《 霊能力者だ 》 

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 会議室には我が社の重役が集っていた。専務である私もその中にいる。

 今日は高名な霊能力者が来ることになっている。
会長の命令で社の吉凶を占ってもらうらしい。くだらない話だ、私は霊能力など信じない。

 やがて霊能力者が会議室に入ってきた。
その男は何か不思議そうな顔をしていたが、突然我に返ったように我々の顔を見回し始めた。

「すみません。あなたの年齢は57歳ですか?」
 霊能力者が私に話しかけた。 返事をする。
「そうですが、どうしてわかったんですか」

 私が聞き返しても、男は無視してまた別の重役に話しかけた。
「あなたの年齢は48歳ですか?」
「そうですけど……」

「あなたは62歳ですね?」
「どうしてわかったんだ?」
 そんなやり取りを繰り返していく。

 どうやら、この男には顔を見ただけで年齢を当てる特殊能力があるらしい。
しかし、本当だろうか? 重役の年齢くらい社の個人リストを調べれば分かる。
自分が霊能力者だと信じさせるために芝居をしているのかもしれない。

 だがその疑念もすぐに晴れた。
取引先の銀行役員がこの会議に来ていたのだ。霊能力者はこの銀行役員の年齢も言い当てた。
来る予定の無かった者の年齢など分かるはずも無い。

 私を含め、重役たち全員がその霊能力者に注目し始めた。

「あなたは54歳ですね?」
「そうですが明日が誕生日なので、すぐに55歳になるんですよ」
 最後に質問された常務は、笑顔でそう答えた。
年齢を当てていた霊能力者の顔が、その途端に青くなった。

「凄いですね。百発百中じゃないですか」
 私は男に話しかけた。

 すると、霊能力者は青い顔を私に向け、こう言った。
「いえ・・・私に見えているのは貴方がたの寿命です」

 そのただならぬ雰囲気に私は驚く。

 なんだ、この男は何を言っているのだ?

 私の今の年齢が57歳で、それが寿命だということは・・・。


ごごごごごううううんん!!!


 突然、凄まじい轟音が響く、会議室が大きく揺れる。

 何の前兆も無く
巨大娘が都市に出現したのだった。

 そうだった。この男は間違いなく本物の霊能力者だ。

 会長が社の吉凶を占ってもらおうと考えたのも理解できる。
しかし、警告を発するのが遅すぎたようだった。 


 巨大娘が我々のビルを押し潰したのは、それから10秒後のことであった。






 (この物語はフィクションです)



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