか、家屋や大型トラックをつかみ
握りつぶしていた。さらに激しく上半身まで動かすので、小人達は智美の
乳房の間から多くは転げ落ちてしまった。
彼らからしてみれば四十メートルはある智美の胸部。多くは絶命してしまう。
だが、ブラのカップの中にしがみついていたものと、乳房の谷間で何とか難を逃れた
十数人の小人達もいたのだ。
賢一は無慈悲にも彼らをつまみ上げ、また智美の洞窟に押し込んでゆく。
 小さな人間達を全員洞窟に押し込んだとき、賢一は女性の丘に顔を近づけた。
小さな人間達が、あふれ出る愛液の中をもがきながら必死に這い出ようとしている。
賢一はそんな彼らを舌で押し返したのだ。
さらに、舌を洞窟に突っ込み、彼女のクリをつつき始めた。
激しくあえぐ智美。
彼女の太ももを押し上げ、賢一は彼の男根を智美の洞窟に突き立てようとする。
熱い巨大な肉のひだの中で、あふれ出る愛液におぼれかけていた小さな人間達。
彼らはまるで数十メートルのタワーのような巨人のいきり立つ男根を認めた。
最初に巨人男性につまみあげられ、この美しい巨大な女性の洞窟に押し込められたものは
すでに絶命している。
あふれ出る熱い愛液で溺死してしまっているのだ。
何とか巨大女性の谷間に顔を出すことのできた数人の小さな人間達は
空を覆いつくす、巨人男性のいきり立つ男根をみあげ、絶望した。
十数人の小人たちが洞窟の中で巨大な男根に押しつぶされていった。
小さな男たちの肉体。その感触が智美を一気に絶頂へと持ってゆく。

さらに腰を激しく動かす賢一。
だが、彼はそこで異変に気がつく。
街がまた小さくなってきたのだ。
智美の背中に吸い込まれるように消えてゆく街。
自分の体がぐんぐん大きくなり、とうとう足が海岸にまで届いてしまった。
智美の頭が、山岳地帯にまで届く。
背筋に走る快感とともに、大量の愛液を智美の中に注ぎこんでしまう賢一。
智美は虚ろな顔をして、賢一を見つめた。
「ねえ、俺たちこんなに大きくなって・・・。」
賢一はゆっくりと上半身を立てながら言う。
智美は顔を傾け、まるで立体地図のように見える地上を見つめた。
彼女の秘密の洞窟に手を持っていく。ゆっくりと女性の丘を指で押し広げた。
とろりと二人の混ざり合った愛液が彼女の洞窟から流れ出す。
賢一は智美の股間の間にかろうじて、押しつぶされなかった市街地を見た。
「ああ、街が・・・。」
流れ出す大量の愛液が街を飲み込んでゆく。
脚を広げ、ゆっくりと秘密の洞窟を広げ、そこをなでる智美。
「賢ちゃん・・・。みんな壊しちゃったよ・・・。」
恍惚の表情で智美が言った。
賢一はただぼんやりと智美を見つめる。

と、突然、空にあの鉄扉が現れた。
がちゃり、と扉が開く。
「お疲れでした。撮影は終了しましたよ・・・。」
藤原ゆかりの声がどこからともなく聞こえてきた。
明るい蛍光灯の白い光がまぶしい。


シャワールームに入る二人。二人とも無言だ。
巨人となって街の中でセックスを繰り返してしまった自分達。
恥ずかしさとともに、なんともいえぬ脱力感が二人をつつむ。
熱いシャワー。ただぼんやりと湯に打たれる二人。

「お疲れ様でした・・・。」
紫の髪をした少女は、二人に目をあわさぬようにして、応接室に入ってくる。
冷たい飲み物をおき、そそくさと出て行った。
今度は智美も彼女と目をあわさぬようにしている。
智美が何か知っているのは間違いない。
あの少女のことも。

賢一は智美を見つめた。
「知ってるんだろう。俺の知らないこと。」
賢一の目を見つめ返す智美。
「あの街が本物の街、小さくされた街だったのは知ってたわ。」
ゆっくりと智美が言った。
「でも、小さな人間達ははじめてみたのよ。それまでは人間なんて見えなかったわ。」
ソファーに深く座り、冷たいお茶を飲む。
「あの箱の中に入れられた車ごと小さくされた人たちは?」
「私と入れ替わりでやめた人・・・。話したことはないの。」
グラスをそっとテーブルに置き、智美は続けていった。
「さっき行ったとおりよ。オーナーは人や物を小さくする方法を知ってるんだわ。」
「幻覚を見せる方法かもしれないけどね。」
賢一がつぶやく。

「藤原さんって、何者なんだ?」
「わからない・・・。モデル時代の友達からの紹介であわせてもらったのよ。
撮影スタジオとプロディユース会社の社長って言ってたわ。」
続けて智美は話す。
「最初はただのスティール撮影だったの。それからビデオ撮影にはいって、
ミニチュアの模型を壊し始めたの・・・。」
智美は誰もいない対面のソファーを見つめて淡々と話す。
黙り込む賢一。
二人そろって幻覚を見せられているのではなかろうか。
しかし、自宅マンションにもって帰ってしまった、車ごと縮小された男女二人は
どう説明する?
なんともいえない不気味な気分。
それと同時に恐怖感が二人を襲った。
「あの紫の髪をしたメイド服を着た女の子は何者なんだい?突然現れたけど・・・。」
「オーナーの秘書さんよ。どこの国の人かは知らないけど。彼女もあの街が小さくされた本物だって、知ってたのよ。」
「次はあなた達の番かも、てどういう意味だったんだろう。」
「わからないわ。でも私達の街が小さくされて、あの子に踏み壊されることも
在るかもしれない・・・って事かも。」
力なくいう智美。

「もしも私達がさっきの二人みたいに小さくされたら・・・。」
智美がぽつりと言う。
「一緒に殺してもらおう。」
智美の手を握り、賢一が力なく言った。
「ごめんね、こんなことになっちゃって。」
少し涙を浮かべながらそう言う智美。

ノックの音。暫くして応接室のスティールドアがゆっくりと開いた。
藤原ゆかりが現れたのだ。
凍りつく二人。
対照的に満面の笑みを浮かべる藤原ゆかり。
黒いスーツを見事に着こなし、優雅にソファーに座った。
「撮影お疲れ様でした。すばらしい効果でしたよ。クライアントも満足してます。」
またノックの音がする。
件の紫の髪をしたメイド服の少女がグラスに冷えたお茶をついで持ってくる。
賢一は智美の表情を横目で観察した。
彼自身はなんともいえない恐怖と不気味な印象をこの少女に持ってしまっている。
一方、智美はどうなのだろうか。
何か、彼女に対して落ち着いたところがあるように思えたのだ。
予想通り、智美は落ち着き払った態度で少女を見つめている。

「さて、いろいろと質問がおありでしょうね。」
妖艶な雰囲気をさらに増長させる不思議な笑顔を作り、話し出す藤原ゆかり。
賢一と智美は凍りついたように動けなかった。
「最初に申し上げます、私はこの世界の人間ではありません。」
グラスのお茶を飲みながら語る藤原。
「別の空間、宇宙からから参りました。」
二人をみつめ、微笑む。
藤原ゆかりの顔をみつめ、ただ唖然とする二人。
「宇宙人?はは・・・は。」
それだけ言うのが精一杯の賢一。
「この世界でならば、異次元人といったほうがよろしいですね。」
二人の様子を見ながら、予想通りといった顔の藤原ゆかり。
「多次元宇宙をご存知?ほんの少し、次元の軸をずらすだけで
別の宇宙が存在する、ってことを。」
「SF小説で読んだことあります・・・。」
やっと答える賢一。
「結構です。でも、仮説や虚構の世界ではなく、厳然と存在する
世界なのですよ。賢一さん。」
手を膝の上に組み、微笑む藤原。
「この次元軸が接近しすぎる宇宙がいくつも存在している、その接近しすぎる
宇宙を管理する委員会が、私達のクライアント。」
彼女は一気に話す。
「それとミニチュアの模型を・・・、いや、小さくされた世界を俺達が
壊して回るのは何の関係があるんです?」
神妙な顔つきで賢一が聞く。
「近づきすぎる宇宙、それ自体は自然の摂理で均衡が取れるのです。衝突の
可能性はまったくありません。しかし、そこで人為的な力が加えられるとき、
この均衡が崩されてしまうのです。」
「よくわかりません・・・。それとミニチュアの街の破壊が・・・」
賢一は言いかけてやめた。

賢一に目配せする智美。藤原の話を黙って聞け、とのサイン。
「次元軸に人為的な力が加わり、その次元宇宙同士が干渉を始めると、
影響力は他の次元宇宙にも及ぶの。」
藤原は続ける。
「不自然で強力なエネルギーを作り出し、そのエネルギーをコントロールしきれない
世界。そんな世界から文明を奪い取るのが委員会の仕事。その仕事をプロデユースするのが私達のお仕事なのです。」
藤原ゆかりは賢一と智美をみつめた。
「えーと、よくわからないんですが。それと私達が、その、巨人になって
うーん、セックスするのと何の関係が?」脂汗を流しながら賢一が
ようやくそれだけ言った。
藤原ゆかりは笑って答える。
「早い話が、あなた達には神様になっていただいたのです。」
「神?何でまた?」
「さすがに委員会も多次元宇宙の文明世界を抹殺することはできません。
それ自体が不自然な人為的影響力になってしまうからです。」
藤原は続けた。
「彼らから文明を排除し、新たに文化を再構築する、その課程に巨大な神を
派遣したのです。これは私たちの発案ですが。今まで何回も成功しているんですよ。
あなた達は宇宙の中から選ばれた、容姿も精神力も、遺伝子情報も完璧な主演者なのです。」
二人は黙って藤原をみつめる。
「都市を破壊し、人口を激減させる、その宇宙の人々には歯が立たない
強大な美しい人間達。つまりは神が次元宇宙を、世界を作り変えていくのです。
映像を撮っているのはその効果を計測しているんです。」
「じゃ、空にいきなり扉が現れたり、部屋の中に小さな街が広がっていたりしたのは・・・?」
「私達の技術で、空間を操作したのです。簡単なことなのですよ。」
藤原は笑いながら答える。
異次元人、彼女がいた世界は、考えられないほどの科学力を持った世界なのだろう。
自分達人間は、未開の蛮族ぐらいにしか見えないのではないだろうか。

「あっ、あの!」
智美が始めて口を開く。
「あのメイド服の子はどこから来たんですか?やはりどこかで神様をやってたんですか?
それと、小さくされた私の前の娘は何で殺されたの?」
一気に話す智美。
「ステラさん、ね。彼女もやはり神になった娘です。でも、彼女の住んでた世界自体が
委員会から選ばれてしまったのよ。彼女が戻る家も国も再構築中なの。」
「つまりは破壊しつくされた、てことか・・・。」
「たまにあるのよ、こんな悲劇が。」
さらりと言う藤原。
「でも智美さん、ステラさんのことはあなた知ってたはずでしょう?」
智美は何も言えずに下を向く。
「お仕事の中身もわかってたわよね、智美さん。」
賢一に向かう智美。
彼女が何か言おうとしたそのとき、藤原が続けた。
「それと、ここのお仕事の中身を無断で外部に漏らそうとした場合、
その罰はとても重たいの。あの映像を外に持ち出そうとしたりしたときは特にね。」
智美を冷たい目でみつめ、それ以上何も放さなくなった藤原。
暫く沈黙が続く。
「あなた方には専属契約をお願いしようと思うの。神になる条件がこんなにそろっている
カップルなんて珍しいのよ。」


夜明けも近い国道。
帰路に着く車の中。
暫くの沈黙の後、賢一が始めて口を開く。
「何で黙ってたの?この仕事の内容、彼女の正体。」
低いディーゼルエンジンの振動が心地よく伝わる。
「藤原さんのことは今日はじめて知ったわ。あのメイド服の子、彼女本人から聞いたのよ。踏み潰しているのは本物の街だって。彼女は別の世界から来た、ともね。」
賢一は黙り込んだ。
「相手が普通じゃないことはすぐにわかったのよ。でも、お金はいいし。
ただ水着で歩くだけなんだから。」
街を破壊し、人々を踏み潰して回る智美。
賢一はなんともいえぬ不快感を持ったが、自分自身が巨獣となり、暴れる快感に
理性をなくしてしまったのだから何もいえなかった。
(もしかして、智美は俺をこのバイトに引きずりこむために、あんなに誘ったのかな)
そう思って、ちらりと智美の横顔を見た。
それに気がつき、賢一をみつめる智美。

「ねえ、賢ちゃん、私この仕事続けたいの。それと・・・、暫くあえなくなるかも。」
心臓が止まるかと思った賢一。
「それって、さよならって、こと?」
笑い出す智美。
「ううん。まさか。でも、お仕事の続きがあるのよ。これって、賢ちゃんのためでも
あるのよ。」
婚約指輪をさすりながら、うれしそうにする智美。
少しだけ元気な声を出す。
「俺のため・・・?」
微笑みながら賢一をみつめる智美。
マンションに帰り着いたとき、夜はすっかり明けてしまっていた。


翌日の月曜日から、智美は出かけたっきり帰ってこなかった。
「携帯も通じないからね・・・。」
それだけ言って賢一とキスをして、マンションを出て行った智美。
賢一は大方の察しがついていたのだ。
また、どこかの世界で彼女が巨大な女神となって都市を、国家を、破壊して
いることを。
それから数日が立った。
夜の10時過ぎ、誰もいないマンションに帰ってきた賢一。
ユニットバスに湯を張り、簡単な料理を作る。
風呂に入り、食事を済まし、ぼんやりとテレビを見ている。
この数日間、変わらぬ行動。
「連絡ぐらいよこせよなー。」
水割りの入ったグラスをテーブルに載せ、一人つぶやいた。
と、そのときだった。
凄まじい轟音とともに、マンションが激しく揺れた。
「地震だ!」
一人叫ぶ賢一。
が、轟音はやがて地響きとなり,それも規則的に聞こえ、マンションをゆらす。
爆発音のような大音響が同時に聞こえ、それとともに人々の悲鳴も聞こえてきた。
藤原ゆかりのスタジオで見た映像と同じ音響・・・。
賢一はテラスに走り出した。
彼の予想通り、そこには身長160メートルはありそうな巨人女性が
マンションをけり壊し、路上駐車している自動車を踏みつぶし、
賢一のマンション目指して歩いていたのだ。
暗がりの中でもそれが智美であることはすぐにわかった。
テラスに出た賢一を見つけ、満面に笑みを浮かべる智美。
白いセパレーツの水着を着た白い彼女の肢体が夜の闇に白く浮かび上がる。
「賢ちゃん、おまたせー。」
ガラス窓をびりびりと振るわせ、智美はその可愛い声を周囲に轟かせた。
足元など気にもせず、公園の立ち木をバキバキと折り飛ばし、突然現れた
巨人になすすべもなく逃げ惑う人々を、容赦なく踏み潰す。
あらゆる悲鳴がテラスにいる賢一にも聞こえてくる。
スクリーン越しではなく、目の前で巨人となった婚約者を見る賢一。
とうとう、賢一のマンション前まで智美はやってきた。
10階建てのマンションの7階に賢一はいたのだが、そこからは智美の白い足、
膝から下しか見えない。
ぐわっと、脚が曲がり、巨大な太ももが下りてきた。
体重がかかり、筋肉が横に押し広げられ、パンパンにはりつめる太もも。
大きなお尻は横にぐっと広がり、水着のパンツはきわどく股間に食い込む。
同時に、巨大な乳房も視界に入る。
長い黒髪を後ろになぎ払い、顔を横にする智美。
「賢ちゃん、一緒に来て!あの子のいった通りになったの!」
耳をおさえ、智美が轟かす声に全身で耐える賢一。
「あ、ごめんなさい。」
心配そうな顔で賢一を覗き込む智美。
「まさか、ここに神様が派遣されるってことか?」
大声で智美に聞き返す。
「そうよ。それでね、私、専属契約結んだの。アルバイトじゃなくって、年棒制の
社員になっちゃた。」
ゆっくりと右手を賢一に突き出す。
「お願い、一緒に来て。そうでないと、この世界私達がやっちゃた事と
同じ目に遭うのよ。」
賢一は智美の掌によじ登る。
掌の賢一をみつめ、微笑みながら智美は立ち上がった。
掌の中で凄まじい重力に耐える賢一。
「家族とか、親戚とか、友達は間に合わないのか!」
賢一は智美に向かって叫ぶ。
悲しそうな顔をする智美。
「契約を結んだ人しかだめなのよ。」
地響きを上げ、彼女は歩き出す。
暫くして、あの扉が空に浮かんでいるのが見えてきた。
手のひらの上から、地上を見渡す賢一。
「これで見納めか、この街も、俺のいた世界も・・・。」
そっと掌の上の賢一に口付けする智美。
「あきらめて・・・。新しい世界で、私達生まれ変わるの・・・。」

そして、巨人となった智美は掌の上の賢一と共に扉の中に入って行った。
夜空から、巨大な扉がすうーと、消えてゆく。
神々の誕生・・・。
それはアルバイトから正社員に昇格した神々の誕生の瞬間であった。

                      婚約者のアルバイト後編   完   




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