《 真夜中の体育倉庫 》 第26話

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(健一の友人、川田の視点で)

「なんじゃ、これはああああ!!」

 俺の名は川田、天竜寺高校で写真部の部長をやっている。
俺は目の前にいる
巨大な女の子を見て驚愕していた。

 なんと大きい、人間の7〜8倍の大きさ。


 少し前、俺のスマホにTELがかかってきた。友人の健一の父さんからだ。

 健一が夕食の後、外出して夜になっても帰ってこない。
健一のスマホにTELをしたがつながらない。「友人の俺の家に行ってないか」という質問だ。

 俺と健一が仲が良いと、健一の父さんも知っている。
俺は健一を探すと返事をして、月明かりの夜、外出をする。
 この町の治安はいい。夜の外出も俺には普通の行動だ。
何気なく学校の方に行ってみる。 そして彼女を見た!

 そう、ブルマ姿の
巨大な女の子が人を口に咥えているのだ!!
そして、よく見たら巨人女の口に囚われているのは、俺が探す健一ではないか・・・。



 とろんとした目、陶酔しているのか、巨人の女は俺に気がついていない。
そして、俺はこの女を知っていた。確か名前は夕崎愛花。俺の後輩だ。
夕崎愛花に似た巨大宇宙人ではない、彼女が大きくなったのだ。

 先日、この女は俺に声をかけてきた。
「健一さんはどんな女の子が好きなのでしょうか?」という質問。
俺にはすぐ分かった。愛花の目は明らかに恋をしている目だった。

 俺はふざけて「あいつはブルマ娘が好きです」と愛花に言っておいた。
どうして、そんなアホな事を言ったのか、その時は自分でも理解できなかった。

 しかし、俺は無意識のうちに愛花が危険な女と知っていたのではないか。
「ブルマ好きな男」と言えば、たいがいの女の子は相手に興味を失う。
そうなれば、この女に友人の健一が襲われない。俺はそう願っていたのか??

 しかし、この女は想像以上の斜め上で、「健一はブルマ娘が好き」という俺の言葉を信じたらしい。
今、その愛花が巨人となり、ブルマ姿で健一を襲っている。

 し、しかし、これからどうする?
いくら何でも力では勝てない。健一を助けるなど不可能だ。

 人間とは、あまりにも非常識な状況に出会った時、まともな判断ができなくなるらしい。
この時の俺の判断・・・
これは夢なのだ。

 そうだろう、考えてもみてくれ。
友人を探しに外出したら、
ブルマ姿の巨大娘に友人が襲われていた。
これが夢以外のいったい何なのだ!

 夢の中なら何をやってもかまわない。
すぐに行動を開始。俺は自宅に戻る。両親はもう寝ている。
父親の車のカギを持ち出し、ガレージにある車の前に立つ。

 ポルシェ459ターボは、膨大なバリエーションを誇るシリーズの中で最高峰の車種。
バブルで儲けた父の自慢の車だ、それに乗る俺。

 いくら怪物ブルマ女でも、このポルシェのスピードには勝てまい。
健一を助けて、この車で逃げるのだ。

 目的地は決まっていた。
俺が小学生だったころ、近所の悪ガキとケンカする時は、他の者に迷惑をかけないように、市の中央公園でケンカするという決まりがあった。
そして、高校時代の今、俺の高校では校長の判断で、地震などの災害時には中央公園に自力で避難するように決められている。
ゆえに、健一なら必ず中央公園に逃げると思う。

 この時、夢の世界で冒険しているつもりだった。
ふと正気に戻る。 これやばいのじゃないか??
 あんなデカイ女に逆らったら、何をされるか分からない。
このまま家で寝てた方がいいのではないか。

 しかし、俺の頭の中に奇妙な妄想が走る。
愛花という女をこのままにしておけない。
どんな事をしても健一を助けないといけない。
人生最大の使命感に俺は燃える。

 どうせ夢の世界なのだ。俺は車を発進させる。
無免許だが、運転方法は父親の運転を見て知っている。

 待っていろ、健一! 今、助けに行くぞ。

 後で俺は・・・自分の行動を後悔するのではあるが。



(車を走らせる川田の運命はいかに・・・。)

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